評価・表示協会の外皮計算書を入力すればUa値ηac値が簡単に求められます

近頃の地球温暖化や異常気象などへの対策として2021年からの住宅に対しても環境に配慮した省エネルギー化が求められています。

戸建住宅で300㎡を超えていなくても、省エネ基準を満たしているかどうか建築士は建築主に説明する「説明義務」が法律で課せられています。

今回は「住宅性能評価・表示協会」の外皮計算書を用いて、実際に設計中の住宅の外皮計算(Ua値、ηac/イータ値)をしていきたいと思います。

【自己紹介】

Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所

設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。

店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。

現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。

設計事務所のブログを始めて2年目で月間25000PVを達成!

住宅に関する悩みを解決すべく、ブログやTwitterで情報発信しています。

「いいね!」や「フォロー」していただけるとうれしいです。ヨロシク(b・ω・d)デス♪

それからコメント欄はこれまで皆さんが経験してきたことを発信する場として使っていただければ幸いです。

役立つ情報をみんなで共有できるような書き込みは大歓迎です。

外皮計算書をダウンロードする

「住宅性能評価・表示協会」のサイトからダウンロードできます。
→ダウンロードはこちら

「利用条件に同意し利用する」をクリックし、木造戸建て住宅(標準入力型)の【H28】木造戸建て住宅[標準入力型]EXCEL版 ver1.8をダウンロードします。

※木造戸建て住宅(仕様選択型)は断熱材が複層になっている場合や使うサッシが決まっている場合、メーカーによる熱貫流率の値を入力できるので今回は標準入力型を使います。

基礎の立上り高さがGL+400を超える場合、GL+400~基礎天端までを基礎壁(外壁)として計算しなければならないため、仕様選択型では入力できません。

熱貫流率の計算をする

壁、開口部、天井、基礎の熱貫流率を計算またはカタログから入力します。

設計している住宅は、平屋建ての木造住宅となります。

①壁は間柱の間に断熱材を充填
②天井に断熱材を敷きこむ
③基礎は基礎内断熱

熱貫流率を計算する上で覚えておきたい計算式は以下の通りです。

覚えておきたい計算式

U=1/R

 

U:熱貫流率W/(㎡・K)

R:熱貫流抵抗(㎡・K)/W

λ:熱伝導率W/(m・K)※カタログなどに記載されている値

 

R=(断熱材の厚さmm)÷λ(W/(m・K))÷1000

上記の計算式を用いて壁や天井の熱貫流率を計算していきます。


例1)
壁の断熱材を旭ファイバーグラスのアクリアマット厚90mmを使用したい場合

メーカーのホームページから熱伝導率0.043W/(m・K)という値を調べます。

熱貫流率の計算はまず、熱貫流抵抗Rを求め逆数にすることで求められます。

R:90÷0.043÷1000=2.093

U:1÷2.093=0.478

よって、壁の熱貫流率は0.478W/(㎡・K)となります。


例2)
天井の断熱材を旭ファイバーグラスのアクリアマット厚90mmを2枚重ねて使用したい場合

アクリアマット厚90mmの熱伝導率0.043W/(m・K)で2枚重ねなので断熱材の厚みは180mmとなり

R:180÷0.043÷1000=4.186

U:1÷4.186=0.239


よって、天井の熱貫流率は0.239W/(㎡・K)となります。


例3)
基礎断熱で基礎高がGL+400を超える部分の基礎壁(外壁)の熱貫流率

基礎の断熱材に3種スタイロフォーム(スタイロエース-Ⅱ:熱伝導率0.023W/(m・K))の厚み50mmを使用したい場合

R:50÷0.023÷1000=2.174

U:1÷2.174=0.460

よって、基礎高がGL+400を超える部分の基礎壁(外壁)の熱貫流率は0.460W/(㎡・K)となります。


※開口部に関してはメーカーのカタログに試験・計算による熱貫流率が記載されているのでその値を用います。

例1、2、3で出した熱貫流率の値を拾った外皮面積にかけていきます。

実際に外皮計算書に入力してみる

外皮等の面積計算のための長さ・面積の拾い方についてはのこちら(株式会社I-PEC)をご覧ください。

長さ・面積を拾うときは以下の点に注意しましょう。

開口部の拾い方

サッシは呼称幅・呼称高の寸法を用います。

サッシの品番が16009の場合
→横幅(内法)1600mmで高さ(内法)900mmのことなので
W=1.6,H=0.9と数値を入力していきます。

※躯体部の開口寸法・建具の出来寸法でも可能の場合があるので審査機関にお問合せください。

高天井や勾配天井のある場合

室内に高天井や勾配天井のある場合はそこの部分に敷きこむ壁や天井の断熱材の面積を計算します。


例4)
幅3.64m、奥行4.55mの高天井がある場合

①の面積は
3.64×0.692+3.64×0.699÷2=2.519+1.272=3.791㎡

②の面積は
4.55×0.692=3.149㎡

となります。

①、②の面積を東西南北でそれぞれ入力していきます。


また、この部分の天井は勾配天井となっており、天井の面積が少し増加しているので、
この部分の面積算定には勾配に応じた伸び率(勾配係数)αを使用して計算します。

勾配天井面積=水平投影面積×伸び率(勾配係数)α


勾配3/10→α=1.044
勾配4/10→α=1.077
勾配5/10→α=1.118


この勾配天井は4寸勾配なので伸び率(勾配係数)αは1.077となり

この部分の勾配天井面積の増加分は

3.64×4.55×1.077-3.64×4.55=17.837-16.562=1.275㎡

となり天井面積に1.275㎡を増加分として入力します。

入力値は
天井:天井面積(142.43㎡)+勾配天井増加分(1.275㎡)、熱貫流率は0.239W/(㎡・K)

基礎断熱で基礎高さが400を超える場合

基礎内断熱の場合は外壁高さの拾い方がかわります。

今回の設計では基礎の立ち上がりがGL+600なのでGL+400までは基礎断熱として基礎のシートに入力します。

GL+400から基礎天端は基礎壁(外壁)、基礎天端から天井までを外壁と分けて入力しなければならないので、外壁高さの拾い方に注意が必要です。

入力値は
基礎壁(外壁):基礎長さ×0.20m、熱貫流率は0.460W/(㎡・K)

外壁:外壁長さ×2.58m、熱貫流率は0.478W/(㎡・K)

を東西南北のシートの外壁のところに入力していきます。

基礎のシート入力

基礎断熱の場合は1)土間床等の面積入力のところで、部位名のタブで[基礎断熱]を選択し、面積を入力します。

次に2)基礎等の断面仕様の入力で、断熱材の熱抵抗と基礎高(0.4m)、底盤高(0.15m)、断熱材の折返し(0.6m)を入力します。

熱抵抗の値Rは

R=(断熱材の厚さmm)÷λ(W/(m・K))÷1000

で求めることが出来ます。

今回は3種スタイロフォーム(スタイロエース-Ⅱ:熱伝導率0.023W/(m・K))の厚み50mmを使用するので

R=50÷0.023÷1000=2.174(㎡・K)/W

R2とR4に熱抵抗2.174(㎡・K)/Wを入力します。

まとめ

長さや面積を拾うのは少し大変ですが、数値を入力するだけで外皮計算書が作成できます。

今回の物件で入力したエクセルデータはこちらです。

今回のまとめ

□ 熱貫流率の計算をする
□ 開口部の拾い方
□ 高天井や勾配天井のある場合
□ 基礎断熱で基礎高さが400を超える場合
□ 基礎のシート入力

それぞれに注意し、実際に入力してみましょう。


一番最初にも記載しましたが、戸建住宅で300㎡を超えていなくても、省エネ基準を満たしているかどうか建築士は建築主に説明する「説明義務」が法律で課せられています。

「住宅性能評価・表示協会」の外皮計算書を用いてUa値やηac値を導き出して、建築主に説明することをおすすめします。

この記事が役に立った、面白かったという方はコメントしてくださいね。

また、FacebookやTwitterでみなさんのお役にたてる情報発信しています!

「いいね!」や「フォロー」していただけるとうれしいです。ヨロシク(b・ω・d)デス♪

アーキトリック一級建築士事務所

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です