物語性や人間の一生を空間に表現![芹沢光治良記念館] /菊竹清訓

————————————————————
所在地  静岡県沼津市我入道
設計   菊竹清訓
竣工   1970
機能   記念館
規模   地上2階
構造   RC造
————————————————————

平面は八角形を変形させたコアを四隅に配置し、中央に広い空間を作るという構成。
四つのコアはほぼ東西南北に配置されている。
東側のコアは一部分が矩形として飛び出た形状となっておりその側面に十字状のガラスかはめ込まれている。
ここは内部では階段室の踊り場となり、市民ギャラリーとしての利用されてい。

東西方向を軸とし左右対象な建物であるが、入り口は北・東の2つのコアにはさまれた間から入ることになる。

左右非対称に力強くそびえ立つ2つのコア。大きな高さの門のようなファサードである。

エントランスの手前にはさざ波のような緩やかな階段がありそこから入ることになる。内部に入ると5メートル近い天井高の展示スペースがある。
四隅にしっかりとしたコアによる構造物があるからなのか、中央は高い天井を感じさせないひろがりと落ち着いた空間的なまとまりを感じさせる。

設計者である菊竹清訓は、芹沢光治良とその文学を体現するため、様々なモチーフを取り入れている。

1階の展示スペースを見てまわり芹沢光治良氏の文学作品に想いを馳せながら階段にて2階へ進む。
階段室を、漁で捕らえられた魚の最後の瞬間のような海底から地上へ浮かび上がる一匹の魚の気持ちで登って行く。

螺旋階段は壁から少し離して設けてあり、このスリットを通し光が壁沿いに下にまで降り注ぐようなディテールとなっている。

薄暗い階段室に東側のガラスから縦方向に一直線に光が強調されて入ってくる。途中、魚がこれまでの人生を振り返った瞬間に見えた十字架状のガラス。(魚はキリスト教徒?)

漁具のウキをイメージとした照明器具…

建築家の魂のこもったディテールの宝庫と言っていい至極の空間である。
幻想的な空間体験のあと松の葉をモチーフとした天井を眺めながら2階のソファにてひと休憩。

海風が強かったので屋上へは出なかったが、ここからは我入道の海岸線より駿河湾に沈む夕日を眺めることができるようである。

私としては近代建築のメタボリズムとしてのおおまかに分類していた建築作品でしたが、実際の建築を体験してみてその物語性や人間の一生を空間に表現するなどなかなかできることではないなと感嘆するとても満足できる建築作品でした。

Facebook・Twitterでみなさんのお役にたてる情報発信していきます。「いいね!」や「フォロー」していただけるとうれしいです。ヨロシク(b・ω・d)デス♪

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です