設計事務所の設計料はどうやって決める?適正な設計料の計算方法とテンプレート

設計事務所の設計料は事務所によってさまざまな決め方があります。

住宅設計の場合、一般的に言われているのが工事費の10%が目安になっています。

工事費といっても解体工事や外構工事まで含めるのか、追加工事はどうなるのかや、建築工事だけなのかなどで料率での計算は変わってしまいます。

じゃあ、設計料ってどうやって決めるの?

私どもの設計事務所では、床面積からの設計・監理の作業日数を割り出し、国土交通省の業務委託等技術者単価を掛け合わせてた略算方法で設計監理費を算出しています。

しかしながら、この計算だと設計監理費が高くなってしまう場合があるので、

実際にかかるであろう人工から設計料を計算して、その二つを比較して、安い方で契約するようにしています。

実際にかかるであろう人工からの計算は、今までの経験から作業ボリュームを割り出すので、

一般の人が計算することはできないと思います。

今回は、設計料がどのように決まっているのかの紹介と、設計料が適正かどうかの判断するテンプレートを用意しました。

このテンプレートを使うと床面積から大体の設計料がわかるものになっています。

この記事で、設計事務所の設計料に不安を持っている人が、適正な設計料はいくらになるのかを計算できるようなれば幸いです。

【自己紹介】

Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所

設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。

店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。

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適正な設計料の計算方法

設計料の計算方法は大きく分けて以下の方法があります。

・工事費のパーセンテージ
・実際かかる人工から決める
・作業日数に技術者単価を掛ける

どの方法を選ぶのかはそれぞれの設計事務所の方針にもよりますが、

床面積からの設計・監理の作業日数を割り出し、国土交通省の業務委託等技術者単価を掛け合わせた略算方法設計監理費を算出する方法での計算方法は

テンプレートを使用すれば誰でも計算できるので、適正な設計料を知るにはとてもいい方法だと思います。

テンプレートダウンロード

作業日数に技術者単価を掛ける計算方法のテンプレートはこちらからダウンロードしてください→「設計監理料テンプレート」(エクセルデータ)

このテンプレートは、床面積から作業日数を算出し、技術者単価を掛け合わせる設計料の計算と、私どもの設計事務所で使っている工事費に対する設計料率を表にしたデータになります。

その他の設計料の決め方

工事費のパーセンテージから決める計算方法と実際かかる人工から決める計算方法は後ほどご紹介します。

まずは、床面積から作業日数を算出し、技術者単価を掛け合わせる設計料の計算を一緒に打ち込みながら使ってみましょう。

テンプレートの入力方法

テンプレートの入力方法は特に難しいことはありませんが、床面積をどこまでみるのかで設計料が変わってくるので注意しましょう。

私ども設計事務所の場合は、原則として監理料の発生する範囲の床面積を入力しています。

外構工事、解体工事の建築面積などは含まず、ウッドデッキやバルコニーなどの面積は含めています。

一般的に施工床面積と呼ばれるものを入力すればいいのですが、施工床面積には小屋裏の面責などが含まれている場合があるので注意しましょう。

(※ロフトなどがある場合は床面積に含めます)


テンプレートのグレー色の箇所に数値を入力すると計算できます。

施工床面積と床面積補正

木造平家の施工床面積が146.57㎡の場合のケースを入力してみましょう。

作業時間の補正のところの床面積の合計の欄に146.57と入力します。

隣の床面積補正の欄に146.57-100=46.57を入力します。

別表第14の戸建て住宅(詳細設計を必要とするもの)の表には、50、100、150、200、300㎡しか表記がないため、

床面積補正という値を用いて補正後作業時間合計(人・時間)を計算するためです。

作業日数の算定

床面積の合計と床面積補正を入力すると、別表第14の表の100㎡の下の方に作業日数(人・日)に129という値が計算されます。

この数値を上の方の計算式の【a.標準業務量】のところに129と入力します。

人件費単価を入力

次に、【c.人件費単価】のところに下の表からの人件費単価を入力します。

一級建築士取得後の経験年数に応じて技師A〜Cまで区分されています。

※人件費単価は令和3年度設計業務委託等技術者単価(国交省調査抜粋)を参考にしています。

換算率とは経験年数が多いとそれだけ作業か早いということを考慮した率のことです。

低減率

次に【②低減率】のパーセンテージを入力します。

この低減率はA,B Cタイプによって分類されています。

Aタイプ100%
【設計:関連資料が極めて少なく、参考例もほとんどない場合】【工事監理:告示内容の全てを行なう場合】

Bタイプ80%
【設計:類似の参考例や資料が豊富にある場合】【工事監理:業務の一部を行なう必要がない場合】

Cタイプ60%
【設計:参考にする設計図書の一部を修正して使用できる場合】【工事監理:業務のかなりの部分を行なう必要がない場合】

住宅設計の場合は資料が極めて少なく、参考例もほとんどない場合などほとんどないので、Bタイプ80%になると思います。

その他の経費

略算方法の設計料の計算の後ろの方の経費についてですが、経費は大きく分けて下のようになっています。

③間接経費
印刷製本や複写費、交通費など建築物の設計業務に関して直接必要となる「直接経費」と、建築士事務所を管理運営していくのに必要な人件費や研究調査費、減価償却費や通信費などの「間接経費」の合計。

④特別経費
出張旅費や特許使用料、その他建築主から特別の依頼に基づいて必要となる費用の合計。

⑤技術料等経費
その業務において発揮される技術力や創造力、業務経験や総合企画力、情報の蓄積などの対価として支払われるもの。

私どもの設計事務所では、竣工図面の製本や3DCGパースの制作費、模型の材料費、プロカメラマンによる竣工写真撮影費用などを間接経費にしています。

遠隔地での設計・監理業務の場合は特別経費で交通費や出張旅費などを入力します。

技術料等経費は今までの住宅設計で経費として取ったことはありません。

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以上が設計料の計算のテンプレートの入力方法です。

簡単な入力で設計料が計算できると思います。

これが、国土交通省が定める技術者単価を用いた略算方法の設計料が目安になります。

その他の設計料の決め方

実際のところ公共性のある工事以外の民間の仕事で、前述した設計料を取れればいいのですが…

なかなか納得しない施主もいますので、次は工事費のパーセンテージと実際かかる人工で決める計算方法で比較してみたいと思います。

工事費のパーセンテージ

前述した木造平家の施工床面積が146.57㎡の場合の設計見積での建築費用は3,700万円だったので、設計料率12.08%となります。

※テンプレートの料率の表の第4類〜4,000万円を参照

3,700万円×12.08%=約446万円

となります。

先ほどの計算より高くなってしまいます。

実際かかる人工で決める

実際かかる人工で決める計算方法は大まかに以下のようになります。

基本設計
30日×15,000=450,000

実施設計
45日×30,000=1,350,000

構造設計
外注見積に1.1をかけた設計料
220,000

設備設計
外注見積に1.1をかけた設計料
275,000

現場監理
60日×15,000=900,000

その他の諸経費
模型製作費、3DCGパース製作費
150,000

製本代、竣工写真撮影費用
90,000

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合計3,435,000円

消費税10%を足すと、設計料は3,778,500円となります。

※基本設計は図面を描く分量が少ないので日当の半分で計算しています。

※確認申請等にかかる経費は含まれていません。

※実施設計は日当30,000円程度。外注で請負う図面単価が一枚当たり30,000円なので、1日に図面1枚を仕上げたとしてこのぐらいの日当でやっています。

※現場監理の人工単価は現場にいても半日程度なので日当の半分で計算してます。

テンプレートでの計算より安くなっていますが、ほぼ変わらない金額が計算されました。


この3種類の方法で計算してみて一番安い設計料をお客さんに提示して納得してもらっています。

まとめ

今回は、設計料がどのように決まっているのかの紹介と、設計料が適正かどうかの判断するテンプレートを用意しました。

このテンプレートを使うと床面積から大体の設計料がわかるので設計事務所から提示された設計料が適正かどうかわかると思います。

民間の設計料は実際かかる人工で決める計算方法で決まることが多いのですが、

国土交通省が定める技術者単価を用いた略算方法の設計料が目安となるのでぜひテンプレートを使ってみて実際に計算してみましょう。

この記事で、設計事務所の設計料に不安を持っている人が、適正な設計料はいくらになるのかを計算できるようなれば幸いです。

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