店舗や旅館の設計経験が強みになる?注文住宅の設計で役立ったこと
注文住宅の設計は建築を設計する上で基本的な知識が必要になります。
建築家として有名になった人の多くは、住宅設計から始めています。
店舗設計と住宅設計ってどう違うの?
建築設計の本質である「設計的な配慮をする」のは基本的に同じなのですが、
どこまで設計的な配慮をするのかに違いが出てきます。
店舗は5〜10年で改装することを前提に設計するのに対して、注文住宅は30年以上先のことを考えて設計しなければならないからです。
私は18年間(2023年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
以前の会社で長年、店舗設計に携わってきて住宅設計との違いを意識して設計するようにしています。
今回は店舗や旅館の設計経験が注文住宅の設計に役立ったことをご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったこと
・注文住宅の設計で新たに学んだこと
上記のことがわかります。
注文住宅の設計的な配慮はそこで長年暮らす人たちのことを具体的にイメージしなければならないので、
店舗や旅館の感覚で設計してしまうと失敗する場合があります。
逆に、店舗や旅館を設計してきたからこそ役立つことも数多くあります。
店舗設計の強みを活かし、注文住宅の設計を勉強することで他の設計事務所との差別化や強みを活かした設計をしましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
設計事務所のブログを始めて2年目で月間25000PVを達成!
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目次
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったこと
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったことは以下になります。
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったこと
・非日常の演出ができること
・照明計画や照明演出に強い
・オーダーメイド什器の設計ができる
・いろんな素材の知識がある
・パースやスケッチなどの表現力がある
非日常の演出ができること
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったことは、非日常の演出ができることです。
非日常の演出ができるとリビングや寝室をおしゃれに演出してお客様に満足してもらえるからです。
非日常の演出ってどんなの?
例えば、晩酌の空間をバーの雰囲気にしたり、リビングを映画館のように映像や音響を演出したり、
寝室をホテルや旅館のように夜の雰囲気を演出することです。
非日常を演出できると意匠設計の幅が広がり、こだわりの強いお客様のどんな要望にも応えらえるようになります。
店舗や旅館の設計経験は、注文住宅本来のオーダメイドな設計に大いに役立っています。
照明計画や照明演出に強い
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったことは、照明計画や照明演出に強くなったことです。
照明計画や照明演出ができるとその空間にあった雰囲気づくりに非常に役立つからです。
照明でどれだけ雰囲気が変わるの?
夜の雰囲気でくつろぎやリラックスしたい場合など間接照明だけでなく、
スタンドライトやブラケットなどを多用することで高級ホテルのラウンジのような雰囲気にすることができます。
日本の住宅はあまり暗闇を好まない傾向にあるのですが、暗闇を生かした照明演出で空間の雰囲気がガラッと変わります。
店舗や旅館の設計経験は、注文住宅の部屋にあった雰囲気を演出する設計に大いに役立っています。
オーダーメイド什器の設計ができる
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったことは、オーダーメイド什器の設計ができるようになったことです。
オーダーメイド什器を設計できると、どんなスペースでも無駄にしない機能的な什器を作ることができます。
オーダーメイド什器ってなに?
オーダメイド什器とは造り付けの家具のことです。
什器の設計はそこに納めるものの大きさによって寸法を決めていくので、かなり細かなところまで配慮が必要になります。
細かな配慮とは、ものが収まるのはもちろんのこと、使い勝手やデザイン、素材感なども重要な要素になります。
店舗や旅館の設計経験は、注文住宅の細かな配慮をする設計に大いに役立っています。
いろんな素材の知識がある
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったことは、いろんな素材の知識があることです。
いろんな素材の知識があると、その空間にあった素材選びの選択肢をたくさん提案することができるからです。
素材の知識ってどうやって身につければいいの?
実際にその素材を使ってみないと知識は身につかないです。
店舗設計の場合は新しい素材や変わった素材を使うことが多いので自然と素材の知識は身に付きます。
例えば、住宅の壁にはクロスが定番ですが、アクセント素材を選ぶときなどウォールパネルや化粧板、ブリックレンガなど様々な素材が実際には選択肢としてあります。
それらの素材の知識があると、こだわりの強いお客様の要望にも対応することができます。
店舗や旅館の設計経験は、素材の選択肢を広げ、仕様を決めるときに大いに役立っています。
パースやスケッチなどの表現力がある
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったことは、パースやスケッチなどの表現力があることです。
パースやスケッチなどの表現力があると、お客様へのプレゼンや設計意図が伝わりやすくなるからです。
パースやスケッチ以外に表現する方法ってあるの?
パースやスケッチが苦手なら模型を作るのがおすすめです。
私も注文住宅設計の時は模型を作ってボリュームチェックや内部の納まりを考えています。
模型は多視点で眺められるので、実際の空間をイメージするのにとても役に立ちます。
パースやスケッチなどでコミュニケーションがスムーズに行えれば、
お客様とのイメージの食い違いも少なくなり、理想の住まいを具体的に実現することに近づきます。
店舗や旅館の設計経験は、イメージをうまく伝えてコミュニケーションをスムーズにするのに大いに役立っています。
注文住宅の設計で新たに学んだこと
注文住宅の設計で新たに学んだことは以下になります。
注文住宅の設計で新たに学んだこと
・住宅性能を高める設計
・壊れにくい納まり
・耐用年数の長い素材
・生活収納の設計
・暮らしやすい動線
住宅性能を高める設計
注文住宅の設計で新たに学んだことは、住宅性能を高める設計です。
店舗設計だと住宅ではないので建物の性能などはあまり求められない傾向があるからです。
住宅性能ってどんなものがあるの?
注文住宅で求められる住宅性能は以下になります。
注文住宅で求められる住宅性能
・構造の安定
・火災時の安全
・劣化の軽減
・維持管理更新への配慮
・温熱環境
・空気環境
・光・視環境
・音環境
・高齢者等への配慮
・防犯
などが挙げられます。
この中でも特に重要なのは構造の安定と温熱環境です。
店舗の場合は既存の建物の改装がメインになるので、建物の性能は既存によって変わります。
流石に断熱材の入っていない外壁には断熱工事を施しますが、それでも必要最低限のことしかやらないのが現状です。
注文住宅はそこで長く暮らすことを考えて環境を整えなければならない設計になるので、
劣化の軽減やメンテナンスなどへの配慮も必要になります。
店舗設計だけでは学べないことが多かったので、私の場合はいちから住宅のことを勉強しなおしました。
壊れにくい納まり
注文住宅の設計で新たに学んだことは、壊れにくい納まりです。
店舗設計だと5年から10年で内装をリニューアルする場合が多いので、納まりの耐久性はそれほど求められないからです。
納まりの耐久性の違いってどんなこと?
例えば店舗設計の場合は、L型のカウンターの作りでも小口を見せないようにトメにするのが一般的ですが、
壊れにくさを考えると突き付けにした方が耐久性が上がります。
小口の処理はポストフォームを使ったり小口材を別で付けたりすることで意匠的に綺麗に納まります。
注文住宅の場合は意匠デザインを重視するのか、壊れにくさを重視するのかで納まりが変わることはたくさんあります。
壊れにくい納まりでかつ綺麗に見せるためには設計段階でひと手間加えることが必要になります。
耐用年数の長い素材
注文住宅の設計で新たに学んだことは、耐用年数の長い素材です。
店舗設計だと内装がメインになるので、外部の素材の耐用年数よりも見栄えを重視することが多いからです。
耐用年数の長い素材ってどこのこと?
例えば、屋根や外壁、ウッドデッキなどの素材のことです。
店舗設計の場合は既存の屋根や外壁を利用する場合が多いのであまり手を加えないことが多いのですが、
注文住宅の場合はしっかりと耐用年数の長い素材を選ばないとメンテナンス費用が高くついてしまいます。
初期費用は高くなってしまいますが、
長く暮らすことや自分でメンテナンスすることを考えるとやはり耐用年数の長い素材をおすすめするようになりました。
生活収納の設計
注文住宅の設計で新たに学んだことは、生活収納の設計です。
店舗設計の場合は長期間滞在することはないので、ロッカールームに収まる程度の生活収納しか考えないからです。
生活収納ってどうやって設計するの?
まずは、いま使っている収納や衣装の量を把握することから始めます。
ベビーカーやBBQ、アウトドア用品、釣り道具などの収納場所も確保しなければなりません。
また、靴やバックなどの量も把握しておかないと収納が足りなくなるなんてこと多々あります。
必要な収納量を把握した上で設計を行い、少しの隙間でも収納にするよう工夫します。
店舗設計の場合は生活収納のことまで考えたことがなかったので、最初はなかなか苦労しました。
暮らしやすい動線
注文住宅の設計で新たに学んだことは、暮らしやすい動線です。
店舗設計はそこで暮らすことまで考えないので、生活することを想定して暮らしやすい動線を考えることはしないからです。
暮らしやすい動線ってどんなの?
例えば、玄関からキッチンへ行くついでに荷物をパントリーに収納できたり、
洗濯をして干して畳んで収納するまでの一連の作業が楽に行えたりする動線のことです。
店舗設計の場合は厨房でのオペレーションやお客さんが動き回る動線ぐらいの動線設計でよかったのですが、
注文住宅の場合は、そこでの暮らしを具体的にイメージできないと暮らしやすい動線設計はできないことが多いです。
私の場合は家事を自分ですることで暮らしやすい動線をイメージできるようになりました。
注文住宅を設計する場合は自分自身が暮らしのエキスパートになる必要があるんですよね。
まとめ
今回は店舗や旅館の設計経験の強みを知りたい人や店舗設計と注文住宅の設計の違いを知りたい人に対して、
店舗や旅館の設計経験が注文住宅の設計に役立ったことをご紹介してきました。
まとめると以下になります。
店舗や旅館の設計経験が注文住宅に役立ったこと
・非日常の演出ができること
・照明計画や照明演出に強い
・オーダーメイド什器の設計ができる
・いろんな素材の知識がある
・パースやスケッチなどの表現力がある
注文住宅の設計で新たに学んだこと
・住宅性能を高める設計
・壊れにくい納まり
・耐用年数の長い素材
・生活収納の設計
・暮らしやすい動線
注文住宅の設計的な配慮はそこで長年暮らす人たちのことを具体的にイメージしなければならないので、
店舗や旅館の感覚で設計してしまうと失敗する場合があります。
逆に、店舗や旅館を設計してきたからこそ役立つことも数多くあります。
店舗設計の強みを活かし、注文住宅の設計を勉強することで他の設計事務所との差別化や強みを活かした設計をしましょう。
この記事が少しでも店舗設計の人が注文住宅を設計する時のお役に立てれば幸いです。
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