屋根勾配はいくつにする?設計段階での屋根勾配は4寸勾配がいい理由
いまでの住宅はガルバリウム鋼鈑などの金属屋根が多くなっています。
金属屋根は瓦屋根に比べて屋根の重量を軽くすることができるので耐震性能をあげることができます。
またコスト、施工性の面からもローコスト住宅では主流になっています。
ガルバリウム鋼鈑を使った屋根材料も様々な種類があり推奨される屋根勾配も屋根材料によって変わってきます。
屋根勾配はいくつがいいの?
屋根形状にもよりますが、設計段階で屋根勾配を考える時には4寸勾配がおすすめです。
今回はなぜ屋根勾配は4寸勾配がおすすめなのかや、屋根材料と屋根勾配の関係などをご紹介できればと思います。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
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屋根の設計について
基本設計の段階では屋根材料を何にするのかの前にボリュームの検討をします。
ボリュームの検討とは簡単に言うと、大まかな外観の形を決める設計のことです。
この段階では屋根勾配をいくつにするかの前に屋根形状(片流れ屋根、切妻、寄棟など)をプラントとあわせて決めていきます。
施主の要望に沿ったプランにどのような屋根をかけてどのようなボリュームにするのかで外観が決まります。
4寸勾配がいい理由
4寸勾配がいい理由は以下のとおりです。
・雨漏りしにくい
・ほとんどの屋根材料が使える
屋根勾配は屋根の上での雨水の流れや水切れの良さに関係します。
屋根勾配が緩やかだと雨水の流れがゆっくりになり屋根材料のつなぎ目などから雨水が侵入しやすくなります。
雨水の流れや水切れの良さを考えると並勾配(3寸~5寸勾配)である4寸勾配がちょうどよいと思います。
また、4寸勾配にしておけば設計時の屋根材料の選択の幅が広がります。
初期費用として安いスレート屋根で設計していたけれど、やっぱり耐久性を考え日本瓦に設計変更したい場合など4寸勾配だとボリュームを変えずに屋根材料を変更することができます。
屋根材料の決め方
屋根材料の決め方で注意したいことは以下のとおりです。
・価格
・デザイン
・耐用年数
・メンテナンス
価格とデザインだけで選ぶと屋根材料の耐久性や後々のメンテナンス費用が高くなる場合もあるので注意しましょう。
■スレート屋根の場合
価格:4,000円~8,000円/㎡
耐用年数:25年~30年
メンテンナス:
5年おき:点検・ヒビの補修
15年目:棟板金の交換
30~40年目:葺き替え
任意:塗装
■ガルバリウム鋼鈑の場合
価格:6,000円~12,000円/㎡
耐用年数:30年~40年
メンテナンス:
15年目:棟板金の交換
30~40年目:葺き替え
任意:塗装(美観のため)
■瓦屋根の場合
価格:9,000円~16,000円/㎡
耐用年数:50年以上
メンテナンス:
15年目:棟の取り直し
30~40年目:葺き直し
上記の3つの中でスレート屋根が一番価格が安いのですが、こまめなメンテンナスが必要だったりします。
スレート屋根は、薄いセメント板であるため強度が弱く、5~10年もするとクラック(ひび割れ)が生じたり、塗装が退色したりします。
美観を維持するためには、10年~15年程度をめどに再塗装が必要となり、他の屋根材と比べるとお手入れが必要になる屋根材です。
屋根形状でプランが決まる
平屋の場合は屋根形状、どのように屋根をかけるのかでプランが決まります。
つまりプランとボリュームの検討を同時に考えながら設計することが必要です。
屋根形状とは
・切妻屋根
・寄棟屋根
・片流れ屋根
など代表的な屋根形状の他に
・方形屋根
・入母屋屋根
・招き屋根
・差しかけ屋根
・バタフライ形屋根
など様々な屋根形状があります。
リビングを勾配天井にする場合、どのような室内空間にしたいかを考えながら全体の屋根のかけ方を検討することになるので、設計する上で一番難しいところであり、楽しいところでもあります。
屋根材料の種類と屋根勾配
屋根材料によって推奨される屋根勾配が決まっています。
以下は代表的な屋根材料です。材料の特徴や屋根勾配について見ていきましょう。
金属屋根
金属屋根とはアルミニウム、スチール、亜鉛合金などの素材で薄く長い板状のもので葺いた屋根のことです。
代表的なものはガルバリウム鋼鈑でアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板の屋根材のことです。
葺き方は平葺、瓦棒葺き、立平葺、金属瓦葺などがあり、それぞれに推奨される屋根勾配が決まっています。
材料が長い板状なのでつなぎ目が少なくでき、雨水が侵入しづらいので緩やかな勾配でも大丈夫です。
目安としての最低勾配は1寸勾配以上、平葺き・横葺きの場合は3寸勾配以上が必要になります。
スレート屋根
スレートとは、セメントを薄い板に加工した屋根材です。
別名「コロニアル」「カラーベスト」と呼ばれることもあります。
スレート屋根は現在の我が国の新築住宅で最も多い屋根材です。
色やデザインが豊富で安価であることに加え、「多くの家がスレートだから」という理由で採用されるケースが多いと思われます。
前述しましたが、こまめなメンテナンスが必要な屋根材料でもあります。
目安としての最低勾配は3寸勾配以上が必要になります。
瓦屋根
瓦屋根は大きく分けると粘土瓦とセメント瓦の2タイプがありますが、一般的に瓦屋根といった場合は陶器瓦のことです。
陶器瓦は粘土を高温で焼成して作った屋根材料のことです。
特徴は50年以上の長い耐用年数や再塗装がいらないこともあって、維持・メンテナンスの手間やメンテナンス費用が少ない屋根材です。
ほかにも、遮音性、断熱性、透湿性にも優れ、性能面ではこれといった弱点がない屋根材料です。
目安としての最低勾配は4寸勾配以上が必要になります。
まとめ
今回はなぜ屋根勾配は4寸勾配がおすすめなのかや、屋根材料と屋根勾配の関係などを見てきました。
設計段階では4寸勾配にしておけば設計時の屋根材料の選択の幅が広がり、ボリュームを変えることなく屋根材料を変更することができます。
屋根材料を選ぶときの注意点をもう一度確認します。
・価格
・デザイン
・耐用年数
・メンテナンス
施工時の価格が安くても長い目で見ればメンテンナス費用が高くついたり、屋根材料の耐用年数が短かったりするのでので30年先を考えて屋根素材を選ぶようにしましょう。
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