メリットとデメリットのある片流れ屋根の家で実際に暮らした感想
いろいろなタイプの住宅がありますが、どんな建物でもメリットとデメリットがあるわけで一概にはどれがいいとはいえません。
今回は片流れ屋根の家のメリットとデメリットに焦点をあて、実際に暮らしてみた感想をふまえ考えてみたいと思います。
目次
屋根の素材について
片流れ屋根の材料は「ガルバリウム鋼鈑立平葺き」ほとんどです。
ガルバリウム鋼板について
【アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板】の名称の事を言います。厚さは約0.4mmと非常に薄く軽くて加工がしやすいです。また高い耐久性もあり丈夫で長持ちします(寿命は約30年で比較的長くメンテナンスは15年くらいから必要)。
軽くて強いのが特徴なので地震に対して強く、コストは比較的に安くなります。「金属屋根」と言うと、主にガルバリウム鋼板を指すほど、一般的に浸透されています。
ちなみに、そのほかの屋根材料としては粘土瓦やセメント瓦、トタン、スレートなどがあります。それぞれメリットとデメリットがありますので建物形状や予算を考えながら設計段階で選択することが必要です。
粘土瓦について
●メリットは寿命が50年以上と長くメンテナンスも不要で素材自体に耐熱性能や防音性能があります。
●デメリットはコストが割高で屋根が重くなるため耐震性能は低くなります。
昔から用いられている屋根材料ですので、やはり和風の家では重厚感があって屋根材料の王道です。
※「葺く」とは簡単に言うとガルバリウム鋼板や瓦などの材料での屋根を覆うことです。
※「立平葺き」 は芯木と呼ばれる木材(垂木)が入っていないものでガルバリウム鋼板だけで縦ラインを立ち上げている葺き方です。
ガルバリウム鋼鈑立平葺きの良い所
最近ではガルバリウム鋼板縦平葺の家が多くなっていきましたが、流行るにはそれなりの理由があります。代表的な良い所は以下の通りです。
・ゆるい勾配でも施工が可能
・手間がかからない
・雨漏りしにくい
ゆるい勾配でも施工が可能
必要な屋根勾配(屋根の傾き)が5/100(0.5寸勾配)以上と、勾配の緩(ゆる)い屋根でも施工が可能です 。最近流行の箱型住宅で三方パラペットを立ち上げる場合屋根勾配はなるべく緩やかにしたいので、そんな時でも施工が可能です。
手間がかからない
屋根の長さにあらかじめカットされた屋根材を張るだけなので現場で加工するなどの手間がかかりません。手間がかからないということは、施工が簡単でコストカットにつながります。
雨漏りしにくい
横のラインに継ぎ目がないので屋根面での雨漏りはしにくい特徴があります。
※ 片流れ屋根の棟(頂上部)から軒(下側)まで1枚の施工をするので、場所によっては材料の搬入や施工が困難な場合があります。工事車両を止める場所や材料を運ぶ方法など考えておいたほうが良いと思います。
今回は片流れ屋根なので代表例であるガルバリウム鋼鈑立平葺きで考えていきます。
片流れ屋根の代表的なメリット
片流れ屋根の代表的なメリットは以下の通りです。
・建築コストを下げることが出来る
・太陽光パネルを多くのせられる
・シンプルな外観にデザインできる
建築コストを下げることが出来る
屋根が一面でシンプルなので、寄棟屋根や方形屋根に比べると屋根工事にかかるコスト面やメンテナンス費用が比較的安く抑えられる。※外壁の面積が増えるので外壁工事の費用は上がります。
太陽光パネルを多くのせられる
片流れ屋根は屋根面が一枚で一方向を向いた形となるため、多くの太陽光パネルをのせることが出来ます。※現在では売電価格は下がっているのであまりメリットを感じないかもしれません。
シンプルな外観にデザインできる
従来の寄棟や切妻屋根などに比べると、単純にシンプルさが増すので目新しさやモダンな雰囲気の外観にデザインができます。好みにもよりますが人気の箱型デザインも片流れ屋根のが多いです
暮らしてみて感じるメリット
・建築コストを下げることが出来る
・太陽光パネルを多くのせられる
・シンプルな外観にデザインできる
・音響的に立体感が生まれる
ひろがりのある室内空間
狭い間口や平屋の建物でも屋根の勾配を生かした室内空間をつくることが出来ます。
屋根の勾配を室内空間に生かすことで高さ方向に空間的なひろがりが生まれます。空間的にひろがりがあることで平らな壁や天井で囲われた室内空間にいるよりも気持ちに高揚感がうまれます。
自分の場合は事務所が勾配のある天井ですので、天井を眺めながら考えるアイデアは頭の上からおさえられることなく自由な発想ができる気がします。
2階がリビングで勾配天井の家はとても明るく開放感のある空間となります。
家族と話しをしたりくつろいだりする空間にひろがりがあると気持ちも高揚してしまい話が弾みウキウキしてきちゃうかもしれませんね。
高窓を設けることでのメリット
勾配天井にするときに取付けたいのが高窓です。高窓とは高い位置にある窓のことです(屋根に設置されるのは天窓)。夏場の暑さや冬場の寒さを解決してくれるのがこの高窓です。
夏の暑さで熱をもった空気が勾配天井を伝わって上のほうにたまり、高窓で換気してくれるという効果があります。しかしながら夏の雨の日は閉めなければならないので換気は出来ません。その他の窓で換気する必要があるので空気の流れをプラン段階で検討する必要があります。
自分の場合はエアコンの人工的に冷やされた空気が苦手なので換気や自然な風が通ってくれるようにプランを工夫しエアコンなしでも快適に暮らしています。
高窓から夜空の月や星も見上げられたり雲を眺めたり、自然と今日の天気を気にするようになったりもします。
冬は窓が高い位置にあるので日差しが室内にめいっぱい差し込んでくれます。やっぱり直射日光はぽかぽかとあったかいです。まためいっぱい日光が床にあたるのであたためられ足元が暖かくなります。
高窓にもデメリットはあります。高い位置に取り付けてあるので手が届きにくく窓を開閉するときは慣れが必要です。リモコン式もありますが、うちの場合はコストを考えて手動にしました。フックを先につけた伸縮性の棒を自分で作って開閉と施錠していますがとくに問題ないです。
ロフトを作ることができる
ひとりになりたいときはロフトがお勧めです。夏場は熱気がこもって大変ですが、冬にはぽかぽかとあったかく暖房がいらないほどです。なにより狭いところは誰にも邪魔されずに落ち着ついて動画を見たり本を読んだりできます。狭いところ好きにとっては自分だけの空間ができるのはいいです。
ロフトについての記事はこちらへ↓
音響的に立体感が生まれる
内部空間のつくり方にもよりますが、天井高の違う空間では音の反響音が立体的になります。これは意図していなかったのですが、打合せスペースは落ち着いた空間にしたかったため平らな低い天井にしてあります。この低い平らな天井側に音源としてラジオとスピーカーが置いてあり音を鳴らすと高い方の勾配天井や上にあるロフトに音がひがり、音響的な響きのある立体感を生み出しています。
片流れ屋根の代表的なデメリット
デメリットとしてあげられる代表的なものは以下のとおりです。建物を考えるときや工事するときにそれなりの対策が必要なので参考にしてみてください。
・棟部・けらば部に雨漏りが集中する
・屋裏の換気不足により結露や劣化
棟部・けらば部に雨漏りが集中する
棟部(頂上部)・けらば部(サイド)は台風などの日に吹き上げられた風で雨水が浸入しやすい箇所です。軒先の出(壁からのでっぱりのこと)を多くすればいいと考えがちですが、その面につたわる雨水の量が増えるので雨漏りのリスクも増えます。
屋裏の換気不足により結露や劣化
木は呼吸しているので空気中の水分も一緒に取り込みます。また屋根など昼と夜の温度差の激しいところでは空気中にある湿気で結露する場合があります。そのまま放置すると木材が腐ることあるので小屋裏の湿気を逃がしてやるために適切な換気が必要です。
片流れ屋根の小屋裏換気についての計算方法についてはこちらをご参照ください↓
工事のときに注意点すること
・棟部には透湿ルーフィングを施工
・けらば部にはシール材付き水切り
・片流れの棟に通気できる製品を使う
棟部には透湿ルーフィングを施工
壁用の透湿防水シートと同じメーカーですが透湿ルーフィングというものがありますので施工会社にたのんで棟部に巻いてもらうことをお勧めします。
けらば部にはシール材付き水切り
けらば部(サイド)では強風で雨水や埃が浸入する場合がありまのでシール付きの水切金物の使用をご検討ください。
株式会社 ハウゼコ 「ハウゼコセットB」
片流れの棟に通気できる製品を使う
湿気を含んだ暖かい空気は上のほうに行きますので棟部で換気するのが一番です。片流れ屋根の棟部で雨水の浸入を防ぎかつ換気の出来る金物があります。
株式会社トーコー 「片流れ双快 」
設計や現場で注意している点
箱型住宅などに多いのですが、パラペット(小壁)を立ち上げることで雨漏りの心配のある棟部(頂上部)・けらば部(サイド) の軒天(壁から出た屋根の天井部)を無くすことが出来ます。
またデザインの好みにもよりますが、どうしても棟部に軒先を作りたい場合は壁からつながる左官仕上げにすることでも壁と棟部の軒天との接合部からの雨水の侵入を防ぐこともできます。
小屋裏の換気に関してですが、片流れ屋根の下側に軒の出(壁からのでっぱり)を多くとることで自然換気をうながし、かつ夏の強い日差しを避けることもできます。
またパラペット笠木の側面で通気する方法もありいろいろなメーカーが製品を出しています。
うちで使ったのはこれ↓
日本住環境株式会社 「L型通気ライナー12」
パラペットで立ち上げ、笠木のサイド部分に通気のためすべてこれを張ってあります。
夏場の雨の日は高窓を閉めるための室内換気が難しいので、屋根のある屋外リビングや中庭(坪庭)を設けることをプラン上で検討することもお勧めです。
以上、自分の現場で注意することや暮らしてみた感想などをまとめてみましたが片流れ屋根のメリット・デメリットにしっかりと対策してゆけば遊びごころのある空間が実現できると思います。
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