軒ゼロ住宅はメンテナンス費が高くつく?軒ゼロの注文住宅の注意点
軒ゼロ住宅はしっかりと対策しないと外壁や設備が傷みやすくなったり、雨漏りのリスクも高くなります。
また、何年か経ってメンテナンス費用がすごくかかる場合があります。
メンテナンス費用がかかるのになんで軒ゼロ住宅が流行っているの?
建築費用が抑えられることやモダンでスタイリッシュな外観になるのでデザインにこだわりのある人には好まれやすいからです。
私は18年間(2024年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
お客さんの注文住宅で軒ゼロ住宅をおすすめしたことは一度もありません。
しかしながら、私の事務所兼自宅は「軒ゼロ+片流れ屋根」の住宅なので長年暮らしてきてデメリットはよく理解しています。
今回は人気のある軒ゼロ住宅のメリット・デメリットや建てる際の注意点をご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・軒ゼロ住宅のメリット・デメリット
・軒ゼロ住宅のデメリットへの対策
上記のことがわかります。
長年暮らした実感として、木造で「軒ゼロ+片流れ屋根」はデメリットが多いので、お客さんにおすすめするのは避けたいというのが正直なところです。
軒ゼロ住宅は確かにモダンでスタイリッシュな外観になるので、デザインにこだわりのある人には好まれますが、
しっかりとデメリットへの対策をしているかどうかがとても重要になります。
施工会社に軒ゼロ住宅をすすめられた時は、デメリットに対してどんな対策を行なっているかを色々と質問してみましょう。
また施工実績や雨漏りが発生した場合の補償などについて、しっかりと答えられる会社を選んで、よい家づくりをしましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
設計事務所のブログを始めて2年目で月間25000PVを達成!
住宅に関する悩みを解決すべく、ブログやTwitterで情報発信しています。
「いいね!」や「フォロー」していただけるとうれしいです。ヨロシク(b・ω・d)デス♪
それからコメント欄はこれまで皆さんが経験してきたことを発信する場として使っていただければ幸いです。
役立つ情報をみんなで共有できるような書き込みは大歓迎です。
軒ゼロの注文住宅の注意点
まずは軒ゼロの注文住宅のメリット・デメリットと注意点を見ていきましょう。
軒ゼロ住宅とは
軒ゼロ住宅とは明確な定義というものはありませんが、
軒がまったくない場合はもちろんですが、下記のような場合も軒ゼロ住宅と分類されます。
・軒の出が25cmより短い
・ケラバが15cmより短い
軒やケラバを切妻屋根で見ると下記の図の部分になります↓
軒ゼロといえばキューブ型のような四角形を連想しますが、このような住宅も軒ゼロ住宅に分類されます↓
軒ゼロ住宅のメリット
軒ゼロ住宅のメリットとしては次のようなことがあげられます。
軒ゼロ住宅のメリット
・建築費用を抑えられる
・狭小住宅に向いている
・モダンでスタイリッシュ
建築費用を抑えられる
住宅は凹凸が多くなるほど、屋根や外壁の面積が大きくなるほど建築費用は高くなります。
そのような点でキューブ型のようなシンプルな形状であれば、建築費用が安くなります。
材料が少なくて無駄がなく、職人さんたちの手間がかからないので工期も比較的短期間で済みます。
狭小住宅に向いている
軒がない分、居住空間を最大限まで確保できます。
敷地いっぱいまで建築できることから、都心部の狭小地にも向いています。
安藤忠雄氏の住吉の長屋がまさにその典型になります↓
しかしながら、この建物の場合はRC造なので木造とは作りが根本的に違ってきます。
モダンでスタイリッシュ
外観にでっぱりがなくシンプルモダンな外観になります。
シンプルな外観にする手法としてはこちらの記事をご参照ください↓
私の事務所兼自宅は雨漏りの原因になるケラバがないパラペットを立上げた片流れ屋根の木造です。
外観デザインはシンプルな箱型住宅になるのでモダンな雰囲気となっています↓
※軒ゼロといっても実際は小屋裏換気のために軒が30cmほどあるので厳密には軒ゼロ住宅に分類されないかもですね。
軒ゼロ住宅で起こりがちな問題
軒には大きな役割があって、昔の人たちが快適に暮らすために知恵をしぼって考えたものなんです。
軒には雨から建物を守ったり、夏は強い日差しを遮ったり、冬は日差しを取り入れたりする機能があります。
また、雨の日に窓を開けても雨が吹き込まないこともあげられます。
電化製品がない時代に自然環境をうまく利用して暮らせる家に必要なものになります。
機械に頼らずに暮らす「パッシブデザイン」と言われる設計技術も注目されています。
軒ゼロ住宅は、このような役割を持つ「軒」がないわけですから、木造住宅の場合はさまざまなデメリットがあります。
軒ゼロ住宅のデメリット
軒ゼロ住宅のデメリットとしては次のようなことがあげられます。
軒ゼロ住宅のデメリット
・外壁や窓枠が傷みやすい
・雨漏りリスク
・屋外の設備の劣化
外壁や窓枠が傷みやすい
軒がないことで雨や直射日光が建物全体にあたります。
軒がある家でも当然あたりますが、重要なのは外壁と屋根の隙間や窓枠の部分です。
日本は他の国々と比較しても雨量が多く、年間降水量は世界平均の約2倍とされているほどです。
梅雨や台風の時期に集中していることもあって、長い年月、雨にあたり続けると、
コーキングなどの劣化が進み隙間から雨水が建物に侵入してしまいます。
窓枠のシーリング材も直射日光や雨で劣化して雨水が侵入しやすくなります。
対策としては以下のようなことがあげられます。
外壁や窓枠が傷みやすい対策
・外壁を劣化しにくいタイルにする
・劣化に強いシーリング材にする
・窓の上に庇をつける
といった方法が考えられます。
軒ゼロ住宅は外壁塗装やシーリングについて定期的なメンテナンスをおこなうことが必須条件となります。
雨漏りリスク
雨漏りが発生しやすい形状といわれる「片流れ屋根+軒ゼロ」のデザインが増えたからかもしれませんが、
日本住宅保証検査機構(JIO)の調査によると、屋根形状別の雨漏り発生数では片流れが全体の約75%をしめています。
そこに軒ゼロがプラスされるとさらに雨漏りのリスクが高まります。
雨漏りが最も多く発生する箇所は、軒と外壁との接合部分で、屋根の端の隙間から雨水が入って壁内に流れ込んでしまうと雨漏りが発生してしまいます。
軒の出が短くても軒天があれば、暴風雨でも雨水の侵入する可能性は低くなりますが、軒天がないことでリスクはかなり高まります。
軒ゼロ住宅では雨漏りを防ぐために雨を流すための「水切り板金」という部分がついています。
外壁の定期的な点検、メンテナンスに合わせて軒と外壁の接合部分もこまめに点検して、水切り板金の劣化には気をつけましょう。
屋外の設備の劣化
軒ゼロ住宅にはあたりまえですが、軒下がないのでエアコンの室外機や給湯器などが直射日光と雨にさらされて劣化がはやくなります。
もともと雨ざらしでも大丈夫なつくりではありますが、耐久性が低下する可能性は高くなります。
軒ゼロ住宅をすすめられた時はデメリットに対してどんな対策を行なっているかを色々と質問してみましょう。
施工実績や雨漏りが発生した場合の補償などについて、しっかりと答えられる会社を選んで、よい家づくりをしましょう。
まとめ
今回は軒ゼロ住宅のメリット・デメリットを知りたい人や軒ゼロ住宅のデメリットへの対策を知りたい人に対して、
人気のある軒ゼロ住宅のメリット・デメリットや建てる際の注意点をご紹介してきました。
まとめると以下になります。
軒ゼロ住宅のメリット
・建築費用を抑えられる
・狭小住宅に向いている
・モダンでスタイリッシュ
軒ゼロ住宅のデメリット
・外壁や窓枠が傷みやすい
・雨漏りリスク
・屋外の設備の劣化
外壁や窓枠が傷みやすい対策
・外壁を劣化しにくいタイルにする
・劣化に強いシーリング材にする
・窓の上に庇をつける
長年暮らした実感として、木造で「軒ゼロ+片流れ屋根」はデメリットが多いのでお客さんにおすすめするのは避けたいというのが正直なところです。
軒ゼロ住宅は確かにモダンでスタイリッシュな外観になるので、デザインにこだわりのある人には好まれますが、
しっかりとデメリットへの対策をしているかどうかがとても重要になります。
施工会社に軒ゼロ住宅をすすめられた時は、デメリットに対してどんな対策を行なっているかを色々と質問してみましょう。
また施工実績や雨漏りが発生した場合の補償などについて、しっかりと答えられる会社を選んで、よい家づくりをしましょう。
この記事が軒ゼロ住宅を検討している方の参考になってくれれば幸いです。
この記事が役に立った、面白かったという方はコメントしてくださいね。
また、FacebookやTwitterでみなさんのお役にたてる情報発信しています!
「いいね!」や「フォロー」していただけるとうれしいです。ヨロシク(b・ω・d)デス♪
アーキトリック一級建築士事務所