【注文住宅の相見積もり】設計事務所の注文住宅で正式な相見積もりを取る方法
相見積もりは設計事務所の注文住宅を作る上でとても重要な工程の一つです。
相見積もりとは、複数の施工会社に同じ内容での見積もりを依頼して比較することです。
注文住宅を適正価格で建てたいのであれば、正式な相見積もりをとる必要があります。
正式な相見積もりってどこが違うの?
実施設計図面により、間取りや仕様などが共通した建築に対して出てくる金額の比較になります。
ハウスメーカーや工務店にただ見積もりをお願いしても、建築の間取りや仕様などが違うために比較しても意味がないものになってしまいます。
私は18年間(2024年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
ハウスメーカーや工務店にただ見積もりをとって比較し、それを相見積もりだと勘違いしている人の多さに驚かされています。
今回は設計事務所の注文住宅で正式な相見積もりを取る方法をご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・注文住宅で相見積もりを取るメリット・デメリット
・正式な相見積もりを取る方法
上記のことがわかります。
実施設計図面を揃えるには設計事務所の存在は欠かせないです。
共通した実施設計図面をもとに見積もりするから相見積もりの意味があります。
単に金額を比較しただけでは正式な相見積もりにはならないことに注意しましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
注文住宅で相見積もりを取るメリット
注文住宅で相見積もりを取るメリットは以下になります。
注文住宅で相見積もりを取るメリット
・価格競争によるコストの削減
・適正価格の把握
・交渉材料の増加
価格競争によるコストの削減
注文住宅で相見積もりを取るメリットは、価格競争によるコストの削減ができることです。
工務店や建設会社にとって利益率をどのくらいに設定するかで見積もり金額がかなり変わってきます。
その工事をどうしても取りたいのであれば、会社が損をしないギリギリのラインで見積もりを作ってくるからです。
価格競争をやり過ぎるデメリットってあるの?
品質やアフターサービスの低下につながる場合があります。
注文住宅は引き渡しをしてからも修繕やリフォームなど施工会社と長い付き合いになります。
あまり利益が出なかった物件に対しては、塩対応になってしまうのは仕方がないところでしょう。
適正価格の把握
注文住宅で相見積もりを取るメリットは、適正価格の把握ができることです。
施工会社の得意な工事以外はそんなには変わらない金額になるのが一般的です。
見積もり金額が大きく違っている場合はあるの?
見積もり金額が大きく違っている場合は、拾っている数量が間違えていたり、指定してある材料を使っていなかったりすることが考えられます。
また、使っている下請け業者も施工会社によって見積り金額を変えてくる場合があります。
適正価格を把握するとそれぞれの施工会社が得意とする工事がわかります。
交渉材料の増加
注文住宅で相見積もりを取るメリットは、交渉材料の増加することです。
その工事の適正価格がわかると金額交渉がしやすくなるからです。
相見積もりでの根拠のある金額で交渉されると施工会社は安くせざるを得なくなります。
相見積もり以外の交渉材料ってあるの?
値引き交渉で相見積もり以外の効果的な交渉材料は私が知る限りだと思いつきません。
正式な相見積もりをすれば、それだけで強力な交渉材料を手に入れることができます。
施工会社はどの工事で利益を得るのか色々と仕掛けてくるので、気を抜かずに相見積もりをチェックしましょう。
注文住宅で相見積もりを取るデメリット
注文住宅で相見積もりを取るデメリットは以下になります。
注文住宅で相見積もりを取るデメリット
・手間と時間がかかる
・見積もりにバラつきが出る
・価格競争による品質の低下
手間と時間がかかる
注文住宅で相見積もりを取るデメリットは、手間と時間がかかることです。
実施設計図面を作成するだけで1ヶ月から1ヶ月半はかかるからです。
また、3社以上に相見積もりを頼む場合、各々に説明する手間がかかります。
もっと手間と時間をかけない方法はないの?
施工会社の選定は、理想の注文住宅を実現する上でとても重要になります。
ここでじっくりと施工会社を選ばないと後から後悔するなんて人は多いです。
手間については設計事務所に仕事を依頼すれば施主に負担がかかることは少なくなります。
見積もりにバラつきが出る
注文住宅で相見積もりを取るデメリットは、見積もりにバラつきが出ることです。
施工会社により得意な工事などがあったり仕入値が安かったりする場合があるからです。
見積もりにバラつきが出た場合はどうすればいいの?
大きなバラつきが出た場合は数量や仕上げ材料などが違っている場合があるので再確認してもらいましょう。
工事範囲がしっかりと伝わっていなかった場合など、工事項目に別の工事金額が含まれてしまっている場合もあります。
出てきた見積もりをしっかりと分析してなぜバラつきが出るのかを考えてみましょう。
価格競争による品質の低下
注文住宅で相見積もりを取るデメリットは、価格競争により品質が低下することです。
過度な価格交渉をすると施工会社によっては赤字になってしまう工事も出てくるからです。
赤字の場合は図面に記載された通りに施工してくれるの?
設計事務所が工事監理に入らないと手抜き工事される可能性は高くなります。
施主は現場をチェックするプロではないので、施工不良や不具合などを見抜けない場合が多いです。
設計事務所に工事監理までお願いできれば安心して現場を任せることができます。
正式な相見積もりを取る方法
正式な相見積もりを取る方法は以下の手順で行います。
正式な相見積もりを取る方法
①施工会社の会社情報を確認する
②実施設計図面を揃える
③工事項目を揃える
④工事範囲の確認
⑤希望する予算額を確認する
⑥工事期間を伝える
⑦見積書の提出期日を伝える
①施工会社の会社情報を確認する
まずは見積もりを頼む施工会社の会社情報を確認しましょう。
会社情報は以下の情報を確認します。
・設立からの年数
・従業員数
・過去の実績
設立からの年数が長ければ、それだけ信頼できる会社だと思います。
従業員数ですが、住宅部門などを工事部から分けて少数精鋭でやっている会社もあります。
従業員数が多ければ会社組織の中での決定スピードが遅いなどのデメリットが考えられます。
また、過去の実績からどのような建築を作っているのか知ることができます。
住宅を年間で何棟建てているのかなどの情報も重要です。
住宅を多く建てているところであれば、メーカー製品などの仕入れ値が安くなりその分の値引きができます。
②実施設計図面を揃える
相見積もりをするためには実施設計図面を揃えましょう。
基本設計で作った配置図、平面図、立面図、断面図だけでは建築を作るための情報として不十分です。
少なくとも、仕様書、仕上表、展開図、天井伏図、建具表、家具図、設備図、構造図が必要になります。
素人では揃えられないので、設計事務所にお願いして作成してもらいましょう。
しっかりと相見積もりで建築工事費が安くなれば、設計事務所に支払う実施設計料金なんて安いものだと思います。
設計事務所に実施設計を頼む場合は工事を減額するためのVE案まで作ってもらうようにしましょう。
※VE案とは、「Value Engineering(バリューエンジニアリング)」の略で、性能や価値を下げずにコストを抑えることである。
③工事項目を揃える
相見積もりをすると施工会社の見積もりの書式によって工事項目が違かったりして比較しずらいです。
工事項目を揃えるために見積もりを頼む施工会社にリストを渡しましょう。
工事項目のリストは以下のようなもので十分だと思います。
工事項目 | |
① | 直接仮設工事 |
② | 共通仮設工事 |
③ | 基礎工事 |
④ | 木工事 |
⑤ | 屋根工事 |
⑥ | 外壁工事 |
⑦ | タイル工事 |
⑧ | 金属製建具工事 |
⑨ | 木製建具工事 |
⑩ | 塗装工事 |
⑪ | 内装工事 |
⑫ | 家具工事 |
⑬ | 防蟻処理 |
⑭ | 設備工事 |
⑮ | 外構工事 |
⑯ | 諸経費 |
⑰ | 調整値引き |
上記の工事項目以外に解体工事や地盤改良などが必要な場合は項目として含めましょう。
工事項目を揃えれば各社から取った見積もりをエクセルで入力し簡単に比較することができます。
④工事範囲の確認
相見積もりを取る前に工事項目に含まれる工事範囲を確認する必要があります。
例えば、玄関までのアプローチまでタイルを敷く場合など、タイル工事に含めるのか外構工事に含めるのか迷ってしまう場合があります。
玄関タイルはタイル工事にアプローチのタイルは外構工事に含めるなどしっかりと工事範囲を確認しておきましょう。
工事項目での工事範囲をしっかり決めておかないと比較するときに計算する手間がかかってしまいます。
ひと目で他者との比較ができるように工事範囲をしっかりと伝えましょう。
⑤希望する予算額を確認する
相見積もりを取る前に希望する予算総額を確認しておきましょう。
設計事務所に注文住宅を頼むと設計価格でおおよその建築工事金額が分かります。
希望する予算総額やこの建築工事にいくらまで出せるのかのを確認しておくと、
相見積もりで出た金額が予算内なのかどうかを判断することができます。
希望する予算総額を施工会社に伝えるのはあまりお勧めではありません。
施工会社が見積もりを調整して少し高い金額で合わせてくる場合があるからです。
伝えるのであれば、予算総額より安い金額を伝えましょう。
⑥工事期間を伝える
相見積もりをお願いするときに工事期間をしっかりと伝えましょう。
もちろん、どのくらい建築工事がかかるのか素人ではわからないのですがいつまでに入居したい旨を伝えるだけでも構わないです。
施工会社は工事期間が短ければ、大工の人数を増やして間に合わることができますが、
人数が増える分かかる人工が増えるため工事費用が割高になります。
適切な工事費にするためには、工事期間はある程度余裕を持っておき、施工会社の都合を優先した方がいいと思います。
⑦見積書の提出期日を伝える
相見積もりをお願いするときに見積書の提出期日を伝えましょう。
提出期日を揃えることで、施工会社がどれだけ真剣に見積書を作ってきてくれるのか判断することができます。
見積書を見ればこの工事にかける意気込みがわかります。
質疑を受け付ける期間もしっかりと伝えましょう。
質疑に対する応答書も相見積もりを頼んだ各社に期日までにメールしましょう。
大体ですが、見積もり期間は全体で2〜3週間程度、質疑を受け付ける期間は見積もりを初めて1週間から10日までとする場合が多いです。
相見積もりで比較すること
相見積もりが揃ったら以下のことを比較するとわかりやすいと思います。
相見積もりで比較すること
・工事項目ごとの金額の比較
・拾ってある数量の確認
・メーカーからの仕入値の比較
エクセルで数値を入力して比較しましょう。
工事項目ごとの金額の比較
まずは揃えた工事項目ごとの金額を比較します。
工事項目ごとの金額を比較すると、施工会社のどこの工事が高いのかがわかります。
複数社の相見積もりを取ることで、その施工会社がどの工事で利益を取っているのかがわかります。
「その部分を他社はこの金額でやっているので、もう少し安くできないか?」
とういうように値引き交渉することができます。
複数社の相見積もりを取って比較するからこそできる交渉の仕方だと思います。
拾ってある数量の確認
金額があまりにも違いすぎる場合は、工事範囲を間違えて含めてしまっていたり、見積もり抜けしていることが考えられます。
見積もり内容で拾ってある数量を確認してしっかりと見積もり抜けがないか確認しましょう。
実施設計図面ではしっかりと指示されているのに、見積もり抜けがあった場合は施工会社にそのことを伝えてあげましょう。
施工会社のミスとはいえタダで工事をさせるのはかわいそうなのですが…
最後の値引き交渉のときにその工事箇所を指摘することで工事費が安くなるなんてこともあります。
メーカーからの仕入値の比較
見積もり内容から以下のメーカー設備を抜き出し比較してみると仕入値の安いのかがわかります。
・ユニットバス
・キッチン
・サッシ
・エコキュート
・エアコン
これを設計価格と比較すると施工会社の仕入値の掛け率がわかります。
どのメーカーの設備が強いのかが分かれば、VE案を作るときにそのメーカーのものに揃えることで安くすることができます。
実施設計図面を用意する方法と注意点
実施設計図面を用意する方法と注意点は以下になります。
設計事務所に実施設計を依頼する
実施設計図面を用意する方法は、設計事務所に実施設計を依頼するのがいちばん手取り早いです。
設計事務所は図面を揃えるプロ集団なので、実施設計図面を作りたいことを伝えれば図面を作成してくれます。
設計事務所以外だとどういう方法があるの?
知り合いの建築士などにアルバイトでお願いするケースもありますが、
実施設計図面を作成して報酬を得るためには建築士事務所登録をしている必要があります。
しっかりとした根拠のある実施設計図面が揃えられないと、
相見積もりをする意味がなくなってしまうので、設計事務所に実施設計を依頼しましょう。
実施設計を設計事務所に依頼するのであれば、確認申請や現場監理もお願いしましょう。
立派な実施設計図面を揃えても、現場監理をお願いしないと図面意図と違った建物ができてしまう可能性があるからです。
実施設計をする設計料の計算方法
設計事務所に実施設計をお願いする際は設計料が発生します。
設計料は概ね工事金額の10〜15%になりますが、設計事務所によって計算方法が異なるので注意しましょう。
工事金額が出てない場合は設計料はどうなるの?
実施設計をする設計料の計算方法は以下のテンプレートで計算できます↓
このテンプレートを使えば、床面積から工事監理費用などを含めての設計料が計算できます。
設計・監理料を計算する場合は実際にかかる人工で決める方法もあります。
人工で計算した方が安くなるケースが多いです。
設計事務所にもよりますが、可能であれば人工計算でも見積もりを出してもらうようにしましょう。
設計事務所の選び方
設計事務所の選び方に関してはこちらの記事をご参照ください↓
設計事務所を選ぶ際に特に注意したいのは、注文住宅を中心に設計活動しているかどうかです。
なんで注文住宅を中心に設計活動をしている設計事務所がいいの?
注文住宅を中心に設計活動している人だと、暮らしの細かな設計的な配慮を日頃から行っているからです。
注文住宅の設計は、その家で実際に人が暮らすことを想定して、さまざまな設計的な配慮が必要になってきます。
設計事務所を選ぶ時は注文住宅を中心に設計活動をしている設計事務所に仕事を依頼しましょう。
まとめ
今回は注文住宅で相見積もりを取りたい人や正式な相見積もりの取り方を知りたい人に対して、
設計事務所の注文住宅で正式な相見積もりを取る方法をご紹介してきました。
まとめると以下になります。
注文住宅で相見積もりを取るメリット
・価格競争によるコストの削減
・適正価格の把握
・交渉材料の増加
注文住宅で相見積もりを取るデメリット
・手間と時間がかかる
・見積もりにバラつきが出る
・価格競争による品質の低下
正式な相見積もりを取る方法
①施工会社の会社情報を確認する
②実施設計図面を揃える
③工事項目を揃える
④工事範囲の確認
⑤希望する予算額を確認する
⑥工事期間を伝える
⑦見積書の提出期日を伝える
相見積もりで比較すること
・工事項目ごとの金額の比較
・拾ってある数量の確認
・メーカーからの仕入値の比較
実施設計図面を揃えるには設計事務所の存在は欠かせないです。
共通した実施設計図面をもとに見積もりするから相見積もりの意味があります。
単に金額を比較しただけでは正式な相見積もりにはならないことに注意しましょう。
この記事が少しでも正式な相見積もりをとって適正価格で注文住宅を建てたい人のお役に立てれば幸いです。
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