悪魔のささやき「セルフビルド」の現実的な線引きとは?

職人さんたちのプロの仕事を目の当たりにしている立場上、これまでセルフビルドについて深く考えていなかったのですが、DIYの最高峰「セルフビルド」で住宅を建てることについて少し考えてみます。

「あいている敷地に40坪程度の木造住宅を自分で建ててみる」

ときの注意点を (自分用に) まとめてみました。

※前提として時間と施工する気力・体力のある場合とします。
※実際の施工についての諸問題(工具の問題、仕上げの完成度、木造住宅工事仕様書どおりの施工方法や手順等々)は今回は除外します。

その土地で建てられるか?

■ 自由に家を建てられない土地がある

下記の地域地区には(法的に)建てるのが難しくなる場合があるので注意が必要です。

①市街化調整区域
②地目が農地
③用途地域が工業専用地域

①市街化調整地域とは無秩序な市街地の拡大を防ぐ地域です。そのため、市街化調整区域には住宅などの建築には制限があります 。
都道府県や地方自治体に許可申請が必要
地盤改良の必要性
住宅ローンの問題
インフラが整っていないケースが多い
等々があります。

②地目が農地でも家を建てられる地域もあれば、地目を宅地転用してから住宅を建設しなければいけない場所もある。

③建築基準法上の用途地域による制限で工場のための地域なので、どんな工場でも建てられるが、住宅・お店・学校・病院・ホテルなどは建てられない

※そのほか地区計画などによる制限がある場合もある。

その土地に家が建てられるのか、どれくらいの大きさの家が建てられるのかなど実際に役所に足を運んで調べる必要がある。

※建築確認についてはこちら

素人で大丈夫なの?

素人で大丈夫なの?
■ 木造建物は作ることに資格は必要なし

資格要件があるのはあくまでも設計と工事監理だけであって、【施工】ではありませんから、建築士に設計と工事監理を依頼して、施工を自分でやるのは大丈夫

延べ面積が100㎡を超える場合は、その設計工事監理は、建築士の資格を持った者でないとできない。
※ 静岡県(浜松市裾野市)では
無資格者が設計できる防火地域及び準防火地域以外の建築物で60㎡以内(防火地域又は準防火地域内は延べ面積10㎡以内)
( 昭和59年3月23日条例第20号 )

■ 電気配線は電気工事士の資格が必要
■ 公設の給水工事は自治体の指定業者
■ ガスの工事も業者のみ
■ 電話線の配線も業者のみ
■ エアコン取付け工事は資格なし

※コンセントの移設や切り替え、内外接続線を壁に固定する作業などは、「電気工事士2種」の資格がないと行うことがでない。

お金はどうする?

規模にもよりますが、ある程度まとまった「お金」が必要です。

「ローンを組めば資金面は解決できる?」

と思ってしまいがちなのですが少し問題があるようです。

住宅ローンについて

セルフビルドで建築を行う場合は銀行などの金融機関から融資を受けることが出来ない。

借り入れに必要な「工事契約書」と「見積書」がないということはその建築が金額換算で「いくらの価値があるのか?」が金融機関が判断できないという理由です。

これには解決方法があります。
簡単に言ってしまうとこれ↓

「工務店と部分的に工事委託、請負契約する」

銀行にとって重要なのは「概算でどのくらいのお金がかかった建物なのか?」なので

①資材等は工務店(または建材屋や材木店) 経由で仕入れる

※ホームセンターやインターネットでもいいのだが大量に仕入れる場合は領収書の整理や粗悪品が混じっている場合の返品、運搬が結構大変

②工務店と部分的に工事委託・請負契約をする

など「かかるお金を明確にする」工夫は必要です。

セルフビルドじゃなくなっちゃうよという突っ込みはなし!

現実的に考えてハーフビルド、半セルフビルド、ハーフセルフビルドなるものも選択肢に入れておくこともお勧めです。

どうしても一人では大変な工事もあります。

代表的なものは以下の工事です。

 基礎工事
(地盤調査・掘削・配筋・型枠・生コン打設)
■在来工法の建て方
(人工・足場・クレーン・木材加工など)
■電気・水道・ガス・電話などの専門工事

各種保険関係のこともあるので建設業許可をもっていて工事全体にアドバイスしてくれ、いざというときには責任を請け負ってくれるような工務店に工事の一部をお願いすることも選択肢として考えておくことが必要です。

各種保険はどうする?

■ 住宅瑕疵担保責任保険について

住宅瑕疵担保責任保険とは構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に関して発生した瑕疵による不具合の補修費用を10年間保証です。

新築住宅を供給する事業者には加入が義務付けられている。

建設業登録をとってない建設業者、宅建業者。業者登録していないつくり手は、加入する必要はない。

セルフビルドの場合は加入の必要はない。

瑕疵が見つかれば、補修や補修期間中の仮住まいの費用などは基本的に「自己責任」です。

※工務店と部分的に工事委託・請負契約した場合は工務店の責任範囲と自己責任工事の範囲の線引きをはっきりさせておく必要があります。

施工の分離発注でも不可能ではないのだが、現在では瑕疵担保責任の問題もあり工事全体を調整する元締めがどうしても必要となる。

■ 火災保険について

工事中の建物の火災保険等は工事中に火災があった場合は、
火災発生前の工事状態まで復旧する際、必要な費用の全額が支払われます。

別荘・セカンドハウスは、県民共済の火災保険には入れない
県民共済で扱う火災保険は主たる住居として使用している建物に限定されている。

民間の火災保険であれば加入可能

完成後の火災保険は、基本的には任意

■ 労働保険

通常の建築工事においては施工する建築業者に事故、怪我が発生した場合は労災補償が給付されます。

セルフビルドにおける事故・怪我等については、自分自身やサポートする人たちの工事は労働者の業務と見なされないため、ご自身の健康保険等を使用してもらう形となる。

家族や友人をセルフビルドに誘う場合はこの点をくれぐれも説明した上で施工しなければならない。

以下の保険・保証に関しても加入の検討が必要です。

■ 工事期間中の損害保険

ご近隣の方などの第三者への過失があった場合や、建物や資材に対して、万一盗難や外部からの損傷などがあった場合にも、しっかりと対応できる保険。

■ 地盤保証

不同沈下に起因する建物の損害に対する原状回復のための補修費用、並びに補修期間中の仮住居費用等を引渡日より20年間、1事故につき最大で5,000万円まで保証。

確認申請は必要なの?

今回想定しているのは

「あいている敷地に40坪程度の木造住宅を自分で建ててみる」

ということなので木造40坪(約120㎡)の新築(または増築)となるので確認申請が必要です。

防火地域・準防火地域以外の地域で増築・改築・移転する部分の面積が10㎡以内の場合に限り建築確認申請が不要 (ただし新築は含まれない)
郊外の住宅地等では防火地域及び準防火地域の指定を受けていない事が多くこれに該当するケースは案外と多い 。

※事前に役所等で相談することが必要です。
※確認申請の手続きが不要と言っても増築・改築・移転後の建物は建築基準法の基準に適合していなければならない。

延べ床面積が100㎡以下・2階建て以下の木造建物は自分でも設計・工事監理を行うことが可能です。
確認申請も受け付けてくれます。
ただし、一般の方が確認申請を出す場合は、提出するべき書類・図面が増えます
※詳しくは役所の建築審査課などでご確認ください。

100㎡を超えた場合は建築士に設計・工事監理を依頼する必要があるので、確認申請も建築士に頼んだほうがよい。

セルフビルドを支援する建築家紹介センターがあるのでそこで相談するのもひとつの手である。

やりますか?セルフビルド

「あいている敷地に40坪程度の木造住宅を自分で建ててみる」

を想定していろいろと外堀を考えてみましたが、
すべてセルフビルドで自分の住宅を建てて住むことの達成感と充実感は半端ないと思います。
現在では道具や材料も優れたものがたくさん出回っているし、建築費はハウスメーカーに建ててもらった場合よりかなり安くなることは事実でしょう。
また、インターネットや書籍で紹介されている情報や体験記などもとても参考になります。

が、あえて現実的なことを言わせてもらうと

■ 確認申請、中間検査、完了検査などの法的な問題は、建築士事務所が担当

■ 基礎工事や建て方、専門工事(電気、ガス、水道、電話など)は工務店が担当

■ その他の工事を自身と工務店とで線引きして各々が担当

■ 引き渡し後に住みながらゆっくりと自身が内装仕上げを行う

が妥当な線だと思います。

人間やめますかそれとも…

的な魅力のある「セルフビルド」ですが、ハーフビルドや内装のみDIYでやってみるなどが現実的ではないかと思う今日この頃です。

※ここまで現実的(かつ否定的?)なことを思うがまま書いてしまいましたが、それでも自分でやりたいんだよ!というメンタルの強い人には設計事務所として全力で応援します^^

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