【長く暮らせる注文住宅】30年後のリノベーションを前提にした新築住宅の作り方
一般に木造住宅の寿命は30年といわれていますが、
しっかりとメンテナンスを行い家族構成やライフスタイルの変化に合わせたリノベーションを行えば、50年、70年、100年と快適に暮らすことは可能です。
長く快適に暮らすためには、注文住宅を長期的な視点で考えることが重要です。
長期的な視点ってどういうことに注意すればいいの?
例えば、耐久性のある外壁や屋根素材を用いたり、間取りを変更しやすい木軸構造にしたり…
リノベーションが必要になった場合に大規模な工事にならないように新築時から将来のことを考えておくことが必要です。
私は18年間(2024年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
古い家屋をリノベーションしたときに、ここを新築時にもう少し考えてくれたらよかったのにと思うことが数多くあります。
今回は30年後のリノベーションを前提にした新築住宅の作り方をご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・リノベーションを前提にした新築住宅の作り方
・変化に備えるために重要な要素
上記のことがわかります。
新築時からリノベーションを想定し、長く快適に過ごすための注文住宅を建てる際には、慎重な計画と柔軟性が不可欠です。
将来の変更やリノベーションに対応するために、新築時の設計段階から着実な準備を行いましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は以下になります。
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方
①筋交や構造材の配置
②抜けない柱と梁の掛け方
③水まわりの位置
④配管や配線、点検口
⑤開口部の位置
⑥階段の位置
⑦耐用年数の長い素材選び
⑧メンテナンスフリーの素材選び
⑨住宅設備は大手メーカーにする
⑩足場を設置できるスペースの確保
①筋交や構造材の配置
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、筋交や構造材の配置に注意することです。
リノベーション時に筋交や構造材の配置を変更すると建物の耐震性や強度が弱くなるケースがあるからです。
具体的には、壁量計算や偏心率などを検討が必要になり、その計算結果によって耐震補強が必要になります。
壁量計算や偏心率ってどうやって計算するの?
筋交の入っている壁のXY方向の長さや建物のプランの重心、剛心などを求めて計算します。
設計事務所や構造設計事務所などに依頼すれば簡単に検討してくれます。
私の経験からですが、筋交や構造材の配置はなるべく建物の外周部に設置した方が変更は少なく済みます。
また、建築物の耐震性を高めるためには、適切な壁量や耐震補強が必要です。
特に昭和56年(1978年)以前の建物をリノベーションする場合は特に注意が必要です。
昭和56年以前の建物は新耐震基準で作られていない場合が多いので、壁量計算をすると足りないなんてことよくあります。
いくら綺麗にリノベーションできても地震で壊れてしまっては無駄になってしまいます。
しっかりと壁量計算をして適切な耐震補強をしましょう。
②抜けない柱と梁の掛け方
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、抜けない柱と梁の掛け方に注意することです。
リノベーションなどで間取りの変更をするときに柱が邪魔になるなんてことよくあります。
しかしながら、梁の掛け方によって抜けない柱になるケースが多いです。
抜けない柱を抜くにはどうすればいいの?
床組や小屋組などの構造を変更する必要があります。
具体的には、壊れないように構造材をバラして、新たに太い梁に取り替えたり、鉄骨で補強したりします。
構造材の変更は主要構造部の変更になり、大掛かりな工事となります。
また、確認申請が必要になったり時間と手間がかかります。
将来的に変更するときに邪魔になる柱を取れるように、梁の掛け方を工夫するなど木軸構造を考える必要があります。
そこまで注意しても、リノベーションでは梁の掛け方によって抜けない柱が出てくることを理解しておきましょう。
③水まわりの位置
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、水まわりの位置に注意することです。
水まわりの位置を変更すると配管をやり直さなければならないので、床や壁、天井を壊すなど大掛かりな工事になるからです。
その他で気をつけなければならないことってあるの?
屋外の排水管までの勾配が取れなかったり、土を掘り下げて配管工事が必要なケースもあります。
配管が基礎コンクリートに埋設されていると、後からのやり直しが難しくなるので、転がし配管がベストです。
水まわりの変更はプロにしっかりと可能かどうかの判断をしてもらいましょう。
水まわりの変更は工事費用が高額になりがちなので、しっかりと新築時に変更が出ないように考えておきましょう。
④配管や配線、点検口
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、配管や配線、点検口に注意することです。
配線や配管、点検口をしっかりと新築時に考えておかないと、後から床や壁、天井を壊さないと配線できなくなってしまうからです。
点検口ってどこに必要なの?
床下に潜るための床下点検口や天井裏の点検口、パイプスペースに点検口を設ける必要があります。
また、CD管やPF管などで配管しておくと後からでも配線することが簡単になります。
テレビやインターネットケーブルなど後から配線すると大変なので、CD管やPF管などで空配管しておきましょう。
⑤開口部の位置
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、開口部の位置に注意することです。
開口部を変更すると外壁の補修が必要になり、足場の設置費用などで工事費用が高額になるからです。
また、開口部の変更は部屋に必要な採光や換気、排煙にも影響するので無くしたりすると基準法上の問題が発生する場合があります。
開口部の変更ってどんなことがあるの?
サッシの位置やサイズを変更したり、カバー工法で気密断熱性能を高めたりする工事があります。
いずれにせよ開口部の位置やサイズを変更すると外壁を補修する工事が発生します。
また、シーリングのひび割れなどがある場合も補修工事が必要になります。
外壁補修が大掛かりになると足場を建てて工事をすることになります。
足場は規模や日数によって費用が変わってくるので工事費用が高くなる場合が多いです。
リノベーションをする場合は大掛かりな外壁補修は避けたほうが費用を抑えることができます。
⑥階段の位置
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、階段の位置に注意することです。
階段位置の変更は確認申請を必要とする大規模な工事になります。
また、2階の床組を変えなければならなくなる場合が多いので手間と費用がかかります。
階段の位置変更は難しいの?
2階の床組の変更はこれらを解体して組み直さなければならなりません。
特に階段付近の床組は複雑になっているので解体してみなければわからない工事になります。
そのため、リノベーションはなるべく階段位置を変更しないように間取りを考えるのが定石になっています。
⑦耐用年数の長い素材選び
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、耐用年数の長い素材選びをすることです。
耐用年数の長い素材を選べば、それだけ修繕のサイクルを長くすることが可能だからです。
どこを耐用年数の長い素材にした方がいいの?
屋根と外壁の素材を選ぶときは耐用年数の長い素材を選びましょう。
初期費用は高くなっても修繕のサイクルを長くできるので、長期的には安くなります。
屋根なら瓦などが半永久的な耐用年数を誇っています。
外壁がサイディングの場合は保護膜や保証期間などに着目して、なるべく耐用年数の長い素材を選びましょう。
⑧メンテナンスフリーの素材選び
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、メンテナンスフリーの素材選びに注意することです。
メンテナンスフリーの素材を選べば毎日の掃除の手間を減らせるからです。
どんな素材があるの?
床材のワックスフリーコーティングや人工木のウッドデッキなどがあります。
また、クロスなどにも抗菌、汚れ防止機能がついているものなどがあります。
日頃の掃除はさっと拭くだけで、綺麗さを長く保ってくれる素材選びをしましょう。
外壁では光触媒を塗布することで、雨の日に汚れを洗い流してくれる素材もあります。
⑨住宅設備は大手メーカーにする
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、住宅設備は大手メーカーにすることです。
住宅設備は大手のメーカーのものでないと10年後に部品が入手できなくなったりするからです。
大手メーカーってどんなところにすればいいの?
キッチン、トイレや浴室だったらTOTO、LIXIL、Panasonicなど、サッシだったらYKKap、トステムなど、
エアコンだったらダイキン、三菱、Panasonicなどがいいと思います。
人気のあるメーカーの商品だったら世の中に多く出ているので、交換部品がなくなることはまずないと思います。
⑩足場を設置できるスペースの確保
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方は、足場を設置できるスペースの確保することです。
足場を設置できるスペースがないと隣の敷地を借りたり、歩道に足場を建てたりしてトラブルになるケースが多いからです。
どのくらいのスペースが必要なの?
一般的に600mm程度は必要になります。
敷地ギリギリに建ててしまうとエアコンの室外機置き場がなかったり、
雑草が生え放題になってしまったりする場合が多いです。
サイディングの外壁は15年に1回はシーリングをやり直すなどの必要があるので、
近隣に迷惑をかけないように、しっかりと足場を設置するスペースは確保しておきましょう。
変化に備えるために重要な要素
近年、人々のライフスタイルは多様化し、その変化に伴い住まい方も大きく変わってきています。
家族構成の変化や住宅の劣化、設備の老朽化など、様々な要因が重なり、住宅に関する悩みや課題が生じています。
そのような課題に備えるために、まずはライフスタイルの変化に備えることが重要です。
ライフスタイルの変化に備えるために重要な要素は以下の通りです。
変化に備えるために重要な要素
・家族構成の変化による住まい方の変化
・耐用年数による劣化に対応できる
・住宅設備の老朽化に対応できる
家族構成の変化による住まい方の変化
ライフスタイルの変化に備えるために重要な要素は、家族構成の変化による住まい方の変化です。
家族構成の変化は、住まい方に大きな影響を与える要素の一つです。
結婚や出産、子供の成長に伴い、必要な部屋の数や配置、プライベートスペースの確保などが変わってきます。
そのため、柔軟な間取りが可能な住宅が求められるようになりました。
柔軟な間取りってどんなものなの?
例えば、将来の子供の成長に備えて、部屋の仕切りを変えられる間仕切り壁を採用するなどの工夫が必要です。
これにより、将来的な家族構成の変化に対応しながら、住まいの機能性や快適性を確保することができます。
柔軟な間取り設計は、家族の成長や変化に合わせた最適な住まいを実現するポイントとなります。
耐用年数による劣化に対応できる
ライフスタイルの変化に備えるために重要な要素は、耐用年数による劣化に対応できることです。
住宅は時間とともに劣化してしまいますが、劣化に対応できるような住宅を選ぶことで、長期的な住まい方の安心を得ることがでるからです。
耐久性の高い建材を使用し、メンテナンスのしやすさに配慮した設計を行うことで、住宅の寿命を延ばすことができます。
その他に劣化に対応が必要なことってある?
住宅の構造や断熱材なども重要な要素であり、将来的なメンテナンスや改修に備えた設計が求められます。
住宅は時間経過により劣化しますが、劣化に対応できる住宅を選ぶことで、長期的な住まい方の安心を得ることができます。
耐久性の高い建材を使用し、メンテナンスのしやすさに配慮した設計を行うことで、住宅の寿命を延ばすことができます。
耐久性の高い建材の使用やメンテナンスのしやすさに配慮した設計、将来的なメンテナンスや改修に備えた構造や断熱材の選択などが重要です。
これらの要素を考慮しながら、自分に合った劣化に強い住宅を選ぶことが大切です。
住宅設備の老朽化に対応できる
ライフスタイルの変化に備えるために重要な要素は、住宅設備の老朽化に対応できることです。
住宅設備の老朽化は、住まい方の変化に大きな影響を及ぼすからです。
古くなった配管や配線は、水漏れやトラブルの発生リスクを高めます。
住宅設備の老朽化はどうすればいいの?
住宅を建てる際には、将来的な設備のメンテナンスや更新に対応できるような設計をする必要があります。
パイプスペースや点検口などを適切に設置することで、配管や配線が修理や交換ができるようにすることで住まいの快適性を持続させることが可能です。
メンテナンスしやすくすることで将来的なトラブルに備えた安心な生活を送ることができます。
まとめ
今回は長く暮らせる注文住宅を作りたい人やリノベーションを前提にした注文住宅を考えている人に対して、
30年後のリノベーションを前提にした新築住宅の作り方をご紹介してきました。
まとめると以下になります。
リノベーションを前提にした新築住宅の作り方
①筋交や構造材の配置
②抜けない柱と梁の掛け方
③水まわりの位置
④配管や配線、点検口
⑤開口部の位置
⑥階段の位置
⑦耐用年数の長い素材選び
⑧メンテナンスフリーの素材選び
⑨住宅設備は大手メーカーにする
⑩足場を設置できるスペースの確保
変化に備えるために重要な要素
・家族構成の変化による住まい方の変化
・耐用年数による劣化に対応できる
・住宅設備の老朽化に対応できる
新築時からリノベーションを想定し、長く快適に過ごすための注文住宅を建てる際には、慎重な計画と柔軟性が不可欠です。
将来の変更やリノベーションに対応するために、新築時の設計段階から着実な準備を行いましょう。
この記事が少しでも長く暮らせる注文住宅を作りたい人のお役に立てれば幸いです。
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