確認申請がないので建築基準法は関係ない?リノベーションで注意すること
建築物をリノベーションする場合、確認申請を必要とする場合は現行法にあわせて改修しなければならないのでリノベーションとしてのハードルは上がります。
確認申請がないなら建築基準法は関係ないの?
原則として、すべての建築物は建築基準法に従わなければならないです。
※法改正などで現行の基準法に適合しなくなってしまった建築物は既存不適格建築物と呼ばれ、違法建築物とは区別されます。
リノベーションで違法建築してしまうと、飲食店や旅館など不特定多数の人が利用する建築物の場合は行政に通報されると行政代執行により営業できなくなってしまうケースもあります。
リノベーションするのは素人だし、知らなかったで済むんじゃない?
違法建築にかかわった関係業者にも業務の停止、営業許可や免許の取消しなど実際に行政処分を受けるケースも増えてきています。
違法建築には関係業者の処分、行政代執行、罰則が決められているので自分だけの責任では済まされません。最大で懲役3年以下、300万円以下の罰則があります。
今回は、そんな違法建築を作ってしまう前にリノベーションする上での注意点などご紹介できればと思います。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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リノベーションする上での注意点
リノベーションといっても建築基準法上では「大規模の修繕若しくは模様替え」や「用途変更」などがそれに該当します。
リノベーションする際は、以下にあげる項目に注意しましょう。
既存不適格建築物と違法建築物
前述しましたが、現行の基準法に適合しない建築物は「「既存不適格建築物」と「違法建築物」の大きくはこの2つに区別されます。
この違いはとても大きいのでしっかりと区別して考えましょう。
「既存不適格建築物」とは、それが建てられた時点または増改築工事がされた時点で適法だったものの、その後の法改正などによって現行の法規には適合していない状態の建築物です。
「違法建築物」とは、建ぺい率超過、容積率超過、各種斜線制限の違反、用途制限違反、接道義務違反、さらには建築確認を受けずに建てられたもの(無確認建築)などがあり、特定行政庁による厳しい措置が定められています。
「既存不適格建築物」はあくまでも当時の法規を守って建てられたものなので、
新たに増改築工事などをする際には現行規定への適合が求められるますが、建築基準法には一定の緩和措置が設けられています。
また、近年において国土交通省による既存建築ストックの有効活用などで、既存不適格建築物に対する規制の緩和、合理化なども図られています。
一方、「違法建築物」の場合は建てられた当初から基準法に違反しているので、行政処分や罰則の対象になります。
工事をしていると工事停止命令が出たり、強制執行やライフラインの停止が命じられることもあります。
「検査済証」があれば少なくとも違法建築物ではないと証明できるのですが、
「検査済証」のない物件も珍しくないので、確認申請を伴うリノベーションの場合は必ず「検査済証」の有無を確認しましょう。
耐震診断と耐震補強
1981年に建築基準法の耐震計算方法が大きく改正されたました。
兵庫県南部地震(1995年)において、1981年以前の古い耐震基準で設計された既存不適格建築物に大破・倒壊の被害が集中しています。
そのため、昭和56年(1981年)以前の建物は耐震診断が必要となります。
耐震診断を行い適切な耐震補強をしましょう。
木造家屋をリノベーションする場合、壁量計算や壁配置バランス(偏心率)の基準を満たすようにしましょう。
昭和56年以前の建築は耐力壁を増設しなければならない場合がほとんどです。
壁や柱、梁などの主要構造部に該当し、それが過半の場合には「大規模の修繕若しくは模様替え」となり確認申請が必要となります。
ロフトの天井高
高い天井の建物にロフトを作る場合は天井高や床面積に注意しましょう。
ロフトとして認められるのは
・床面積がその階の面積の1/2未満
・天井高の最も高い部分が1.4m以下
となります。
それを超えてしまうとひとつの「階」となります。
結果、述べ床面積の増加(10㎡以上の場合)となり確認申請が必要となります。
容積率に余裕があれば良いのですが、オーバーしてしまうと違法建築物になってしまうので注意しましょう。
柱梁あらわしは床面積1/10以下
よく木造住宅をカフェや飲食店にする場合、天井をはがして梁や小屋組みをあらわしにするケースなどがあります。
その場合に注意しなければならないのが「内装制限」です。
飲食店等(耐火・準耐火以外の建築物)で床面積が200㎡以上の場合は「内装制限」がかかります。
この場合で梁や小屋組みなどをあらわしにするときには、その見付面積を床面積の1/10以下にしなければなりません。
間仕切壁の防火性能
リノベーションで事務所をシェアハウスにする場合には注意が必要です。
シェアハウスは、建築基準法上の「寄宿舎」に該当します。
床面積が200㎡を超える場合は「用途変更」が必要となり、建築基準等の制限が多くなります。
具体的な建築基準条例についてはこちらを御覧ください↓
茅ヶ崎市の建築基準条例の解説
現行法では
間仕切壁は防火性能の高いもの(準耐火構造)とし、小屋裏又は天井裏に達すること
とされていましたが
スプリンクラー設備を設けた場合や小規模で避難が極めて容易な構造とする場合は適応除外となるなど、規模や形態に応じたきめ細かい基準とする見直しがなされています↓
寄宿舎等における間仕切壁の防火対策の規制の合理化(国土交通省)参照
リノベーションのグレーゾーン
正直なところ、確認申請を必要としないリノベーションの場合、建築基準法に適合しているかどうかチェックするのは難しいです。
特定建築物の場合は毎年の定期報告の時に法チェックはされますが、それ以外だとなにか災害が起きてしまってから問題となるケースがほとんどだと思います。
リノベーションに関わるオーナー、設計者、施工者のモラルに依存するところがあるのでグレーゾーンともいえます。
日本は法治国家であり、法を逸脱しなければ基本的人権が保証されている…
このことは建築基準等の法も同じであり
「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉に増進に資すること」
と建築基準法の目的のところで示されています。
これは車のショールームのリノベーションで結局は行き詰まってしまった体験談です。
その物件は違法増築されたものをさらに増築する設計だったのですが…
(確認申請時には倉庫として増築し、検査後にショールームと繋げてしまった物件)
役所との事前協議で「違法になる前の状態に戻した上で検査を受け、その後に適切な増築の方法で確認申請をとる」という方法をオーナーに話したところ激怒され設計が白紙になりました。
いままでの経験から、違法建築物のリノベーションは無駄になる工程が多く、お金もかかるので白紙になるケースが多いです。
まとめ
今回は、違法建築を作ってしまう前にリノベーションする上での注意点やリノベーションのグレーゾーンをみてきました。
もう一度確認しすると、リノベーションする際は以下の点に注意しましょう。
・既存不適格建築物と違法建築物
・耐震診断と耐震補強
・ロフトの天井高
・柱梁あらわしは床面積1/10以下
・間仕切壁の防火性能
それ以外でチェックしたいことは
・建ぺい率
・斜線制限
・違法増築かどうか
・採光,換気,排煙設備
・内装制限
・消防設備
などの事前チェックが必要です。
どんなに素敵なリノベーションをしたとしても建物には寿命があり大規模修繕や模様替えが必要になります。
その物件が違法建築物だったら古くなったら取り壊すしかなくなってしまいます。
そうならないために、確認申請がないからといって建築基準法を無視するような違法建築はしないようにしましょう。
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アーキトリック一級建築士事務所