【建築現場の歩き方】施工会社とのトラブルを起こさないための工事監理の心構え
しっかりと実施設計を行なっても工事監理が疎かになると施工会社とトラブルになったり、理想とは違う注文住宅になったりします。
理想の建築を実現するためには設計事務所の工事監理が非常に重要になります。
なんで工事監理が重要なの?
設計事務所の工事監理は建築主の立場に立ってプロの目線で現場に指示を出す仕事です。
建築主の立場に立って細部にまでこだわり、納まりを考えた注文住宅を実現するには現場での打合せや指示がとても重要になるからです。
また、実施設計図面を作成しても、その意図がうまく現場に伝わらずに施工会社とトラブルになるなんてことよく起こります。
私は18年間(2024年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
実施設計をした建築はそれが実現するよう、工事監理まで積極的に行うようにしています。
今回は施工会社とのトラブルを起こさないための工事監理の心構えをご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・施工会社とのトラブルで多いこと
・トラブルを起こさないための工事監理の心構え
上記のことがわかります。
どんな現場でも少なからずクレームやトラブルはあります。
クレームやトラブルをうまく未然に防いだり、職人さんたちと一緒に代替案や納まりを考える経験が工事監理者しての成長につながります。
設計事務所として工事監理する際にはしっかりと今回ご紹介した心構えを実践するようにしましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
設計事務所の工事監理の役割
設計事務所の工事監理の役割は以下になります。
設計事務所の工事監理の役割
・実施設計図面通りに現場を納める
・建築主へ定期的に報告する
・品質チェックや手抜き工事を防ぐ
実施設計図面通りに現場を納める
設計事務所の工事監理の役割は、実施設計図面通りに現場を納めることです。
実施設計図面通り現場を納めることがクライアントに満足してもらえることにつながるからです。
実施設計図面通りに現場が納まらないとどうなるの?
クライアントの要望に応えられない建物になったり、確認申請を出し直さなければならなかったりします。
また、実施図面で詳細が曖昧な部分に関しても現場で打合せする必要があります。
実施設計は長い打合せ期間を経て出来上がっているものなので、クライアントの要望が事細かに反映されています。
実施設計図面通りに施工できない場合でも、勝手に変更しないでしっかりと設計事務所の判断を仰ぐ必要があります。
建築主へ定期的に報告する
設計事務所の工事監理の役割は、建築主へ定期的に報告することです。
設計事務所の工事監理は建築主の代理としてプロの視点で現場を納める役割があるからです。
その際に、しっかりと建築主への報告も義務付けられています。
建築主への報告を怠るとどうなるの?
建築士法第20条3項で
「工事監理を終了したときは、直ちに、国土交通省令で定め るところにより、その結果を文書で建築主に報告しなければならない。」
とされています。
また、工事完了途中でも変更があった場合は建築主に確認をとる必要があります。
設計事務所はあくまでも建築主の代理として工事監理をするので、しっかりと建築主に定期的な報告が必要になります。
品質チェックや手抜き工事を防ぐ
設計事務所の工事監理の役割は、品質チェックや手抜き工事を防ぐことです。
品質チェックや手抜き工事があると建築主に不利益な建物になってしまうからです。
手抜き工事があった場合はどうすればいいの?
施工会社の現場監督に手抜き工事箇所を指摘して、正しい方法で施工してもらうように指示を出します。
例えば、断熱材の施工不良が見つかった場合など、
しっかりと施工してもらい現場で確認し写真を撮るなど細かいところまで注意する必要があります。
工事監理は毎日現場に足を運ぶことはないのですが、主要な工事の完了時にはしっかりと現場で立ち会い確認する必要があります。
施工会社とのトラブルで多いこと
施工会社とのトラブル対策は以下になります。
施工会社とのトラブルで多いこと
・設計図面での記載がない
・仕様を勝手に変更した
・納まりが悪い
・工事金額が増加した
・工期が間に合わない
設計図面での記載がない
施工会社とのトラブルで多いのは設計図面での記載がないことで起こるトラブルです。
設計図面で不明瞭な点は
「現場打合せにて決定のこと!」
などの文言を記載しておきましょう。
記載がないとどうなるの?
記載がないと、施工会社の選択肢の中から選ぶしかないのですが…
設計図面の記載ミスで不具合が生じた場合は設計事務所に費用が請求される場合があります。
私の経験上、設計事務所として費用を負担したことは一度もないのですが、
それでも責任の所在が設計事務所にある場合は責任を追わなければならないと思います。
設計図面を描く時は不明瞭な点がある場合は、しっかりとそのことを記載して、
その工程が始まる前に現場監督としっかりと打合せして決めましょう。
仕様を勝手に変更した
施工会社とのトラブルで多いのは仕様を勝手に変更したことで起こるトラブルです。
仕様変更のトラブルは、設計事務所が施主と相談して変更してしまい施工会社に伝え忘れていたことが原因になる場合が多いです。
また、施工会社が提案してきたものに変更した場合でも、性能が足りなかったりイメージと違ったりしてトラブルになることがあります。
仕様を変更して違った場合はどうすればいいの?
施主や設計事務所、施工会社の3者が納得して仕様を変更した場合は誰かに責任を負わせることはできませんが、
3者のうち誰かが欠けていた場合にはトラブルが生じてしまいます。
仕様を変更する場合はしっかりと3者に確認を得てから変更するようにしましょう。
納まりが悪い
施工会社とのトラブルで多いのは納まりが悪いことで起こるトラブルです。
建築の細かいところの納まりは現場監督と職人、設計監理者によって決めていきます。
職人が勝手に納まりを決めてしまった場合はどうするの?
それで上手く納まればいいのですが、見た目や使い勝手で支障が出てしまった時には施主の意見も必要になります。
納まりが悪い場合はやり直しもあるので、設計監理者は重要な箇所の納まりについてはしっかりと現場で打合せして決めるようにしましょう。
工事金額が増加した
施工会社とのトラブルで多いのは工事金額が増加したことで起こるトラブルです。
工事金額の増加する原因は色々とありますが、一番大きいのは使う仕上材や仕様の変更などです。
現場が始まってからの工事金額の増加って施工会社が負担するんじゃないの?
確かに、施工会社が負担する場合がほとんどですが、
明らかに施主の要望によって金額が増加した場合は、最終的に施主が負担する場合が多いです。
設計事務所の工事監理は工事予算まで握っていないので予算内で納めるのは現場監督の裁量によるところが大きいのですが、
予算が増加しても仕上がりや使い勝手が良くなるのであれば、施主を説得してでも変更した方がいい場合があります。
工期が間に合わない
施工会社とのトラブルで多いのは工期が間に合わないことで起こるトラブルです。
最近では半導体を使った設備や照明器具などの納期が遅れています。
設備機器の納期の遅れが原因で工期が間に合わないことは多々あります。
その機器を選ぶ時に予想できなかったの?
確かにメーカーに問い合わせれば納期が遅れることはわかったかもしれませんが、
カタログに載っている製品でも突然、生産中止になってしまったものもあります。
工期が間に合わない場合は、他のメーカーの同等品を使うか、一時的に他の器具で代用するしかないと思います。
トラブルを起こさないための工事監理の心構え
トラブルを起こさないための工事監理の心構えは以下になります。
トラブルを起こさないための工事監理の心構え
・伝えるための設計図面を描く
・わからないことを素直に認める
・失敗したら素直に謝る
・監督や職人のアドバイスを聞く
・日頃からコミュニケーションをとる
伝えるための設計図面を描く
トラブルを起こさないための工事監理の心構えは、伝えるための設計図面を描くことです。
納まりが曖昧な意匠図をそのまま描いてしまうと施工者が勘違いしてしまいます。
施工方法がわからない場合は
「打合せにて決定のこと」
という記載をして、施工会社と具体的な打合せを行いましょう。
伝えるための設計図面ってどうやって書けばいいの?
自分が説明することを想定して図面を描くようにすれば意図は伝わると思います。
意匠図の段階ではまだ施工方法や細かな納まりまで突き詰めて描くことはできない場合が多いですが、
「このように見せたい!」
という気持ちが伝わるような図面を描くように心がけましょう。
わからないことを素直に認める
トラブルを起こさないための工事監理の心構えは、わからないことを素直に認めることです。
わからないことを知ったかぶりしていると現場が意図しない方向に進んでしまう場合があるからです。
建築のプロなら知っていて当たり前でしょ?
私も建築のプロですが、職人さんたちの使う専門的な言葉など知らないことはたくさんあります。
わからないことを素直に認めて聞くのは恥ずかしいと思いますが、現場が意図しない方向に進んで失敗するよりマシだと思います。
わからないことを素直に認めてその場で理解するように心がけましょう。
失敗したら素直に謝る
トラブルを起こさないための工事監理の心構えは、失敗したら素直に謝ることです。
自分の失敗を素直に認められない人は現場では嫌われるからです。
人間なら誰しも失敗はすると思いますが…
その失敗を認めて素直に謝れるか、誤魔化して人のせいにするかで人間性が分かれます。
現場で嫌われたらどうなるの?
現場監督や大工さん、職人さんたちとうまくコミュニケーションをとることが難しくなります。
現場監督や職人さんたちに自分の失敗を押し付けたりする人は人間として信用できないと思います。
設計図面が間違っていたらしっかりと間違いを認めて素直に謝りましょう。
監督や職人のアドバイスを聞く
トラブルを起こさないための工事監理の心構えは、監督や職人のアドバイスを聞くことです。
現場での監督や職人のアドバイは納まりを決める上でとても重要になるからです。
アドバイスが正しいかどうかわからないんだけど…
監督や職人さんのアドバイスが正しいかどうかは現場監理の経験がないとわからないと思います。
もちろん、そのままだと面倒なので安くて簡単な納まりにするためにアドバイスをしてくることもありますが、
それでもしっかりと現場の意見やアドバイスに耳を傾けて、
それを踏まえた上で現場監理者として納まりを決めていきましょう。
日頃からコミュニケーションをとる
トラブルを起こさないための工事監理の心構えは、日頃からコミュニケーションをとることです。
日頃からコミュニケーションを取らないと現場の現状を理解することができないからです。
コミュニケーションをしっかりととると現場の雰囲気も明るくなり、行くのが楽しい現場になります。
職人さんたちと昼休みに趣味の話をすると意外な共通点があって仲良くなれたりします。
職人さんたちと仲良くなると何がいいの?
職人さんたちと仲良くなると失敗した時でも無償で助けてくれたり、たくさんのアドバイスをもらえたりします。
建築はたくさんの人たちと一緒に作る共同作業なので、助け合いがある現場は物事がスムーズに進みます。
日頃からのコミュニケーションを取り、どんな人が現場で働いているのかを把握しておきましょう。
まとめ
今回は初めての建築現場でどうしたらいいかわからない人や施工会社とトラブルを起こしたくない人に対して、
施工会社とのトラブルを起こさないための工事監理の心構えをご紹介してきました。
まとめると以下になります。
設計事務所の工事監理の役割
・実施設計図面通りに現場を納める
・建築主へ定期的に報告する
・品質チェックや手抜き工事を防ぐ
施工会社とのトラブルで多いこと
・設計図面での記載がない
・仕様を勝手に変更した
・納まりが悪い
・工事金額が増加した
・工期が間に合わない
トラブルを起こさないための工事監理の心構え
・伝えるための設計図面を描く
・わからないことを素直に認める
・失敗したら素直に謝る
・監督や職人のアドバイスを聞く
・日頃からコミュニケーションをとる
どんな現場でも少なからずクレームやトラブルはあります。
クレームやトラブルをうまく未然に防いだり、職人さんたちと一緒に代替案や納まりを考える経験が工事監理者しての成長につながります。
設計事務所として工事監理する際にはしっかりと今回ご紹介した心構えを実践するようにしましょう。
この記事が少しでも建築現場をうまく納めたい人のお役に立てれば幸いです。
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