新築時からリノベーションを想定した方がいい?長く暮らせる注文住宅の秘訣
一般に木造住宅の寿命は30年といわれていますが、
しっかりとメンテナンスを行い家族構成やライフスタイルの変化に合わせたリノベーションを行えば、50年、70年、100年と快適に暮らすことは可能です。
長く快適に暮らすためには、注文住宅を長期的な視点で考えることが重要です。
長期的な視点ってどういうことに注意すればいいの?
例えば、耐久性のある外壁や屋根素材を用いたり、間取りを変更しやすい木軸構造にしたり…
リノベーションが必要になった場合に大規模な工事にならないように新築時から将来のことを考えておくことが必要です。
私は17年間(2023年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
古い家屋をリノベーションしたときに、ここを新築時にもう少し考えてくれたらよかったのにと思うことが数多くあります。
今回は新築時からリノベーションを想定して長く暮らせる注文住宅の秘訣をご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・長く暮らせる注文住宅の秘訣
・新築時に考慮すべき点
上記のことがわかります。
新築時からリノベーションを想定し、長く快適に過ごすための注文住宅を建てる際には、慎重な計画と柔軟性が不可欠です。
将来の変更やリノベーションに対応するために、新築時の設計段階から着実な準備を行いましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を17年間(2023年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
長く暮らせる注文住宅の秘訣
長期的な快適さを追求するために、新築時の設計段階でリノベーションを想定することが不可欠です。
長く暮らせる注文住宅の秘訣は以下になります。
長く暮らせる注文住宅の秘訣
・筋交や構造材の配置
・抜けない柱と梁の掛け方
・水まわりの位置と配管
・開口部の位置
・階段の位置
筋交や構造材の配置
長く暮らせる注文住宅の秘訣のひとつ目は、筋交や構造材の配置に注意することです。
リノベーション時に筋交や構造材の配置を変更すると建物の耐震性や強度が弱くなるケースがあるからです。
具体的には、壁量計算や偏心率などを検討が必要になり、その計算結果によって耐震補強が必要になります。
壁量計算や偏心率ってどうやって計算するの?
筋交の入っている壁のXY方向の長さや建物のプランの重心、剛心などを求めて計算します。
設計事務所や構造設計事務所などに依頼すれば簡単に検討してくれます。
私の経験からですが、筋交や構造材の配置はなるべく建物の外周部に設置した方が変更は少なく済みます。
また、建築物の耐震性を高めるためには、適切な壁量や耐震補強が必要です。
特に昭和56年(1978年)以前の建物をリノベーションする場合は特に注意が必要です。
昭和56年以前の建物は新耐震基準で作られていない場合が多いので、壁量計算をすると足りないなんてことよくあります。
いくら綺麗にリノベーションできても地震で壊れてしまっては無駄になってしまいます。
しっかりと壁量計算をして適切な耐震補強をしましょう。
抜けない柱と梁の掛け方
長く暮らせる注文住宅の秘訣は、抜けない柱と梁の掛け方に注意することです。
リノベーションなどで間取りの変更をするときに柱が邪魔になるなんてことよくあります。
しかしながら、梁の掛け方によって抜けない柱になるケースが多いです。
抜けない柱を抜くにはどうすればいいの?
床組や小屋組などの構造を変更する必要があります。
具体的には、壊れないように構造材をバラして、新たに太い梁に取り替えたり、鉄骨で補強したりします。
構造材の変更は主要構造部の変更になり、大掛かりな工事となります。
また、確認申請が必要になったり時間と手間がかかります。
将来的に変更するときに邪魔になる柱を取れるように、梁の掛け方を工夫するなど木軸構造を考える必要があります。
そこまで注意しても、リノベーションでは梁の掛け方によって抜けない柱が出てくることを理解しておきましょう。
水まわりの位置と配管
長く暮らせる注文住宅の秘訣は、水まわりの位置と配管に注意することです。
メンテナンスが必要になった場合に点検口などを設けることで簡単に修繕ができたりします。
また、水まわりの位置と配管の変更は、壁や床、天井を壊さなければならない工事となるため大掛かりな工事となります。
水まわりの変更はしないほうがいいの?
できれば、水まわりの大きな位置変更は避けたほうがいいと思います。
屋外の排水管までの勾配が取れなかったり、土を掘り下げて配管工事が必要だったり、
壁や床、天井を壊した後の補修工事が発生する場合があるからです。
水まわりの変更はプロにしっかりと可能かどうかの判断をしてもらいましょう。
水まわりの変更は工事費用が高額になりがちなので、しっかりと新築時に変更が出ないように考えておきましょう。
開口部の位置
長く暮らせる注文住宅の秘訣は、開口部の位置に注意することです。
開口部を変更すると外壁の補修が必要になり、足場の設置費用などで工事費用が高額になるからです。
また、開口部の変更は部屋に必要な採光や換気、排煙にも影響するので無くしたりすると基準法上の問題が発生する場合があります。
開口部の変更ってどんなことがあるの?
サッシの位置やサイズを変更したり、カバー工法で気密断熱性能を高めたりする工事があります。
いずれにせよ開口部の位置やサイズを変更すると外壁を補修する工事が発生します。
また、シーリングのひび割れなどがある場合も補修工事が必要になります。
外壁補修が大掛かりになると足場を建てて工事をすることになります。
足場は規模や日数によって費用が変わってくるので工事費用が高くなる場合が多いです。
リノベーションをする場合は大掛かりな外壁補修は避けたほうが費用を抑えることができます。
階段の位置
長く暮らせる注文住宅の秘訣は、階段の位置に注意することです。
階段位置の変更は確認申請を必要とする大規模な工事になります。
また、2階の床組を変えなければならなくなる場合が多いので手間と費用がかかります。
階段の位置変更は難しいの?
2階の床組の変更はこれらを解体して組み直さなければならなりません。
特に階段付近の床組は複雑になっているので解体してみなければわからない工事になります。
そのため、リノベーションはなるべく階段位置を変更しないように間取りを考えるのが定石になっています。
新築時に考慮すべき点
新築時に考慮すべきポイントをまとめると以下になります。
新築時に考慮すべき点
・工事範囲の明確化
・ライフスタイルの変化に備える
・長期的な視点での素材選び
工事範囲の明確化
将来のリノベーションを想定して新築工事を着手する際は、まずは工事範囲を明確に設定しましょう。
具体的に、どの部分を変更しやすくするかを事前に計画することが極めて重要です。
新築時の段階で慎重に検討し、将来的な変更やアップグレードに備えることが、長く暮らせる注文住宅の秘訣となります。
家族構成が変化するとそれに合わせてリノベーションが必要になる場合が出てきます。
例えば、使われなくなった2階の子ども部屋を納戸や趣味部屋にしたり、1階の和室を夫婦の寝室にしたり、バリアフリーにするなど、
長く暮らす注文住宅にするにはリノベーションが必要となります。
新築時から30年後の将来を見据えて、今はこの段階まで工事しておこうなど工事範囲を明確にしておきましょう。
ライフスタイルの変化に備える
将来を見据えた長く暮らせる注文住宅にするには、ライフスタイルの変化に備える必要があります。
家族構成や生活スタイルは時間とともに変わるので建物の間取りを柔軟に計画することが肝要です。
新しい家族が増えたり、新しい趣味ができたり、仕事やライフスタイルの変化など、さまざまな要因が影響を及ぼします。
そのため、将来の変化に対応できるよう、住まいの設計において適切な柔軟性を考慮することが大切です。
柔軟な間取りは、快適な生活を維持し、家族のニーズに合った暮らしやすい注文住宅には必須です。
住宅を建てる際には、将来の家族構成やニーズに配慮し、変化に柔軟に対応できるような計画を練ることが重要です。
長期的な視点での素材選び
将来を見据えた長く暮らせる注文住宅にするには、長期的な視点での素材選びが重要です。
建物の仕上げ素材の耐久性が高ければ、将来のメンテナンスコストや補修回数などが少なくなるからです。
建材や仕上げ材を選ぶ際には、その耐久性やメンテナンスのしやすさを重要視しましょう。
耐久性があれば、建物は長い期間にわたって安定した性能を維持し、修理や交換の必要が少なくなります。
また、メンテナンスが容易であれば、日常的な手入れが簡単に行え、建物全体の品質を保つのに役立ちます。
将来のリノベーションに備えるためにも、建材や仕上げ材の選択は慎重に行うべきです。
長期的な視点を持ちながら、耐久性とメンテナンスの利便性を考え、理想的な住まいを実現しましょう。
まとめ
今回は長く暮らせる注文住宅の秘訣を知りたい人や新築時に考慮すべき点を知りたい人に対して、
新築時からリノベーションを想定して長く暮らせる注文住宅の秘訣をご紹介してきました。
まとめると以下になります。
長く暮らせる注文住宅の秘訣
・筋交や構造材の配置
・抜けない柱と梁の掛け方
・水まわりの位置と配管
・開口部の位置
・階段の位置
新築時に考慮すべき点
・工事範囲の明確化
・ライフスタイルの変化に備える
・長期的な視点での素材選び
新築時からリノベーションを想定し、長く快適に過ごすための注文住宅を建てる際には、慎重な計画と柔軟性が不可欠です。
将来の変更やリノベーションに対応するために、新築時の設計段階から着実な準備を行いましょう。
この記事が少しでも注文住宅で長く暮らそうと考えている人のお役に立てれば幸いです。
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アーキトリック一級建築士事務所