ひとの生活や暮らしに寄り添う建築士としてやるべきことを考えてみる
今年(2022年)で建築士になって20年になりました。
節目であるこの年の初めに、建築士として今までやってきた仕事を振り返り、この先どんな建築士になりたいのかを改めて考えました。
私は「暮らしに寄り添う建築士」をこれからの目標にしようと思います。
そのように思ったきっかけは、2年間かけて友達とじっくりと暮らしについてディスカッションして作り上げた住宅でした。
これまでの自分の設計がいかに暮らしに対しての配慮が足りなかったのかを痛感しました。
普通の建築士の仕事とどう違うの?
その家族の暮らしに寄り添った設計をどこまで真剣に考えられるのかに違いが現れると思います。
これまでの私は旅館や店舗設計の延長線上で住宅を考える癖がありました。
実際にそこに住んでみて不便がないかより見栄えやカッコよさを優先させてしまうところがありました。
しかしながら、住宅設計の本質はその家族の暮らしに寄り添った設計ができるかであり、お施主さんの満足度が断然に違うことを実感できました。
今回は、私がこれから目標とする「暮らしに寄り添う建築士」になるために、
どのようなことを実践すべきなのかや、これからの建築士として何が必要なのかなどを考えてみたいと思います。
この記事が、何を目指したらいいのかわからない建築士の方の、悩みの解決に少しでもお役に立てれば幸いです。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
設計事務所のブログを始めて2年目で月間25000PVを達成!
住宅に関する悩みを解決すべく、ブログやTwitterで情報発信しています。
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目次
ひとの暮らしに寄り添うには?
私が考えてる「寄り添う」という意味は
「ひとの気持ちを理解する」ということです。
したがって
「ひとの暮らしに寄り添う建築士」とは、
そこに暮らすひとの気持ちを理解し、設計することでサポートできる建築士のことです。
曖昧な言葉ですが、次に具体的に何を実践していくのかを考えてみたいと思います。
一般のひとの生活や暮らしを実践
まずは、一般のひとの生活や暮らしを実践するはじめら始まると思います。
ここで言う一般のひととは日本の中央値の年収のひとのことです。
私自身、一般のひとなのですが…w
私の事務所に相談に来るお施主さんはこの層の人たちがほとんどです。
以前は、旅館の設計をしていたのでセレブが好みそうな非日常的な演出をデザインをしていました。
しかしながら、非日常的な演出は一般の住宅での生活の中で必要なのか?と問われると疑問がありました。
また、一般のひとの生活や暮らしをしているからこそ贅沢さが実感できるということもあります。
初めから全てが満たされている生活を送っているとその贅沢さがわからないと思います。
したがって、一般のひとの生活や暮らしを実践することが重要になると思います。
お金をかけずに節約に努める
次は、お金をかけずに節約に努めることが重要だと思います。
建築はお金があれば大半の問題は解決することができます。
しかしながら、限られた予算内で建築を納めるためには設計的な工夫が必要となります。
同じ問題でもお金で解決するのか、工夫で解決するのかは金銭感覚が問われるところですが…
お施主さんから預かった予算の中でやりくりできる能力はとても大切だと思います。
予算内でやりくりできる能力は、日頃からお金をかけずに節約して問題を工夫で解決していくことで培われると思います。
したがって、お金をかけずに節約に努めることが重要だと思います。
生活や暮らしの楽しみを知る
最後は、生活や暮らしの楽しみを知ることが重要だと思います。
生活や暮らしの楽しみって色々ありますよね
私の場合は
朝起きて朝日を浴びながら2階の中庭でコーヒーを飲むこと、
暖かくなったら、ロフトで横になりながら本を読むこと、
家族集まっての夕食も1日の楽しみです。
生活や暮らしの楽しみ方はひとそれぞれですが、自分が楽しいと思える時間や空間をより多く持つことが人生を豊かにしてくれると思います。
そのためには、まずは生活や暮らしの楽しみを知ることが重要だと思います。
建築士としてやるべきこと
ひとの暮らしに寄り添う建築士として実践することを見てきましたが、
次は建築士として設計することでサポートできるようになるには何が必要なのかを考えてみたいと思います。
暮らしの中での改善点を見つける
まず第一に、暮らしの中での改善点を見つけることが重要だと思います。
改善点を見つけ解決することで、より豊かな暮らしが実現できるからです。
例えば
・ダイニングに物が置かれて座れない席がある
・西日が強くて家具やトイレが壊れてしまった
・物が多くて部屋に出しっぱなしになっている
・脱衣室や風呂場が寒い
・階段を降りるのが辛い
などなど、改善したい点は暮らしていればたくさん見つけることができます。
それと共に、現状では解決できないことがらもたくさんあります。
これらを心に留めておくことで設計をするときに配慮すべき事柄として記憶され、設計に活かすことができると思います。
設計的な解決策を考える
見つけた改善点に対して設計的な解決策を考えることが重要だと思います。
例えば
食事の時に物が置かれて座れない席がある
→物が収納できるスペースを確保し席に置かないようにする
西日で家具やトイレが壊れてしまった
→西側に開口部を設けないことやブラインドをつける
など、収納できるスペースの確保は使わなくなった子供部屋を納戸として使ったりすることで解決できますが
そのスペースさえ無い場合は物を減らす努力やミニマルな生活をすることが必要になります。
設計的に解決することが困難な場合は、暮らし方を変えるしか無いと思います。
長年してきた暮らし方を変えることはなかなか難しいのですが、改善点や解決策を考えなければ見つけられないことです。
普段から改善点と解決策を考えることで設計に活かすことができると思います。
自らDIYやメンテナンスをしてみる
自らDIYやメンテナンスをしてみることも重要だと思います。
自宅のDIYやメンテナンスすることで色々なことを知ることができるからです。
その家の傷みやすい箇所や日頃からのメンテナンスが必要になる箇所などを知ることや、
実際に自分でDIYやメンテナンスすることで建築材料の耐用年数やDIY、メンテナンス用品を知ることができます。
その家の傷みやすい箇所がなぜそのようになるのかをネットで調べて、どのように設計すれば改善されるのかを知ることはとても重要だと思います。
そのためにも自らDIYやメンテナンスをしてみることがその改善策を考えることにつながり、結果として設計に活かすかことができると思います。
これからの建築士の生き方
ひとの暮らしに寄り添う建築士として実践することなどを考えてきましたが、
次はこれからの建築士の生き方について考えてみたいと思います。
といっても、これはひとそれぞれの考え方があるのであくまでも私個人の考えとしてご参考になれば幸いです。
プレミアムよりラグジュアリーを
みなさんは、プレミアムとラグジュアリーの違いってどこが違うのかわかりますか?
どちらも、高級感のある響きですが…
この言葉を明確に理解するためには[役に立つ]と[意味がある]という指標で考えると分かりやすいです。
詳しくは西野亮廣の「生き残るためのVIP戦略」をご覧ください↓
(プレミアムとラグジュアリーの違いについては44:30から)
[ラグジュアリー]=[認知度]ー[普及度]
ハウスメーカーのやっていることは
知名度と普及度の両方に力を入れている点でどちらかというとプレミアムなもの目指していると思います。
個人でやっている建築士や設計事務所がこれから生き残るには、ラグジュアリーを目指すべきだと強く感じました。
一人で担当できる住宅の設計・監理は1年間で3件が限界であり、認知度を上げて設計料を自分で決められるようになるしか生き残る方法はないと思います。
認知度を上げるためにはどうしたらいいの?
これについてはまだ私は色々と模索中なので残念ながら答えが出せていませんが…
SNSやyoutubeを駆使して認知度を上げる方法が今の時代にあったやり方なのかもしれません。
また、建築雑誌や本、Blogを書いたり、twitterなど自身の建築家としての考え方や生き方などをSNSで発信したりすることも必要になってくると思います。
しかしながら、建築士や個人の設計事務所がこれから生き残るにはラグジュアリーを目指すべきだということは理解できると思います。
建築士から建築家を目指す
建築士とは建築物を設計及び工事監理する職業の資格でありあくまでも職業です。
仕事としての建築設計に意味(付加価値)を持たせるには、建築士から建築家を目指すべきだと思います。
建築士と建築家の違いについてはこちらをご参照ください↓
建築家とは「生き方」や自分自身への覚悟のようなものなので「自分は建築家である」といったその日から建築家になることができます。
しかしながら、ただ建築家としての生き方を選択したとしても付加価値は生まれません。
どうしたら建築設計に付加価値が生まれるの?
一つの答えとしては、建築家としての認知度を上げることだと思います。
(認知度の上げ方については前述をご参照ください)
ここでいう付加価値とはブランド力のようなものです。
※ブランディングについてはこちらをご参照ください。
建築家として自分自身の仕事をブランディングするには[役に立つ]という指標から[意味がある]という指標で建築設計する必要があると思います。
つまり、その人にとって意味のあるオンリーワンの空間を実現することだと思います。
例えば
・バイクや車いじりの好きなひとのためにガレージを作りリビングからお酒を飲みながら眺められる空間
・バンドをやっているひとのためにレコーディングスタジオにもなる防音室
・料理好きのひとのためにみんなで料理ができるようなキッチン
など、暮らしの中での楽しいことをより楽しくしてくれる空間づくりが必要だと思います。
これは、建築士の仕事というより建築家の方が得意な分野だと思います。
したがって、建築士という仕事の枠にとらわれずに、建築家としての考え方や視点を持っておくことが重要だと思います。
住宅性能は一つの指標として捉える
住宅設計の場合は、住宅性能は一つの指標として捉える必要があると思います。
2元論的に住宅性能を考えた場合、性能をいくら高めたとしてもそれは[役に立つ]という指標から出ることができません。
前述した通り、[意味のある]という指標を求めなければブランディングできないと思います。
しかしながら、建築とはそこで日々暮らしていくものなので、いくら私にとって[意味がある]からといって
住宅性能をおろそかにしてしまうと暮らしずらい建築ができてしまいます。
よって、住宅設計の場合は住宅性能は最低限守るべき一つの指標として捉えるべきだと思います。
住宅性能を一つの指標として捉えることで、住宅性能を高めればラグジュアリーの中でも差別化が図れると考える方がいいと思います。
よって、 住宅設計の場合は、住宅性能は一つの指標として捉える必要があると思います。
まとめ
今回は、私がこれから目標とする「暮らしに寄り添う建築士」になるために
どのようなことを実践すべきなのかや、これからの建築士として何が必要なのかなどを考えてきました。
まとめると以下になります。
■ひとの暮らしに寄り添うには?
・一般のひとの生活や暮らしを実践する
・お金をかけずに節約に努める
・生活や暮らしの楽しみを知る
■建築士としてやるべきこと
・暮らしの中での改善点を見つける
・設計的な解決策を考える
・自らDIYやメンテナンスをしてみる
■これからの建築士の生き方
・プレミアムよりラグジュアリーを
・建築士から建築家を目指す
・住宅性能は一つの指標として捉える
となります。
ごくあたりまえのことを書いてきてしまいましたが、今の私にはこの生き方がこれからを生き抜くためには必要なことだと考えています。
奇抜な建築を作って知名度をあげたとしても、住宅性能が追っ付かなければただの住みづらい住宅になってしまいます。
また、住宅性能をいくら高めたとしてもそこに付加価値は生まれないです。
やはり、暮らしに寄り添う建築士として建築設計に向き合うべきだと強く感じる今日この頃です。
この記事が、何を目指したらいいのかわからない建築士の方の、悩みの解決に少しでもお役に立てれば幸いです
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アーキトリック一級建築士事務所