初めてでも大丈夫?床下エアコンの設置にあたり検討した項目まとめ

床下エアコンの存在を知ったのは建築知識2017年8月号で「床暖房に代わる床下エアコン」(P070)で掲載されていた記事からでした。

最初の印象は床暖房とどこが違うのかわかりませんでした。

床暖房は初期費用やメンテナンスの問題があるので希望するお客さんだけに設置していたのですが、高気密高断熱の家にすれば必要ない?のではないかと当時は考えていました。

しかしながら、床下エアコンをよくよく調べてみると

・全部屋をエアコン1台で暖房できる
・床下からの輻射熱で暖める
・普通のエアコンなので電気屋さんが修理


など床暖房よりローコストで家全体を暖房でき、メンテナンスの問題も特にないことを知り、ぜひやってみたいという気持ちが強くなりました。

床下エアコンの設置って
初めてでも大丈夫なの?

お恥ずかしい話ですが、設計事務所として床下エアコンを設置した経験はありません。

しかしながら、いま施工中の住宅でお施主さまから床下エアコンの設置を了承していただきました。

高齢者の住まいで足元から温まり部屋ごとに温度差がない住宅を実現するために床下エアコンを設置することは設計事務所として初めての試みです。

初めての試みを快く了承していただき、お施主さまにはとても感謝しています。

今回は床下エアコンの設置にあたり、設計事務所として検討し設計上で配慮した点などをご紹介できればと思います。

この記事が床下エアコンを検討しているけど、どうしたらいいのかわからない人の参考になってくれれば幸いです。

床下エアコン設置の理由

床下エアコン設置の理由は以下になります。

・高齢者に優しい温熱環境
・床暖房よりローコスト
・メンテナンスの容易さ

高齢者に優しい温熱環境

床下エアコン設置の理由は高齢者に優しい温熱環境を実現してくれるところです。

高齢者の住まいにとって気おつけなければならないひとつに、冬場のトイレや脱衣室のヒートショックがあります。

ヒートショックとは家の中の急激な温度差により血圧が大きく変動することで失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こし、身体へ悪影響を及ぼすことです。

床下エアコンを設置すればリビングはもちろんトイレや脱衣室まで床下から温めることで、家の中の急激な温度差がなくなります

床暖房よりローコスト

床下エアコンを設置すれば床暖房より初期費用やランニングコストの面でローコストになります。

床暖房の場合は電気ヒーター式の場合12帖で60万〜84万円程度、ガス温水式の場合は72万〜96万円程度の初期費用がかかります。

床下エアコンの場合は普通のエアコンなので14帖用1台で20万前後で設置できます。

※床下エアコンを隠すための什器台が15万〜20万円かかりますが、トータルとしての初期費用は床下エアコンの方が安いです。

ランニングコストは電気ヒーター式で約13,000円/月、ガス温水式で8,000円/月、床下エアコンの場合は3,000円/月程度です。

床暖房で部屋全体を温めようとすると60%以上ヒーターを敷き詰めなければならないのですが、床下エアコンの場合は1台で家全体を温めることが可能です。

メンテナンスの容易さ

床下エアコンは普通の壁付エアコンを床下に設置するので、電気屋さんで修理ができます。

日頃のメンテナンスもエアコンフィルターを交換する程度です。

一方、ガス温水式の床暖房は耐用年数が30年とされています。

10年ごとに不凍液の交換(5万円)や30年ごと給湯器の交換(20〜40万円)などが必要になります。

メンテナンスの容易さを考えると電気ヒーター式の床暖房か床下エアコンの方が簡単です。

床下の断熱工法の検討

床下エアコンを設置する場合は基礎内断熱か基礎外断熱にする必要があります。

床下の断熱工法に関してはこちらをご覧ください↓

基礎内断熱の採用

基礎内断熱とは基礎の内側に断熱材を施工する方法です。

基礎外周部には気密パッキンを設置して外気の侵入を防ぎます。

外気の侵入がないために床下が室内環境と同じ扱いになります。

床下エアコンは基礎底盤と床の間の空間に暖かい空気を充満させる方法なので基礎断熱(基礎内断熱又は基礎外断熱)にする必要があります。

地中梁の設計

基礎は室内側に耐力壁を支えるために立上りを設けます。

基礎の立上りがあると床下に暖かい空気を送り込むことの妨げになります。

そこで、できる限り基礎の立上りを減らす必要があるのですが…

基礎の立ち上がりを減らすと基礎耐圧盤に不均衡な力がかかり、割れてしまう危険性があります。

よって設計の際に地中梁の設置を検討する必要があります

地中梁とは建物の基礎を支えるために地中に埋められたのことです。

地中梁の設計に関してはこちらを御覧ください↓

Jotoシロアリ保証1000について

基礎内断熱できおつけたいのがシロアリ対策です。

地面からの高さが1メートル以内の木造軸組や基礎の打ち継ぎ部分、配管貫通部にシロアリ対策が必要となります。

基礎のシロアリ対策について薬品の塗布などの防蟻処理などもあるのですが…

床下エアコンを採用する場合は床下の空気が室内に吹き出します。

人体に影響のない自然素材「ホウ酸」を利用した防蟻剤に利用することを考えなければなりません。

しかしながら薬剤の塗布では効果が5年なので根本的な解決にはなりません。

そこで今回の住宅ではJotoさんの「Joto基礎断熱工法」を採用しました。

この工法を用いると竣工後10年以内のシロアリ被害発生に対し1,000万円を補償される保証制度(2017年より)です。

詳しくはこちらを御覧ください↓

床下エアコンの機種の検討

床下エアコンは普通の壁付けエアコンを設置するのですが、注意しなければならないのが温度センサーです。

温度センサーは普通は本体に付いています。

部屋より床下のほうがあたたまるのが早いので、床下の温度に反応してしまうと部屋が温まっていなくても止まってしまいます

そのため部屋の温度に反応してエアコンを運転する温度センサーにする必要があります

具体的な機種についてはこちらをご覧ください↓

必要暖房能力の計算

エアコン機種を検討する際は、床下エアコンの必要暖房能力を計算により求める必要があります。

求める式は以下になります。

[必要暖房能力]=(Q値+C/10)×床面積×(設定温度-最低気温)/1000

・[Q値]=2.5409×[Ua値]+0.4345
(100~160㎡)
・[Q値]=2.8592×[Ua値]+0.4569
(100㎡未満)
・[Q値]=2.2999×[Ua値]+0.5436
(160㎡以上)

Ua値は外皮計算書から0.44(W/m2K)、C値に関しては設計段階なので気密測定が行えないのですが、C値=1.0を目標に気密工事をします。

今回の住宅の床面積が142.43㎡で冬場の室内温度が23℃で外気温が0℃の場合の必要暖房能力を計算すると

[Q値]=2.5409×0.44+0.4345=1.55(w/㎡K)
[必要暖房能力]=(1.55+1/10)×142.43㎡×(23-0)/1000=5.405(kW)

よって必要とされる暖房能力は5.4kW以上のものを選択することになります。

ワイヤードリモコンについて

前述しましたが、室内側の温度センサーに反応してエアコンを運転させるにはワイヤードリモコン(温度センサー付き)が必須になります。

また、床下に本体を設置するのでワイヤレスリモコンの赤外線での操作だとうまく反応しない場合があります。

※リモコン中継器がありますが、USB端子がついていない機種には対応できません。

最適な第一種換気の検討

床下エアコンを設置する場合は換気設備と一緒に考えることが重要となります。

高気密の住宅では換気計画は第一種換気で考えることになります。

しかしながら、普通のロスナイで換気計画を考えるとせっかく床下に充満している暖かい空気を室内側にうまく吹き出させることできません。

床下に充満した暖かい空気を室内側に吹き出させるには、室内側を負圧にする必要があります。

そこで、今回の住宅ではマーベックスさんの澄家DCで換気計画を考えました。

床下エアコンに最適な第一種換気についての検討はこちらをご覧ください↓

マーベックス澄家DCについて

マーベックスの澄家DCとは床下に設置するタイプの全熱交換型の第一種セントラル換気システムです。

床下に設置するので、天井あらわしの住宅でも天井ふところを気にせず設計することが出来ます。

床下を換気するメリットとして床下を新鮮な空気で充満させることが出来ます。

床下エアコンで床下を温めることによる輻射熱とエアコン本体から吹き出す空気を室内へと導き足元から温める効果があります。

床下エアコンで吹き出す空気を新鮮な空気で循環させることが可能となります。

また、建ってから1〜2年は基礎から水分が発生するので床下を換気し空気を循環させることでカビの発生も防ぐことが出来ます。

メンテナンスの容易さを重視

第一種換気をうまく機能させるためにはメンテナンスをしっかりとしなければなりません。

マーベックスの澄家DCはメンテナンスが必要な給排気フィルターや熱交換素子などが床下や普通に手の届く範囲にあります。

施主が高齢になると天井に取り付けられたロスナイを脚立を使ってのメンテナンスが大変になるのでマーベックスの澄家DCを床下に設置する案を採用することにしました。

外皮計算書によるUa値の検討

一般に床下エアコンは最低でもQ値:1.9以下、Ua値:0.57以下、C値:1.0以下の断熱性・気密性が必要とされています。

そのため天井や壁に充填する断熱材やサッシの断熱性能をUa値を計算して検討しました。

評価・表示協会の外皮計算書を使ったUa値の求め方はこちらを参照ください↓

熱貫流率を計算する上で覚えておきたい計算式は以下の通りです。

覚えておきたい計算式

U=1/R

 

U:熱貫流率W/(㎡・K)

R:熱貫流抵抗(㎡・K)/W

λ:熱伝導率W/(m・K)※カタログなどに記載されている値

 

R=(断熱材の厚さmm)÷λ(W/(m・K))÷1000

上記の計算式を用いて壁や天井の熱貫流率を計算していきます。

天井、壁の断熱材

今回の住宅ではリビングの一部が勾配天井になっています。

その部分だけ屋根断熱にしてしまうと全体を屋根断熱にしなければ納まりが悪いのと面積増でコストアップしてしまうため、断熱材を天井敷き込みにしました。

※屋根断熱に関してはこちらをご参照ください→城東テクノ株式会社


例1)
壁の断熱材を旭ファイバーグラスのアクリアマット厚90mmを使用したい場合

メーカーのホームページから熱伝導率0.043W/(m・K)という値を調べます。

熱貫流率の計算はまず、熱貫流抵抗Rを求め逆数にすることで求められます。

R:90÷0.043÷1000=2.093

U:1÷2.093=0.478

よって、壁の熱貫流率は0.478W/(㎡・K)となります。

例2)
天井の断熱材を旭ファイバーグラスのアクリアマット厚90mmを2枚重ねて使用したい場合

アクリアマット厚90mmの熱伝導率0.043W/(m・K)で2枚重ねなので断熱材の厚みは180mmとなり

R:180÷0.043÷1000=4.186

U:1÷4.186=0.239


よって、天井の熱貫流率は0.239W/(㎡・K)となります。

天井の断熱材ですが、2枚重ねて使用するのは施工上難しいのでアクリアマットα厚155mm U:0.209W/(㎡・K)にするか建設会社と協議して決めます。

サッシの性能

サッシに関してはメーカーのカタログに試験・計算による熱貫流率が記載されているのでその値を用います。

今回の住宅ではLIXILE/サーモスXのハイブリッドサッシを使用します。

ガラスはアルゴンガス入りのLowE複層ガラス グリーン

サッシとしての熱貫流率は1.70〜1.52W/(㎡・K)です。

トリプルガラスにしなくても十分なUa値が出たので複層ガラスにしました。

静岡県だと冬場は温暖なのですが、夏場の日射量は多いのでLowEグリーンを選択しています。

基礎耐圧盤の下の断熱

基礎耐圧盤の下の断熱材ですがこれを敷くかどうかの判断は最後まで設計段階でもめました。

というのは、基礎耐圧盤の下の断熱材を敷き込んでも外皮計算書によるUa値に大した影響をしないというのがその理由です。

・冬場は基礎コンクリートが蓄熱され地面に熱を放出するから地面が冷やされることはない?

・凍結深度があるように冬場でもある程度の根入れ深さがないと地面は冷やされる?

などの疑問があったのですが、今回の住宅では基礎の根入れ深さは150〜300mmほどで浅く地面から冷たさが伝わりやすいのではないのか?

という思考過程で基礎耐圧盤の下の断熱材を敷き込むことにしました。

敷き込む断熱材はデュポン・スタイロ株/スタイロフォームAT厚50mmで防蟻機能のついたものを敷き込みます。

まとめ

今回はざっくりと、床下エアコンを設置するための設計過程を見てきました。

もう一度、検討してきた設計過程をまとめると以下になります。

■床下の断熱工法の検討
・基礎内断熱の採用
・地中梁の設計
・Jotoシロアリ保証1000について
■床下エアコンの機種の検討
・必要暖房能力の計算
・ワイヤードリモコンについて
■最適な第一種換気の検討
・マーベックス澄家DCについて
・メンテナンスの容易さを重視
■外皮計算書によるUa値の検討
・天井、壁の断熱材
・サッシの性能
・基礎耐圧盤の下の断熱

いかんせん設計事務所としては初めての試みなので慎重に設計を進めてきましたが、実際にどうなるかは運転してみないとわからないところがあります。

竣工は12月になるので設置してしばらく運転してみて温熱環境のデータをとりたいと思います。

初めての試みを快く了承していただき、お施主さまにはとても感謝しています。

失敗のないように最善と細心の注意をし現場監理に努めたいと思います。

この記事が床下エアコンを検討しているけど、どうしたらいいのかわからない人の参考になってくれれば幸いです。

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