狭小住宅の間取りで注意することを実際に住んだ経験から考えてみる
狭小住宅とは狭く小さな土地に立つ住宅のことをいいます。
間口が狭い敷地(狭小間口)に建てる住宅はデメリットがたくさんありますが、利便性の高い環境でも敷地面積が狭いので安く売られています。
間取りをうまく作ることで狭い敷地でも快適な住宅を作ることができます。
狭小住宅で注意することのポイントをしっかりと理解した上で、自分にとって快適な間取りの家を実現しましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
間取りで注意する5つのポイント
間取りで注意する5つのポイントは以下になります。
1.光や風をうまく取り入れる
2.空間を完全に区切らない
3.エアコン室外機やエコキュートの配置
4.見せる収納やデッドスペースの利用
5.隣との生活音など防音に工夫が必要
1.光や風をうまく取り入れる
住宅が密集している場合、光は隣り合う隙間からはあまり期待できません。道路に面した前後の開口部や天窓、高窓などうまく利用し光をうまく取り入れましょう。
風についてですが、空間的に細かく間仕切ってしまうと十分に風通しが取れない場合があります。
熱による空気の流れを利用して階段室などの高い位置に排気用の窓を設けることも有効な手段です。
前後の細長い敷地で余裕があれば、2階テラスや中庭など半外部の空間をうまく作ることで光や風をうまく取込むことができます。
2.空間を完全に区切らない
ただでさえ狭い間取りなので、部屋ごとに区切ってしまうととても狭く感じてしまいます。
寝室など、プライバシーを求められる居室以外は、可能な限り壁で区切らないことで広さを感じさせることが必要です。
LDKはもちろんですが、子供部屋などは目線をさえぎる1.8メートルほどの間仕切りや家具などで部屋を区切るなど、大きな空間の一部を切り取るような間取りを心がけましょう。
3.エアコン室外機やエコキュートの配置
敷地境界線から建物外壁までの距離を50センチ以上開けなければならないのはご存知でしょうか?
民法の234条では「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と定められています。
エアコンの室外機などこの50センチの隙間に設置してしまうと、「ショートサーキット」を起こしエアコンの効率が落ちたり、故障の原因になったりします。
また室外機の出す風の方向が隣の家の寝室だったりするとご近所トラブルの原因となる場合もあります。
エコキュートの設備は貯蔵タンクなどメンテナンスが必要な場合もあるのでしっかりとスペースを確保しておきましょう。
あらかじめエアコン室外機やエコキュートの配置は図面上でしっかりと確認した上で設置しょう。
4.見せる収納やデッドスペースの利用
間口が狭い敷地にたつ狭小住宅は納戸などのスペースが十分に取れない場合が多々あります。
収納のための部屋として壁で間仕切ってしまうとどうしても開放感のない空間になってしまいます。
買うものを最小限にして生活する努力も必要ですが、それでも長年、生活するとどうしても物が増えてしまいます。
部屋にしまってしまうと長年使わなかったり、忘れてしまったりもします。
階段の下部を収納スペースにすることはもちろんですが、
階段の壁面を本棚にしたり、通路の壁に棚を設けたりとデッドスペースをうまく利用し、いたるところに見せる収納を設けることを心がけましょう。
5.隣との生活音など防音に工夫が必要
住宅が密集している敷地に建てるということは、他の家から漏れてくる音を遮断することと自分の家から出る音を遮断することの両方が必要となります。
騒音はご近所トラブルの上位となる深刻な問題です。
住み始めてから対策を検討することはとても難しいので、間取りを考えるとき隣の家の間取りも考慮して考えましょう。
実際に住んだ経験からのデメリット
実際に住んだ経験からのデメリットは以下になります。
・足場のスペースがない
・工事車両のスペースが確保できない
・外壁などのメンテナンスが大変
・道路に面している場合は防犯に注意
・別棟で建てる場合は敷地内通路が狭い
足場のスペースがない
狭小住宅を建てるとき一番最初に困るのは足場のスペースがないことでしょう。
隣との壁の隙間は民法上は50センチ離さなければならないのですが、この50センチに足場を設けることはとても大変です。
外壁などサイディングを張ったり、左官で仕上げる場合などある程度の作業スペースがないととても大変です。
1階で材料を作ったり切ったりするスペースの確保はもちろんですが、
作業場所へ行ったり来たりになるので作業日数にはある程度の余裕を見ておきましょう。
工事車両のスペースが確保できない
クレーンなど大型重機を設置する場所の確保はもちろんですが、工事してくれる業者の車両を止めておくスペースも必要になります。
駐車スペースがない場合、近隣の月極め駐車場でも工事期間だけ貸してくれるところもあるので電話してみましょう。
短い期間の工事などたくさんの業者が入って作業する場合もありますので、2~3台分は確保したいところです。
外壁などのメンテナンスが大変
建物が2階以上になると、建物との狭いスペースでもしっかりとした足場の設置が必要になり、DIYでメンテナンスするのは大変です。
うちのガレージは安く作ってあるために外壁は金属のスパンドレルを塗装したものですので、(今ではガルバリウムのスパンドレルが一般的です)定期的に塗装しないと錆びが出てきてしまいます。
狭い敷地のために隣の塀に登らせてもらって作業するのですがとても大変です。
狭いスペースの外壁はなるべくメンテナンスの必要がない素材(サイディングなど)を選びましょう。
道路に面している場合は防犯に注意
狭小住宅を道路に面して建てる場合、前庭などとるスペースがないので家のなかが通りから丸見えになってしまいがちです。
いつも居るリビングなどは2階などにするのもいいのですが、1階はやはり泥棒が入りやすくなってしまいます。
玄関はオートロックにしたり、開口部には格子を設けたりしましょう。目隠し用にフェンスを設けるのもいいのですが近すぎて開口部から光をうまく取込めなかったりします。
そんなときは1階のGLからの床高を高めに設定することがお勧めです。
2階リビングについてはこちらの記事をご参照ください↓
別棟で建てる場合は敷地内通路が狭い
狭小住宅の敷地内通路は狭くなりがちです。
建築基準法(施工令第128条)に敷地内には、出入口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m以上の通路を設けなければいけないといった規定があります。
そのため基準法上の敷地内通路は1.5m以上が必要になるのですが、これを満たすためにはただでさえ狭い敷地に1.5mの通路を取らなければならなくなりより狭くなってしまいます。
建物を別棟で建てるときは空地を適切に設けたり、道路へ直接出れる開口部を設けたりする工夫も必要となります。
狭小住宅のメリットってあるの?
狭小住宅の代表的なメリットは以下になります。
・土地が安い
・税金が安いく済む
・利便性がよい敷地が多い
土地が安い
狭い土地なので価格は安くなります。
利便性の高いエリアでは一坪あたりの価格は高額ですが、狭い土地にうまく建てられれば利便性の高いエリアでも快適に住むことができます。
税金が安いく済む
土地と建物には「固定資産税」と「都市計画税」がかかりますが、狭小住宅は毎年の税金を安く抑えられる傾向があります。
「小規模住宅用地」と呼ばれる200平方メートル以下の土地ならばとても有利となります。
利便性がよい敷地が多い
利便性の高いエリアの狭い土地は当然ですが、旧街道沿いなど町の中心部の敷地が多いので、
駅やバス停、商業施設までの距離が短く、通勤、通学、買い物には便利です。
まとめ
狭小住宅はデメリットが多いのは確かですが、土地代が安く、税金も優遇されて、利便性の高い土地が多いのも確かです。
家づくりは要望が多くてあたり前ですが、最初からハードルをあげるのではなく、こんなに狭い土地でもこれもできる、
これも実現可能というように少しずつハードルをあげていく間取りの作り方も面白いと思います。
狭小住宅だからこそできる空間の面白さや住まい方を考え、自分にあった快適な住まいを実現しましょう。
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