開放的な空間づくりは吹抜けだけじゃない!失敗しない勾配天井の作り方
平屋の住宅では立体的に開放感のある
「吹抜け」
を作ることが難しいです。
開放的な空間づくりを実現するためには
「勾配天井」
を考えるのが良いと思います。
また、2階建ての2階は屋根勾配を利用することで開放感のある魅力的な空間づくりもできます。
そもそも勾配天井ってなに?
室内の天井が傾斜つまり、勾配のついた斜めの天井のことを「勾配天井」といいます。
この「勾配天井」ですが、作り方によっては吹抜けに負けないくらいの開放感的な空間づくりができます。
今回は「勾配天井」についてどのように作れば失敗しないのかや、メリット・デメリットをみていきたいと思います。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
失敗のない勾配天井にするには
失敗しない勾配天井を作るには注意するポイントがいくつかありますが代表的なものは以下のとおりです。
・屋根断熱にする
・小屋裏換気を考える
・高窓を設置する
以下、ひとつづつ説明していこうともいます。
屋根断熱にする
勾配天井の場合、天井の野地板や梁、垂木をあらわし(隠蔽しないで露出させる仕上げのこと)にするケースがあります。
天井を張る場合でも天井ふところ(野地板と天井仕上げの間の空間のこと)があまりとれないので、天井に必要な厚い断熱材を敷き込むのには苦労します。
※ウレタンフォームを吹付ける断熱も良いのですが、天井の断熱材の厚さは160mmはほしいところです。
そんな時は屋根断熱にすることで解決できます。
屋根断熱とは屋根の野地板の上に断熱材をのせる工法で、野地板より下の構造をあらわしにすることが可能になります。
小屋裏換気を考える
夏場は湿気を含んだ温かい空気が小屋裏にたまりやすく、夜になって外気温が低くなると小屋裏で結露を生じてしまいます。
そのため適切な小屋裏換気をする必要があります。
小屋裏換気についての考え方はこちらをご参照ください↓
勾配天井の場合はただでさえ天井ふところが少ないのに加え、そこに断熱材を敷き込めば換気に必要な空気の流れの妨げになってしまいます。
断熱材の厚みは梁や垂木の下で確保する(通気層を設ける)ことや、棟(勾配屋根の頂部)からうまく空気を抜くように小屋裏換気を考えると良いと思います。
屋根断熱にする場合でも、屋根材からの雨水の侵入が考えられるのでしっかりと通気層を設けることも重要です。
屋根通気に関してはJotoさんのHPをご参照ください↓
小屋裏換気ナビ/Joto
高窓を設置する
せっかく勾配天井を作るのであれば、高窓の設置を考えましょう。
後述しますが、勾配天井の高い位置に窓を設けることで室内にたくさんの日光を取り込めるたり、室内の空気の流れを生み出し換気できたりと、とても役に立ちます。
取り付けるときの注意点としては、隣にマンションなどの高い建物があると室内が丸見えになってしまいますので、隣地の状況をしっかりと考えて位置を決めるようにしましょう。
また、開閉のオペレーターチェーンは壁の隅に来るように配置しましょう。
電動式の開閉装置もおすすめですが、装置が大掛かりになってしまうと金額的に高くなってしまうので開閉するところと開閉しない所(Fix窓)のバランスを考えましょう。
勾配天井のメリット
先にも述べましたが、勾配天井のメリットについてみていきましょう。
勾配天井は片流れ屋根との相性がいいです。片流れ屋根のメリット・デメリットについてはこちらをご参照ください↓
部屋に開放感がでる
勾配天井の一番のメリットは部屋に開放感が出ることです。
同じ広さの空間でも、勾配天井だとタテ(上部)に視線が抜けるので広くて開放感が感じられます。
やはり開放感のある空間にできることは、勾配天井の一番のメリットとだと思います。
部屋を明るく出来る
天井を勾配天井にすることで、高い位置にも窓を付ける事ができるので部屋を明るくできます。
部屋を明るくする時によく使われるトップライト(天窓)に近い効果が得られます。
周りの家の影響で明るさを確保しにくい平屋の家でも家の中に光を入れられるのでおすすめです。
通気が良くなる
暖かい空気は上へ、冷たい空気は下に動きます。
勾配天井でできた高い位置に開けられる窓を付けてあげることで、部屋の中の通気が良くなり家の風通しが良くなるというメリットもあります。
部屋の中で風が抜けると気持ちいいですよね。
私の事務所も勾配天井で高窓を設けているので夏場でも窓を開ければ風が通るのでかなり快適に過ごせます。
勾配天井のデメリット
勾配天井にはデメリットもあります。次に勾配天井の代表的なデメリットをみていきましょう。
メンテナンスに手間がかかる
勾配天井の場合、高い部分のメンテナンスに手間がかかります。
いまでは照明はLEDでなので頻繁に取替はありませんが、シャンデリアやペンダントライトなどホコリをとるのも一苦労です。
高窓など取り付け高さは脚立で届く範囲がいいと思います。
6尺(1.8m)の脚立なら3.6~3.8mが最頂部の取り付け高さです。
天井のPBがわれてしまったり、ヒビが入った場合は補修するのに足場を組まなければならないので、メンテンナンスには手間がかかります。
照明計画が難しい
勾配天井を照らすための照明器具の選び方はこちらをご覧ください↓
部屋の明るさを確保しつつ、雰囲気のいい空間をつくるなど、普通の部屋よりも照明計画の難易度が高くなります。
またペンダントライトなど上から吊るす場合は地震のときの振れ止め用のワイヤーなどが必要です。
お金がかかる
勾配天井にすると壁や天井面積が増える上に、施工する場合に足場を組まなけれっばならないために手間がかかりコストアップします。
天井材の横揺れを防止するために勾配天井のコーナー部分は構造用合板を張ったり、火打梁などの補強材が必要になります。
勾配天井を作る場合は、上述したことを気遣いできる大工さんや施工業者でないと難しいと思います。
私の事務所の天井は勾配天井なのですが、クロスの下地のPBにヒビが入っています。
そのため自分で束に建築金物を取り付け横揺れを防止したり筋交いを入れたりして補強しました。
もっとお金をかけて最初から補強していればよかったと後悔しています。
まとめ
今回は「勾配天井」についてどのように作れば失敗しないのかや、メリット・デメリットをみてきました。
もう一度失敗しないために必要なことを確認すると
・屋根断熱にする
・小屋裏換気を考える
・高窓を設置する
となります。
その他の注意点として
高窓は脚立の届く範囲で取り付けること。
6尺(1.8m)の脚立なら3.6~3.8mが最頂部の取り付け高さ
勾配天井のコーナー部分は構造用合板を張ったり、火打梁などの補強材が必要
などがあげられます。
いくらデメリットがあったとしてもそれを上回る開放感や快適性があるのも事実です。
勾配天井を考える際はしっかりとデメリットを理解した上で作りましょう。
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アーキトリック一級建築士事務所