実施設計ってどこが重要なの?施工会社とトラブルにならないための意匠図面の描き方
初めての実施設計ってどう描いたらいいのか分からないですよね…
私も初めての実施設計でとても苦労した思い出があります。
私の初めての実施設計は鉄骨造のピラミッド型の店舗でした。
当時は店舗設計事務所で働いていたので参考になる実施設計の図面なんて事務所になかったです。
もちろん、しっかりとした実施設計図面を描けるはずもなく、施工会社とかなり揉めた記憶があります。
結局、施工会社が施工図をしっかり作ってくれたので納められたのですが、
いま考えてもかなり無茶なことをやっていました。
そんな経験もあり、しっかりとした実施設計をするようになったのですが、
実施設計ってどこが重要なの?
実施設計は施工会社にしっかりと建築設計の意図を伝えるための設計になります。
そこで描かれる図面は、工事の見積もりや工事が始まってからの打ち合わせに使用されたり、建築各部の納まりを決める際のもとになる図面となります。
図面に記載がなかったばっかりに施工会社とトラブルになることはよくあります。
今回は木造住宅で施工会社とトラブルにならないために、意匠図面の描き方が分からない人に実施設計での注意点などを紹介します。
この記事が意匠図面ていまいち何を描いたらいいのか分からない人にとって少しでも参考になってくれれば幸いです。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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意匠図面での注意点
意匠図面とは以下の図面のことです。
特記仕様書、仕上表、配置図、外構図、平面図、平面詳細図、立面図、断面図、矩計図、展開図、天井伏図、家具図、詳細図など
このほかに構造図と設備図があり、それらを合わせて実施設計図面となります。
この中でも特に注意が必要なのは以下の図面になります。
・平面詳細図
・矩計図
・展開図
・天井伏図
・詳細図
・特記仕様書・仕上表
施工会社とトラブルになった時に、図面にしっかりと記載されているかどうかが解決の分かれ道になることもあります。
平面詳細図
基本設計で描く「平面図」と、実施設計で描く「平面詳細図」は役割が異なります。
「平面図」は、クライアントとのコミュニケーションを図るものですが、「平面詳細図」は、施工者が建築をつくるための図面となります。
平面詳細図で注意することは以下になります。
・全ての図面情報を網羅
・部材を正確な寸法で描く
・家具図や詳細図への関連付け
全ての図面情報を網羅
平面詳細図は、設計図書全体の要でありキープランです。
他の図面の作成や施工の過程で加えられた変更は、必ず平面詳細図へ反映する必要があります。
すべての設計情報を平面詳細図で網羅させることが必要です。
部材を正確な寸法で描く
柱、外壁、内壁など下地から仕上げまでの部材を正確な寸法で描いて各部の納まりを決めていきます。
柱と外装仕上げ、開口部と間柱など、部材同士がぶつかったり、取り付いたりする箇所をできるだけ正確に示すことで伝わる図面になります。
家具図や詳細図への関連付け
平面詳細図では家具図や詳細図への関連付けのためのキープランになります。
家具や各部の詳細についての細かな寸法ではなく、大まかな位置関係の寸法を記載するようにします。
また造作工事がある場合は、造作物の外形寸法と仕上げ材程度の情報を記載します。
このように、1つの図面をほかの図と関連づけることは、実施設計の図面を描く上で重要になります。
矩計図
矩計図で注意することは以下になります。
・高さ寸法を記載する
・各部の仕上げを指定する
・構造図への関連付け
矩計図は、高さ方向の詳細図です。
高さに関する寸法はすべて入れる必要があります。
高さ寸法を記載する
記載する高さ寸法は、最高軒高、軒高、桁高、基礎高、階高、天井高、床高、開口部の取付高さなどです。
高さ寸法を描き込みすぎると見にくくなるので、周囲との位置関係を把握するための寸法を記入しましょう。
各部の仕上げを指定する
下地まで含めて各部の仕上げを指定しましょう。
例えば
天井:気密シート(厚0.2)の上、PB(厚9.5)下地クロス貼り
内壁:気密シート(厚0.2)の上、PB(厚9.5)下地クロス貼り
※気流止め、バリアボックス使用
床:構造用合板(厚28)下地、無垢フローリング(厚15)張り
外壁:サイディング(厚16)モエンエクセラード16、構造用合板(厚12)、通気胴縁(厚15)、透湿防水シート、断熱材(高性能グラスウール24kg厚90)
屋根:ガルバリウム鋼板(ニチハ横暖ルーフαS同等)、アスファルトルーフィング940/23kg、野地板/耐水合板下地(厚12)、垂木45×90@455、母屋90×90、断熱材(高性能グラスウール24kg厚180)
各部の仕上げは仕上表と必ず同じものを指定するようにしましょう。
構造図への関連付け
構造図への関連付けができるように構造部材の高さ寸法の記載をしましょう。
構造図では伏図で表されるために、断面的に理解することが難しいです。
矩計図や断面図で高さ方向を図で描くことで構造図との関連付けができ、施工者に伝わる図面を作成することが可能になります。
展開図
展開図で注意することは以下になります。
・全ての部屋や部位を繋げて描く
・各部の仕上げや寸法を記入
・スイッチ、コンセントの位置
・家具図や詳細図への関連付け
展開図は、内部空間の壁面を図面化したものです。
内部空間の形状、仕上げ、高さの情報を伝える図面になります。
全ての部屋や部位を繋げて描く
建物形状が矩形であれば、展開図は4枚で足りますが、
細長い形状や小壁がある場合などは、それらを網羅するために追加の図面が必要となります。
取り合いの情報を確実に伝えるためには、展開図はできるだけ切らないで、繋げて描くことが大切です。
繋げて描くことで、部屋や部位同士のつながり方や関わり方が格段に分かりやすくなります。
各部の仕上げや寸法を記入
内部仕上表にも仕上げを記入しているのですが、
展開図にも仕上げを描いておくと、別紙の内部仕上表を度々確認する必要がなくなり、施工者にとっては便利になります。
寸法の記入は家具などの建物との位置など、家具図への関連付けをするのに必要な寸法を記入しましょう。
スイッチ、コンセントの位置
スイッチ、コンセントの位置を記入しましょう。
設備図でスイッチやコンセントを記入してあるのですが、具体的にどの位置に設置するのかを記入しておきましょう。
家具図や詳細図への関連付け
家具図や詳細図への関連付けができるように見えがかり線で簡潔に記載しましょう。
展開図では、家具図や詳細図で表しづらい建物との位置関係などの寸法を記入しましょう。
天井伏図
天井伏図で注意することは以下になります。
・天井素材の割付け
・軒下換気の位置
・見えがかり線を描く
・設備図との関連付け
天井伏図は、天井面の見えがかりを見下ろした状態に描き出した意匠図の一つです。
天井や軒裏の仕上げ、割付、目地も表現し、仕上げに関する情報を集約します。
天井素材の割付け
天井素材を指定しましょう。
ジップトンや羽目板などの場合は割付けも図示しましょう。
軒下換気の位置
軒下の有孔板の位置を軒裏換気計算をした上で記入しましょう。
軒下にダウンライトなどがくる場合にはその部分を避けるように割付けましょう。
見えがかり線を描く
余計な線が入ると見づらくなりますので、天井の枠より内側のみ、柱は目安程度、外壁の構成などの線は省略すると伝わりやすくなります。
設備図との関連付け
天井点検口、照明、換気扇、エアコン、住宅用火災警報器などの設備も記入しましょう。
設備図でも記載されるのですが、天井仕上げと同じ図面に表記すると天井素材の割付けなどのを考えながら位置を決められるので打合せが楽になります。
特記仕様書・仕上表
特記仕様書・仕上表で注意することは以下になります。
・工事範囲の指示
・屋外室内仕上げの指示
・各図面との関連付け
特記仕様・仕上表の内容は各図面に落とし込み、形骸化させないようにしましょう。
工事範囲の指示
特記仕様書で工事範囲を指定しましょう。
気密工事で目標とする気密測定のC値や、防蟻処理などの薬剤などを指定します。
外構工事や解体工事についてもしっかりと記載しないと見積もりに反映されないのでしっかりと記載しましょう。
屋外室内仕上げの指示
仕上表は屋外仕上表と室内仕上表に分けて作った方がいいと思います。
屋外仕上表では仕上材が決まっている場合はメーカーや商品名などを指示します。
室内仕上表では備考欄にその部屋で設置する設備や建材などを記入しておきましょう。
各図面との関連付け
仕上表に記載された仕上げはしっかりと各図面と関連付けましょう。
施工が始まってからの変更がありそうな場合は〇〇シリーズ同等品などと指定して、しっかりと決まったら忘れずに品番などを記入しましょう。
まとめ
今回は木造住宅で施工会社とトラブルにならないために、意匠図面の描き方が分からない人に実施設計での注意点などを紹介してきました。
まとめると以下になります。
全ての図面情報を網羅
部材を正確な寸法で描く
家具図や詳細図への関連付け
高さ寸法を記載する
各部の仕上げを指定する
構造図への関連付け
全ての部屋や部位を繋げて描く
各部の仕上げや寸法を記入
スイッチ、コンセントの位置
家具図や詳細図への関連付け
天井素材の割付け
軒下換気の位置
見えがかり線を描く
設備図との関連付け
工事範囲の指示
屋外室内仕上げの指示
各図面との関連付け
意匠図は設計者の意図を施工者に伝えるための図面なので、施工図とは違い現実離れした図面になってしまうこともあります。
しかしながら、建築に対しての設計者の考えをしっかりと意匠図で表現することはとても大切なことなので、施工者に伝わりやすい図面を描くように心がけましょう。
この記事が意匠図面ていまいち何を描いたらいいのか分からない人にとって少しでも参考になってくれれば幸い
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