【場をつくるための解体】沼津新仲見世商店街アーケード解体工事の概要説明

アーケードを作ったのは良いけど、メンテナンスが疎かになり老朽化で鉄骨が錆びてしまい、

今にも倒壊する恐れのあるアーケードは全国に数多くあります。

看板や屋根材、照明器具の落下に伴う歩行者への被害で、損害請求され商店街が損失を被る前に解体工事をする必要があります。

アーケードの解体工事ってどうやって進めればいいの?

まずはアーケードを所有する商店街と道路管理者、まちづくり政策課、解体業者などと協力して体制を作り

アーケードを使用している配線業者との協議を進めていくことが必要です。

また、周辺住民や事業者への調整や周知も必要になります。

私は17年間(2023年現在)設計事務所を運営してきましたが、

アーケード解体工事に関わるようになって各商店街ごとにそれぞれの問題を抱えているなぁと痛感しています。

今回は沼津新仲見世商店街アーケード解体工事の概要説明を中心にご紹介します。

この記事を読むと以下のことがわかります。

この記事でわかること

・沼津新仲見世商店街の解体工事の流れ

・解体工事で苦労したこと

上記のことがわかります。

建築家を目指すものとして、広場をつくることは誰しもが憧れる仕事だと思います。

沼津新仲見世商店街はアーケードを解体した後の広場としての使い方の成功例だと思います。

今回は解体工事の話がメインの話ですが、

心地よい空間や景観をつくるためには何が必要でないかを、しっかりとイメージして解体工事を進めることが必要です。

これから老朽化に伴うアーケード解体工事の必要性は増えていくと思います。

解体工事にあたっては、しっかりと市や県と協力した体制づくりや補助金などの対策が不可欠になります。

また、クラウドファンディングや募金などをうまく利用するなど、協力者を増やしていくことが必要になります。

解体後のイメージを関係者としっかりと共通認識でもち、困難なことでも諦めることなく協議を進めていきましょう。

【自己紹介】

Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所

設計事務所を17年間(2023年現在)運営している現役の一級建築士です。

店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。

現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。

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沼津新仲見世商店街の解体工事の流れ

沼津新仲見世商店街の解体工事の流れは以下になります。

解体工事の流れ

①屋根材と野縁の撤去

②電柱の仮設工事と東電設備の移設

③工区に分けて解体

④交差点部分の解体

⑤本設電柱の設置工事と東電設備の移設

⑥仮設電柱の撤去工事

⑦街路灯の設置

⑧歩道の工事

このように東電の仮設・本設電柱と東電設備の移設工事があるのは、

解体工事期間中の電気の供給を切らずに工事をするためです。

①屋根材と野縁の撤去

電柱を設置するにあたり屋根材や野縁が邪魔になるので、最初に全体の屋根材と野縁の撤去を行いました。

屋根材はトタン屋根やアクリル板で、野縁とはそれを取り付ける鉄骨の細い材のことです。

鉄骨造のみを表したのは仮設・本設の電柱の設置工事がしやすくなることと、

その後に控える工区ごとの解体を進めやすくるためです。

一気に屋根材の解体を進めれば、職人さんたちの人件費を抑えることができるという理由もあります。

②電柱の仮設工事と東電設備の移設

既存の鉄骨柱は東電の電柱としての基準を満たしていないことから、そのまま使うことはできないので、

東電設備を移設するために仮設・本設の電柱を設置する必要がありました。

鉄骨柱は下から3.5mほどの高さまで残して上部をカットし、街路灯の柱として使用しています。

電柱を設置する位置はアーケードと建物との間に1mに満たない隙間に設置しました。

電柱を設置するにあたっては、アーケード本体の鉄骨造の梁を部分的にカットする必要があり、

鉄骨造が倒壊しないように現場にて判断しながらクレーンで吊るスペースを確保しました↓

③工区に分けて解体

工区に分けてアーケード本体の鉄骨造の解体を進めました。

鉄骨がかなり腐食していて錆が落ちて歩道を汚してしまうので掃除が大変でしたが、

雨ざらしになった滑りやすいタイルが、滑りにくくなるという効果がありました。

④交差点部分の解体

交差点部分の解体は道路の上ということもあり、時間内に解体を終えなければなりませんでした。

そのため、短時間で一気に解体する工法を採用しています。

具体的には、交差点部分はクレーンで交差点部分の鉄骨造を吊った状態で、鉄骨柱を徐々にカットして、屋根構造を下ろしていく工法です。

大掛かりな重機と大人数での解体になったので、大きな金額の工事費用が溶けていきました。

⑤本設電柱の設置工事と東電設備の移設

本設電柱の設置工事と東電設備の移設は、アーケードの鉄骨造が無い状態での工事となるため、特に問題もなく工事ができました。

⑥仮設電柱の撤去工事

仮設電柱の撤去も特に問題なく工事ができました。

⑦街路灯の設置

街路灯はLED電球のものを新設しました。

LED電球の色は電球色に近いものを採用し、温かみのある色合いのものにしてあります。

LEDは志向性が強いので、歩道の中央付近までかなり明るくなりました。

⑧歩道の工事

歩道の工事は最初、入札が不調だったためになかなか業者が決まらず、工事期間が大幅にずれ込んでしまいました。

側溝にはスリットタイプのものを両サイドに設置してあります。

商店街側は解体前のタイルのイメージを思わせるような配色と、

メインの部分はグレーを基調とたシンプルなデザインの歩道になっています。

解体工事で苦労したこと

解体工事で苦労した代表的なことは次の5つになります。

解体工事で苦労したこと

(1)雨水の処理の対策

(2)工事中の電気の供給を止めないこと

(3)東電の対応の遅さ

(4)東電の配線工事の費用負担

(5)仮設と本設の電柱の位置決め

(1)雨水の処理の対策

雨水の処理の対策としては以下のようなことをしました。

雨水の処理の対策

・排水口に雨水が流れるように竪樋を歩道面でカット

・店舗入り口部分のタイルを剥がして雨水を浸透させる

・台風時にはブルーシートや土嚢を設置する

工事の進行上、先行してアーケードの解体工事を行いました。

本来なら道路工事を先に行い側溝を設けられれば、雨水の問題はなかったのですが、

歩道の整備工事が難航してしまい工事がなかなか進められなかったです。

全体の屋根材を先行して撤去してしまったので、排水口への雨水の処理が追いつかずに、

雨が強い日は商店街にご迷惑をおかけしてしまいました。

(2)工事中の電気の供給を止めないこと

工事中の電気の供給を止めないことへの配慮としては以下のようなことをしました。

工事中の電気の供給を止めないことへの配慮

・仮設と本設の電柱設置工事と東電設備の移設工事

・アーケードと建物との隙間に電柱を建てる

本設の電柱の位置については、なるべく本数を少なくする方向で設計を行なってもらいました。

電柱が多くなってしまうと、街並みとしての景観を害すると考えたからです。

また、電柱の位置はアーケードと建物との隙間に設置するしかなかったです。

クレーンで電柱を吊り上げて組み立てる時にスペースが必要となります。

そのスペース確保のために鉄骨の梁を一部解体しました。

あまり大々的に梁をとってしまうと鉄骨造が倒壊する恐れがあったため、

現場での判断にて撤去する梁を指示していきました。

(3)東電の対応の遅さ

東電の対応の遅さには苦労させられました。

具体的には以下のようなことで苦労しました。

東電の対応の遅さの苦労

・担当者が変わって話が伝わらない

・本設計の期間が長い

・仮設、本設の試験掘削の期間が長い

工事が長引いてしまった原因は、東電の対応の遅さにもあります。

慎重に設計を行なってくれるのはいいのですが、途中で担当者が変わって連絡がつかなくなったり、

メールでの質疑の返答が返って来なかったりと無駄に時間がかかってしまいました。

また、本設計の期間が長すぎたり、仮設と本設の試験掘削で埋設物が出てきてしまったり、

県土木に許可を取りなおすのに手間取ってしまったりと色々と大変でした。

(4)東電の配線工事の費用負担

沼津新仲見世商店街の場合は、東電の配線工事の費用負担の問題はなかったです。

運が良かった点や協議での共通認識は以下になります。

運が良かった点や協議での共通認識

・当時の契約書や議事録が残っていなかった

・今までの東電設備の設置費用の請求を匂わせた

・東電の場合は道路管理者が市や県の場合は負担の対象外になる

※東電の場合は2024年度から防護管設置の費用は負担の対象になる

沼津新仲見世のアーケード解体工事は、なるべく商店街側に金額の負担がかからないように、注意して協議をしました。

東電側は市道ということもあり配線工事に関しては、負担金がかからないという形でうまく話を進めることができました。

現在、別の物件で沼津駅前名店街のアーケード解体工事の話を進めているのですが、

東電では2024年4月から配線の移設工事は解体する側の負担になるそうです。

これからはアーケードを解体するときに電気配線の移設工事の費用負担が大きな問題となります。

(5)仮設と本設の電柱の位置決め

仮設と本設の電柱の位置を決めるのにもとても苦労しました。

仮設と本設の電柱の位置決めの苦労

・県道の地下に建物があった

・店の前の電柱設置を断られた

・地下の埋設物(水道管、ガス管など)が邪魔になった

・提案された本設の電柱の本数が多かった

・提案された本設の電柱の位置が悪かった

仮設と本設の電柱の位置を試験掘削した時に県道の地下に建物があったことや、

水道管やガス管が邪魔になってしまいうまく位置を決めることができませんでした。

何度か試験掘削をやり直すたびに県土木に許可を取り直すなど手間がかなりかかりました。

また、提案された本設の電柱の本数が多かったことや、

位置が悪かったことでの設計のやり直しなどもあり、

東電との打ち合わせでかなりの時間がとられてしまいました。

場をつくるための成功と失敗

解体後に青空や夜空が綺麗に見えればいいなぁ…

そんな解体後のイメージをしながら東電との協議にあたりました。

電柱や電線が乱雑に張り巡らされて、景観が悪くなってしまうことを何とか避けたいという思いが強くありました。

心地よい広場をつくるために何を除去しなければならないのかを、

新仲見世商店街のアーケード解体プロジェクト関係者の共通認識としました。

場をつくるために成功した点と失敗した点については以下になります。

場をつくるために成功した点

場をつくるために成功した点は以下になります。

場をつくるために成功した点

・本設の電線を商店街の上部で横切らないようできた

・本設の電柱の本数を最小限にできた

市役所の道路管理課とまちづくり政策課の協力もあり、

商店街の歩道の上部に電線を横断させないようにできました。

また、電柱の本数を最小限にすることで景観にも配慮できました。

商店街前の広場として晴れた日は青空が広がる環境を実現することができました。

場をつくるために失敗した点

場をつくるために失敗した点は以下になります。

場をつくるために失敗した点

・工事の期間が予定よりもかかってしまった

・街路灯用の配線が道路を横断できなかったので個別に分電盤を設置した

私が関わった工事だけでも、歩道工事まで含めると約2年半かかりました。

仮設と本設の電柱の設置工事と東電設備の移設工事に時間がかかったのと、

歩道工事の入札が不調だったことなどが大きな要因だと思います。

また、当初は街路灯の回路を1ヶ所にまとめる案で考えていたのですが、

配線が道路を横断できなかったこともあり、電柱に個別に分電盤を設置することになってしまいました。

まとめ

今回は新仲見世商店街アーケード解体工事の概要を知りたい人や場をつくるためにどのように解体を進めればいいのか知りたい人に対して、

沼津新仲見世商店街アーケード解体工事の概要説明をご紹介してきました。

まとめると以下になります。

解体工事の流れ

①屋根材と野縁の撤去

②電柱の仮設工事と東電設備の移設

③工区に分けて解体

④交差点部分の解体

⑤本設電柱の設置工事と東電設備の移設

⑥仮設電柱の撤去工事

⑦街路灯の設置

⑧歩道の工事

解体工事で苦労したこと

(1)雨水の処理の対策

(2)工事中の電気の供給を止めないこと

(3)東電の対応の遅さ

(4)東電の配線工事の費用負担

(5)仮設と本設の電柱の位置決め

建築家を目指すものとして、広場をつくることは誰しもが憧れる仕事だと思います。

沼津新仲見世商店街はアーケードを解体した後の広場としての使い方の成功例だと思います。

今回は解体工事の話がメインの話でしたが、

心地よい空間や景観をつくるためには何が必要でないかを、しっかりとイメージして解体工事を進めることが必要です。

これから老朽化に伴うアーケード解体工事の必要性は増えていくと思います。

解体工事にあたっては、しっかりと市や県と協力した体制づくりや補助金などの対策が不可欠になります。

また、クラウドファンディングや募金などをうまく利用するなど、協力者を増やしていくことが必要になります。

解体後のイメージを関係者としっかりと共通認識でもち、困難なことでも諦めることなく協議を進めていきましょう。

簡単ではありますが、これで沼津新仲見世商店街のアーケード解体工事の概要説明を終わります。

この記事が少しでもアーケードの解体に苦労している人のお役に立てれば幸いです。

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