設計事務所を開業するにはどうすればいいの?個人事業主の事務所登録について

一級建築士をとったのなら、いちどは独立して設計事務所を開業した方がいいと思います。

設計事務所を開業すると今までの仕事に対する姿勢が変わると思います。

個人事業主(フリーランス)で建築設計の仕事に関わって行きたいのであれば、建築士事務所登録をして設計事務所を開業した方が仕事の範囲が広がります。

設計事務所を開業するにはどうすればいいの?

個人事業主で建築士事務所登録をするのであれば、

後述する書類を揃えて近くの建築士事務所協会に行って手続きをすれば、2週間ぐらいで事務所登録することができます。

今回は設計事務所を開業したいけどどうしたらいいのかわからない人に、建築士事務所登録で揃える書類と事務所登録のメリット・デメリットについて紹介します。

個人事業主の設計事務所は簡単に始められるので建築士のフリーランスで働くより設計事務所を開業することをおすすめします。

この記事が個人事業主(フリーランス)の建築士が設計事務所を開業して活躍する手助けになれば幸いです。

【自己紹介】

Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所

設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。

店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。

現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。

設計事務所のブログを始めて2年目で月間25000PVを達成!

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個人事業主の建築士事務所登録の流れ

個人事業主(フリーランス)の建築士が建築士事務所登録をするには以下の提出書類と添付資料を用意する必要があります。

提出書類は静岡県建築士事務所協会のホームページからEXCELデータをダウンロードできます。

ダウンロードはこちらから→静岡県建築士事務所協会の建築士事務所登録HP

※登録手数料は地域の建築士事務所協会によって変わります。

登録申請に必要なもの

建築士事務所登録に必要なものは以下になります。

提出書類
建築士事務所登録申請書
事務所案内図
業務概要書(新規登録の場合は未記入)
所属建築士名簿
登録申請者の略歴書
管理建築士の略歴書
誓約書(欠格要件などに該当していないこと)
添付資料
開設者の住民票
事務所の賃貸借契約書の写し(住民票と同じ場合は不要)
管理建築士の住民票
建築士免許証(申請時に原本提示を求められます)
管理建築士の前職場の退職証明書(退職後6ヶ月以内の場合)
管理建築士の専任証明(社名入りの健康保険証写しなど)
管理建築士講習修了証の写し
定期講習修了証の写し

提出書類は記載例を見ながら簡単に作ることができますが、添付書類は自分で用意する必要があります。

添付書類の中で特にわかりにくいものは以下で詳しく説明します。

⑨事務所の賃貸借契約書の写し

開設者の住民票と同じ場合は不要ですが、賃貸借契約の場合には賃貸借契約書の写し(約款まで含む)を提出する必要があります。

シェアオフィスの場合は、利用期間内は固定区画を維持でき、建築士法上の標識(看板)の掲示及び帳簿の保管等が実施できる状態であれば登録できます。

しかしながら、郵便物だけを受け取るようなバーチャルオフィスの形態では登録ができません。

⑫前職場の退職証明

退職したことを証明する退職証明書が必要になります。

前職場に退職証明書が欲しい旨を伝えれば書いてくれます。

退職証明書以外にも、

・雇用保険の資格喪失届の写し
・離職票の写し
・健康保険資格喪失届の写し
・厚生年金の加入期間証明


があれば退職したことを証明することができます。

⑬管理建築士の専任証明

登録申請者が管理建築士を兼ねる場合は提出不要です。

管理建築士の専任(常勤)を証明するものとして、次の資料のいずれかを提出する必要があります。

(ア)健康保険被保険者証(事業者名と管理建築士の氏名が記載されているもの)の写し

(イ)雇用保険被保険者証(事業者名と管理建築士の氏名が記載されているもの)の写し

(ウ)住民税の特別徴収税額通知書(事業者あてのもの)の写し

(エ)その他の常勤が確認できるもの

建築士事務所の管理建築士でありながら、宅地建物取引業者の専任取引主任者として従事し、管理建築士として建築士事務所に専任していなかった。

などの場合は専任義務違反となり懲戒処分の対象となります。

⑭管理建築士講習修了証の写し

管理建築士講習を修了後に発行される修了証の写しを添付します。

管理建築士講習の修了証は、各団体のHPには受講後1ヶ月程度を目安に発行されると記載されていますので、余裕を持って受講しておきましょう。

建築士事務所登録とは?

建築士として独立開業するとは、都道府県に建築士事務所として登録することです(以下事務所登録)。

まず前提として、報酬をもらい建築士として設計等の業務を行う場合は建築士事務所の登録を受ける必要があります。

設計等の業務とは

「建築物の設計、工事監理、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査若しくは鑑定又は建築物の建築に関する法令若しくは条例の規定に基づく手続の代理」

建築士事務所の登録を受けずに報酬を得て設計等の業務は行えません。(建築士法第23条の10第1項)

この法律に違反した建築士には罰則(業務停止等の懲戒処分や1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)があります。

しかしながら、事務所登録をしてしまえば設計等の業務を行えるので、ある意味では独占業務ともいえます。

建築士事務所登録のメリット

建築士事務所登録する代表的なメリットは以下になります。

建築士事務所登録のメリット

・建築確認申請等の業務ができる

・特殊建築物の定期報告ができる

・プロポーザルコンペに参加できる

・フリーランスより仕事を請けやすい

・節税対策ができる

建築確認申請等の業務が行える

建築士事務所登録のメリットは、建築確認申請等の法的な手続きなどが行えることです。

建築確認申請の代行サービスもできるようになります。

確認申請手続きは事務作業的なところがあったり、遠隔地で直接申請にいけない場合など代行してもらうというニーズはあります。

特殊建築物の定期報告ができる

建築士事務所登録のメリットは、特殊建築物の定期報告ができることです。

特殊建築物とは

「学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。),体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店,市場,ダンスホール,遊技場,公衆浴場,旅館,共同住宅,寄宿舎,下宿,工場, 倉庫,自動車車庫,危険物の貯蔵場,と畜場,火葬場,汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。」

などのことで、これに該当する建築物は2年ごとの定期報告(建築設備は1年ごと)が必要となります。

この定期報告を行えるのは1級建築士、2級建築士、大臣認定した「特定建築物調査員」「建築設備検査員」「昇降機等検査員」「防火設備検査員」です。

※建築士の場合は事務所登録してある建築士事務所に所属していることが必要となります。

マンションやパチンコ店など定期報告を必要とする建物に営業してみると定期報告してくれる人を探していたりします。

また、廃業する建築士事務所などから定期報告の物件を引き継いだりすることもあります。

プロポーザルコンペに参加できる

建築士事務所登録のメリットは、市町村が主催するプロポーザルコンペに参加できることです。

実施設計にかかわるコンペなので事務所登録していることが必要条件になります。

応募資格には実績が必要になりますが、会社時代の実績なども認められる場合もあるので腕試しに参加してみるのもいいと思います。

フリーランスより仕事が請けやすい

建築士事務所登録のメリットは、フリーランスより仕事が請けやすいことです。

知り合いからの仕事や実績があれば問題なのですが、初対面の施主との信頼関係を築くときには事務所登録してあると有利だと思います。

事務所登録していれば建築士事務所としてできる仕事の制限がなくなるので、実施設計まで一括で請負うことが可能となります。

節税対策ができる

建築士事務所登録のメリットは、節税対策ができることです。

独立すると個人事業主になるので確定申告することになります。

交通費や接待交際費、模型材料や書籍などは建築士事務所の経費として認められるので節税となります。

個人事業主として所得が1,000万円を超えるようであれば法人化を考えたほうがいいかもしれません。

給与所得控による節税や消費税などが2年間免除されたり、社会的信頼度も上がります。

建築士事務所登録のデメリット

建築士事務所登録する代表的なデメリットは以下になります

建築士事務所登録のデメリット

・管理建築士としての制約

・毎年の設計等業務報告書の提出

・5年毎の事務所更新手続き

・3年毎の建築士の定期講習

・管理建築士の講習

管理建築士としての制約

建築士事務所登録のデメリットは、管理建築士としての制約を受けることです。

管理建築士とは建築士事務所の業務を管理する建築士で、専任でなければなりません

専任の建築士となるわけなので、ほかの建築士事務所で建築資格を使った仕事などは行えなくなります

下請けなどでほかの建築士事務所の住宅などを監理する場合などもありますが、工事監理者として現場にかかわる場合には注意が必要です。

毎年の設計等業務報告書の提出

建築士事務所登録のデメリットは、毎年の設計等業務報告書の提出しなければならないことです。

毎年、前年度(1~12月まで)から3か月以内に設計等業務報告書を県の土木事務所に提出しなければなりません。

決められた書式にその年度の業務実績を記入し提出するだけです。

5年毎の事務所更新手続き

建築士事務所登録のデメリットは、5年毎の事務所更新手続きが必要になることです。

5年ごとに事務所登録は更新となります。

所属している(又は近くの)建築士事務所協会へと書類を提出することになります。

登録手数が17,000円かかります。

※登録手数料は地域の建築士事務所協会によって変わります。

3年毎の建築士の定期講習

建築士事務所登録のデメリットは、3年毎の建築士の定期講習を受けなければならないことです。

建築士事務所に所属する建築士は3年ごとに定期講習を受けなければなりません

定期講習では設計・工事監理の業務に必要な知識や、新しく改正された法規などの講義があります。

(公益財団法人)建築技術教育普及センターが主催で各地域の建築士会や事務所協会などで実施しています。

講習料金は12,980円となります。

※講習料金は主催する組織によって変わります。

管理建築士の講習

建築士事務所登録のデメリットは、管理建築士となるために必要な講習を受けなければならないことです。

管理建築士となるには、建築士事務所に所属する建築士として3年以上の設計その他の業務に従事することが必要です。

国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う管理建築士講習の課程を修了することが必要となります。

管理建築士の講習は1回だけ受ければいいです。毎年実施されています。総合資格学院などでも開催しています。

詳しくは(公益財団法人)建築技術教育普及センターのホームページをご参照ください。

受講手数料は16,000円です。

※受講手数料は主催する組織によって変わります。

その他で必要になる業務

その他で必要になる業務としては以下になります。

その他で必要になる業務

・帳簿の記録

・閲覧のための書類の作成

・設計監理業務委託契約書の保管

・設計図書の保存

・標識(看板)を提示する

帳簿と閲覧書類について

帳簿(業務台帳)の記録と閲覧のための書類の作成が必要になります。

帳簿は契約の相手や業務内容、報酬金額などを記載しておくもので、閲覧のための書類は毎年提出する業務報告書とほぼ同じ内容のものになります。

帳簿(業務台帳)と閲覧書類のエクセルデータはこちらからダンロードできます↓
千葉県の建築士事務所の管理のHP

標識(看板)について

建築士事務所登録票

登録通知が届いたら記載されている登録番号を表記した「建築士事務所の標識」を作ります。

開設者は公衆の見易い場所に、次の標識を掲げなければならないという決まりがあります。

標識の記入例についてはこちらをご参照ください→標識の掲示について

法人の場合には開設者の欄に会社名と開設者名を記入、個人の場合は開設者名だけを記入するところが違います。

アマゾンの看板屋さんでも作れるのですが15,000円ほどかかってしまいますので、

私はIllustratorでA3の大きさ(縦25cm以上、横40cm以上)でデータを作成し、

コピー用紙に印刷しA3サイズのポスターフレーム(額縁)に入れて打合せスペースに掲げてあります。

※管理建築士の建築士免許証もA4サイズにコピーしてポスターフレーム(額縁)に入れて掲げてあります。

建築士事務所の立ち入り検査の時に特に指摘はなかったのでコピー+ポスターフレーム(額縁)で十分だと思います。

まとめ

今回は設計事務所を開業したいけどどうしたらいいのかわからない人に、建築士事務所登録で揃える書類と事務所登録のメリット・デメリットについて紹介してきました。

まとめると以下になります。

■提出書類のEXCELデータと記載例はこちらから
静岡県建築士事務所協会の建築士事務所登録HP

添付資料で注意が必要なもの

⑨事務所の賃貸借契約書の写し

⑫前職場の退職証明

⑬管理建築士の専任証明

⑭管理建築士講習修了証の写し

建築士事務所登録のメリット

・建築確認申請等の業務ができる

・特殊建築物の定期報告ができる

・プロポーザルコンペに参加できる

・フリーランスより仕事を請けやすい

・節税対策ができる

建築士事務所登録のデメリット

・管理建築士としての制約

・毎年の設計等業務報告書の提出

・5年毎の事務所更新手続き

・3年毎の建築士の定期講習

・管理建築士の講習

その他で必要になる業務

・帳簿の記録

・閲覧のための書類の作成

・設計監理業務委託契約書の保管

・設計図書の保存

・標識(看板)を提示する

個人事業主の設計事務所は簡単に始められるので建築士のフリーランスで働くより設計事務所を開業することをおすすめします。

この記事が個人事業主(フリーランス)の建築士が設計事務所を開業して活躍する手助けになれば幸いです

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