住宅の給水・給湯の工法ってなにがいいの?代表的な工法とメリット・デメリットについて
最近の給水・給湯管は架橋ポリエチレン管・ポリブデン管といった合成樹脂管を利用しています。
保護するための可とう性樹脂管であるさや管を用いたものなど、初めて聞く名前なので少し困惑してしまいそうですが、特徴を理解すればそんなに難しくありません。
工法はいろいろあるけど
結局なにがいいの?
それぞれメリットデメリットを知り、自分の生活にあった方式を選択しましょう。
※可とう性とは…自由に曲げることができるという性質のこと。
※架橋ポリエチレン管とは…白色の管、比較的硬い。使用温度95℃以下。
※ポリブデン管とは…ベージュ色の管、比較的やわらかい。使用温度90℃以下。
※ヘッダーとは…分岐管のことです。給水・給湯管を給水や給湯器のスタート地点でこのヘッダーを用いて分岐するためのものです。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
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現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
代表的な3つの工法
1.さや管ヘッダー工法
2.被覆ヘッダー工法
3.樹脂管先分岐工法
1.さや管ヘッダー工法
さや管(鞘管)とは架橋ポリエチレン管・ポリブデン管といった合成樹脂管(給水・給湯管)を保護するための可とう性樹脂管のことです。
電気工事で使うCD管やPF管のようなものです。
電気配管のCD管やPF管についてはこちらの記事をご参照ください↓
前述したヘッダーでスタート地点で分岐して、個々の機器にそれぞれ給水・給湯管を配管し接続する工法です。
一般的に、さや管をヘッダーから個々の機器まで先行して配管してます。
その後ヘッダーの分岐地点から、架橋ポリエチレン管・ポリブデン管といった合成樹脂管(給水・給湯管)をいっきに通していく工法です。
2.被覆ヘッダー工法
発砲被覆された合成樹脂管(給水・給湯管)をヘッダーの分岐地点から個々の機器にそれぞれ配管して接続する工法です。
さや管ヘッダー工法のさや管と給水・給湯管を一緒に配管するイメージです。
ただし、給水・給湯管を交換するときは発砲被覆された合成樹脂管ごとの交換となります。
(※1)「更新可能被膜さや管」などもあります。価格は少し高めなのですが、給水・給湯管を通管する工程が省けるため工期短縮となります。
最近の集合住宅などでの採用が増えてきています。
3.樹脂管先分岐工法
給水・給湯管を必要箇所に応じてエルボ、チーズ等で分岐する工法です。給水・給湯管を樹脂管で行う在来工法です。
ヘッダーでスタート地点での分岐はしないので、配管の本数は少なくなり、すっきりとします。
ヘッダーを用いる工法でも、個々の水まわり設備の同時使用を考えなければ、先分岐工法を混在させるのもありだと思います。
それぞれのメリットとデメリット
それでは、それぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。
さや管ヘッダー工法
メリット
・配管作業の点検が簡単
・配管の更新が簡単にできる
・さや管により給水・給湯管が痛まない
・複数同時使用による水量変化が少ない
・結露の発生をおさえる
・漏水のトラブルの低減
デメリット
・配管の本数が増えるので材料費が増える
・さや管の配管の施工にはなれが必要
・設計段階でしっかりと配管計画が必要
配管の更新(メンテナンス性)を考えるとこの工法が一番かと思います。接続箇所がヘッダー部分と個々の機器だけなので漏水のトラブルは大幅に低減されます。
被覆ヘッダー工法
メリット
・配管作業が簡単なので工期が短縮できる
・保護被覆により給水・給湯管が痛まない
・複数同時使用による水量変化が少ない
・結露の発生をおさえる
・漏水のトラブルの低減
デメリット
・配管の更新時には保護被膜された合成樹脂管ごと交換(※1)
・配管の本数が増えるので材料費が増える
・設計段階でしっかりと配管計画が必要
複数同時使用による水量変化が少ないことや工期の短縮によりコストを抑えられるなどのメリットがあります。
(※1)「更新可能被膜さや管」なども使用例が多くなってきているので材料の価格は安くなっていくと思います。
樹脂管先分岐工法
メリット
・配管作業が簡単で工期が短くてすむ
・樹脂管により給水・給湯管が痛まない
・結露の発生をおさえる
・配管が少なくすみコストが安い
デメリット
・配管の更新時は樹脂管ごと交換
・複数同時使用による水量変化がある
・接続箇所からの漏水の恐れがある
作業が簡単で工期も短く、材料費も一番安いかと思います。メンテナンス性を考えるとさや管ヘッダー方式が一番ですが、配管が少ないので修繕などで配管する際の工事費は安くなると思います。
まとめ
架橋ポリエチレン管ですが、使用条件によっては異なりますが、一般的な給水・給湯用に用いた場合には、耐用年数は30年以上あるとされています。
ローコスト住宅の耐用年数が木造で30年程度なので、交換を考えなくてもいいかと思います。
しかしながら、マンションやアパート、集合住宅などで鉄筋コンクリートの耐用年数は50年から長くて90年ほどなので30年ごとの交換の必要性は出てきます。
複数同時使用による水量変化について
戸建住宅の場合の理想はヘッダーで食器洗浄機や給湯のあるキッチンと、シャワーなどの浴槽とその他の3系統ぐらいに分けて、その他の系統は先分岐工法で接続するハイブリッドでいいと思います。
自分の場合は過剰な配管によって建物の構造体が穴だらけになってしまうのは避けたいし、電気配管も排水のための配管もあるので家中が配管だらけになってしまうのは避けたいと考えています。
以上、簡単ではありますが戸建住宅の給水・給湯の工法を決めるときの参考になれば幸いです。
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