【注文住宅】2025年4月以降の新築住宅への省エネ基準適合の義務化について
2025年4月1日から新築住宅に対する「省エネ基準適合が義務化」されることが決定しました。
この変更は脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部改正によるもので、
2050年カーボンニュートラル実現と2030年温室効果ガス削減目標達成に向けた取り組みです。
義務化によってどのように変わるの?
この義務化によって2025年4月以降に着工する全ての新築住宅は一部の極少規模(10㎡以下)を除いて省エネ基準に適合する必要があります。
これまでは300㎡未満の小規模住宅には説明義務、300㎡以上の大・中規模住宅には届出義務がかせられていましたが、
新制度ではほぼすべての新築住宅が対象となります。
私は18年間(2024年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
この義務化によってこれからの注文住宅は、長く快適に暮らせる性能を有した建物が多くなると考えています。
今回は省エネ基準適合の義務化されることでどのような変化が期待されるのか、またどんなデメリットがあるのかなどをご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・新制度が施行されるとどうなる?
・省エネ基準引き上げのメリットとデメリット
上記のことがわかります。
高性能な断熱材や設備機器の導入することで建築コストが高くなりがちです。
政府の支援制度をうまく利用して、長く快適に暮らせる家づくりをしましょう。
丁寧にメンテナンスしながら、お子さん、お孫さんの代まで引き継がれていくことが理想ですね。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
省エネ基準
省エネ基準は主に以下の2つの重要な指標で構成されています。
省エネ基準
・一次エネルギー消費量
住宅での空調・換気・照明・給湯などに使用されるエネルギーの総量を指します。
・外皮性能
建物の壁や天井、窓などの断熱性能や日射遮蔽性能(日射熱が室内へ侵入するのを抑制する性能)を指します。
一次エネルギー消費量
一次エネルギー消費量とは住宅での空調・換気・照明・給湯などに使用されるエネルギーの総量を指します。
一次エネルギー消費量から太陽光発電設備等によって創出されるエネルギーを差し引いた消費量を純エネルギー消費量とし、
この純エネルギーを一定以下に抑えることが求められています。
外皮性能
外皮性能とは建物の壁や天井、窓などの断熱性能や日射遮蔽性能(日射熱が室内へ侵入するのを抑制する性能)を指します。
具体的には以下の値が重要になります。
・断熱性能:外気平均熱貫流率=UA値
・日射遮蔽性能:平均日射取得率=ηAC値
それぞれの値が小さいほど性能が高いことを示しています。
新制度が施行されるとどうなる?
省エネ基準適合性審査が建築確認手続きの一環として行われるようになります。
建築主は省エネ性能確保計画を提出し、行政機関が省エネ適合判定を行い、検査機関等によって省エネ基準適合を確認するという流れになり、
問題がなければ工事の着工が許可されるようになります。
そして、竣工完了時にも適合検査が行われます。
この義務化に伴い住宅の断熱性能も重要視されています。
2022年の法改正時に断熱等級が3つ新設され、合計7つの等級が設定されました。
2025年以降には最低基準となる等級4が引き上げられる予定です。
これによって新築住宅だけでなく、一定規模以上の増改築でも一定以上の断熱性能を備えた省エネ設計が法的に義務付けられることになります。
政府の支援制度
省エネ住宅の普及を促進するため政府は以下のような様々な支援制度を設けています。
政府の支援制度
・子育てエコホーム支援事業
・住宅ローン減税制度
子育てエコホーム支援事業
子育て世代や若者夫婦世代による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等に対して補助金が支給される制度です。
長期優良住宅の場合は1住戸につき100万円、ZEH住宅の場合は1住戸につき80万円の補助金が支給されます。
補助金の予算には限りがあるので、「予算に対する補助金申請額の割合」は国土交通省のホームページで確認しましょう↓
》算に対する補助金申請額の割合
最新の状況を確認した上で申請の準備を進めることをおすすめします。
住宅ローン減税制度
住宅ローン減税制度も改正され、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅について住宅ローン減税を受けるには省エネ基準に適合する必要があります。
省エネ性能に応じて限度額が異なり、最高で認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合は4,500万円まで控除対象になります。
将来的にはどうなる?
国土交通省は将来的な省エネ基準の引き上げも計画しています。
2030年度以降に新築される住宅や建築物については、ZEHに準じた高い省エネルギー性能の確保を目標としています。
そうするとどうなるの?
省エネ基準への適合が義務化されるとこれまでの最高等級だった「等級4」相当レベルでも最低等級になってしまう可能性があります。
適合していない住宅は資産価値が下がってしまうでしょう。
この省エネ基準適合義務化は環境への配慮だけではなく、居住者の快適性や健康にも良い影響があるとされています。
高い断熱性能は室内温度を安定させ、結露やカビの発生を抑制します。
また、エネルギー消費量の削減は光熱費の節約にもつながります。
ただし、住宅建築のコストが上昇する可能性があるので、政府や自治体による各種支援制度をしっかりと活用しましょう。
長期的には省エネ住宅のメリットが光熱費の削減などの形で還元されることが期待できます。
住宅ローンへの影響はどうなる?
省エネ基準適合義務化は住宅ローンや補助制度に大きな影響を与えることが予想されます。
住宅ローン減税について前述しましたが、
省エネ基準を満たしていない住宅は「その他の住宅」に分類され2024年以降は原則として住宅ローン減税を受けられなくなります。
フラット35においては、借り入れ条件や優遇措置に省エネ基準の強化が反映されています。
ZEHの条件を満たす住宅に対しては金利の優遇措置が設けられました。
具体的には、ZEHの条件を満たす住宅の金利は融資開始〜最初の5年間は0.5%、6年目〜10年目は0.25%の金利引き下げが適用されます。
省エネ基準引き上げのメリットとデメリット
省エネ基準の引き上げによって様々なメリットがあることは分かりますが、多くのデメリットもあります。
省エネ基準引き上げのメリットとデメリット
省エネ基準引き上げのメリット
・光熱費を抑えられる
・メンテナンス頻度が減る
・住宅の耐久性の向上
省エネ基準引き上げのデメリット
・初期費用が高くなる
・建築できる施工会社が限られる
・住宅購入が難しくなる
省エネ基準引き上げのメリット
年間を通して光熱費を抑えられることは大きなメリットです。
高い断熱性能と気密性能によって冷暖房効率がアップし、エネルギー消費が抑えられるためです。
夏は涼しく、冬は暖かい空間で一年中快適に過ごすことができます。
結露が起きにくいことでメンテナンス頻度が減るというメリットもあります。
長期的に見ると住宅の耐久性の向上にもつながります。
そして昨年、多くの人が不安視している自然災害への対策として太陽光発電システムも注目されています。
省エネ基準引き上げのデメリット
最も大きいな課題は初期費用の高さになります。
高性能な断熱材や設備機器の導入することで建築コストが高くなりがちです。
また、エコ住宅を適切に建築できる施工会社が限られているという実情もあります。
施工会社の選択肢が狭まることや初期費用がプラスになって住宅購入が難しくなる方が増えるかもしれません。
いい家づくりをして長く大切に暮らす
総務省は日本の戸建て住宅の平均寿命は約38年としていて、イギリスの73年、アメリカの56年に比べてかなり短いことがわかります。
日本の住宅市場はスクラップ・アンド・ビルド(作って古くなったら壊す)という傾向が強いです。
日本は木造住宅が多く湿気も多い気候なので内部結露や雨漏りが原因で木が劣化していきます。
スクラップ・アンド・ビルドを繰り返すと廃棄物が増えて資源の無駄遣いにつながることも考えられます。
そのようなことを減らすためにも、いいものを作ってきちんと手入れして長く大切に使う…
省エネ基準適合の義務化はそれを具体化する取り組みのひとつでもあります。
今後は新築住宅だけでなく既存住宅の性能向上にも注目が集まるでしょう。
2025年4月から原則すべての住宅を新築、増改築する際に省エネ基準適合が必要となります。
リフォームやリノベーションによって性能をあげることは技術的に難しい面があり、対応できる施工会社も当面は限られるでしょう。
これから家を建てるご家庭は長く、安心、快適に暮らせる家づくりを重視して丁寧にメンテナンスしながら、お子さん、お孫さんの代まで引き継がれていくことが理想ですね。
まとめ
今回は省エネ基準適合の義務化について知りたい人や2025年4月から省エネ基準がどのように変わるのか知りたい人に対して、
2025年4月以降の新築住宅への省エネ基準適合の義務化についてご紹介してきました。
まとめると以下になります。
省エネ基準
・一次エネルギー消費量
住宅での空調・換気・照明・給湯などに使用されるエネルギーの総量を指します。
・外皮性能
建物の壁や天井、窓などの断熱性能や日射遮蔽性能(日射熱が室内へ侵入するのを抑制する性能)を指します。
政府の支援制度
・子育てエコホーム支援事業
・住宅ローン減税制度
省エネ基準引き上げのメリットとデメリット
省エネ基準引き上げのメリット
・光熱費を抑えられる
・メンテナンス頻度が減る
・住宅の耐久性の向上
省エネ基準引き上げのデメリット
・初期費用が高くなる
・建築できる施工会社が限られる
・住宅購入が難しくなる
高性能な断熱材や設備機器の導入することで建築コストが高くなりがちです。
政府の支援制度をうまく利用して、長く快適に暮らせる家づくりをしましょう。
丁寧にメンテナンスしながら、お子さん、お孫さんの代まで引き継がれていくことが理想ですね。
この記事が少しでもこれから注文住宅を建てようと考えている人のお役に立てれば幸いです。
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