いまから解約できる?注文住宅の設計契約のタイミングと契約後のキャンセル料
初めての注文住宅っていろいろとわからないことだらけですよね。
わからないことだらけで、設計事務所の業務範囲外のことを無茶振りしてしまった…
なんてことよくあります。
基本設計の段階では魅力的な提案をしてくれたのに、実施設計に入ってからはこれはダメです、これはできませんなど…
基本設計の時の話と違うことが徐々に増えてきて、
それが積み重なって設計事務所に対して信用できなくなり、契約を解消したいって思う場合もあると思います。
いまから設計契約を解約できるの?
設計契約はいつでも解約できるのですが、契約書をよく見ないと違約金やキャンセル料が発生するケースはよくあります。
※キャンセル料は、それまでかかった人件費や模型材料代などの請求のことです。
設計事務所は工務店やハウスメーカーのように、無料で図面を描いて提案してくれるわけではありません。
もちろん、工務店やハウスメーカーも設計料(人件費)は発生していますが、工事費の中に含まれているため、お客さんにはわからないようになっています。
今回は、設計事務所と設計契約したけど問題が生じて解約を望んでいる人のキャンセル料が発生するケースを紹介します。
どのタイミングで設計契約するのがいいのかや、契約後のトラブルを防ぐにはどうすればいいかなど設計事務所の立場からアドバイスできれば幸いです。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
キャンセル料が発生するケース
以下のケースはキャンセル料が発生します。
キャンセル料が発生するケース
・基本設計が終わっている
・実施設計が進んでいる
・設備・構造設計が進んでいる
※キャンセル料はそれまでにかかった人件費や外注経費などの請求のことです。
※契約内容によっては、その仕事が無事終わった時に支払われる金額のパーセンテージを違約金として請求される場合もあります。
基本設計が終わっている
基本設計の途中で設計契約た場合で、基本設計が終わっている段階での解約はキャンセル料が発生します。
キャンセル料は基本設計にかかった費用になりますが、
契約時に手付金を支払った場合はその中から実際かかった費用の足りない分を請求されることになります。
設計事務所の不手際などの理由がない限り、このキャンセル料を支払わないと設計契約を解約することはできません。
契約しないまま基本設計が終わってしまってから設計をお断りした場合でも、基本設計にかかった費用が請求される場合があります。
契約していないのにキャンセル料払うの?
設計事務所の場合は契約していなくてもそれまでにかかった費用はキャンセル料として請求されます。
私も過去に、基本設計を何度も出し直してキャンセルされたなんて事ありました。
基本設計にかかった費用を請求しても支払われなかったなんて事も…
この場合、基本設計で出来上がったものは設計事務所の著作権が発生するので、
これを利用して工務店に建築を頼むと、設計事務所から訴えられる可能性もあります。
設計事務所の注文住宅は、工務店やハウスメーカーのように無料で基本設計をやることはないので注意しましょう。
実施設計が進んでいる
基本設計が終わり実施設計に入る前に契約して、実施設計がある程度進んでいる段階で、
「何か話が違うぞ?」という不信感から解約をした場合、
実施設計の進み具合によってのキャンセル料が発生します。
基本設計と実施設計の違いについてはこちらをご参照ください↓
実施設計では、基本設計でできた平面図や立面図、断面図をもとに実際に建築可能かどうかを検討したり、実際の素材や材料、建材を選んでいく作業になります。
設備や構造設計でも打合せが必要となり、実施設計の図面を作成するためにお金(外注費)が必要になります。
契約時に手付金を払った場合は、その中から実際にかかった費用で足りない分をキャンセル料として請求される場合もありますが、
実際は契約時の手付金がキャンセル料となるケースがほとんどです。
設備・構造設計が進んでいる
設備や構造設計が既に進んでいる場合は、設備・構造設計料をキャンセル料として追加請求される場合があります。
設備や構造設計が設計事務所内で行なっている場合は、進み具合に応じてのパーセンテージで設計料を割り出すことができるのですが、
外注として設備や構造設計事務所に頼んでいる場合は、設計事務所の信用に関わるので全額の設計料を支払うケースが多いです。
設計契約時に設計料を何割かもらうので、その中で外注費を賄い、設計事務所事態の実施設計にかかった費用分は実質ゼロという場合もあります。
設計契約のタイミングはいつ?
設計契約のタイミングは一般的に以下の段階での契約が多いです。
設計契約のタイミング
・基本設計が進んだ段階
・実施設計に入る前の段階
私としては、設計事務所との信頼関係を築いた後にした方がいいと思いますが、その段階がいつになるのかは人それぞれです。
基本設計が進んだ段階
基本設計がある程度進んだ段階で、設計事務所の特徴がわかると思います。
この設計事務所とは合わなそうだと思うのであれば早めに断った方がいいと思います。
基本設計が進んだ段階で契約していなくても、それまでにかかった費用は請求される可能性があるからです。
基本設計が進んだ段階で自分の思い描いていた建築を作ってくれそうだと信用できる設計事務所なら契約してもいいと思います。
早い段階で契約すると実施設計を先行して行えたり、設備や構造設計との打合せも行えるので、建築設計が早く進みます。
設計事務所としても、契約していない段階での設計にはあまり時間をさけないという事情もあります。
仕事の優先順位として、どうしても確実にお金の入る方に力を入れるからです。
基本設計がある程度進んだ段階でその設計事務所に頼みたいのであれば、早めに契約してスケジュールを押さえてしまった方がいい場合もあります。
実施設計に入る前の段階
基本設計が終わって、実施設計に入る前に契約する場合も多いです。
設計事務所の場合、実施設計に入っているのに契約していないケースは少ないと思います。
基本設計で設計事務所が信用できるのかや自分に合っているのかを判断できると思います。
設計事務所として、実施設計は実際に外注費などでお金が動くので契約していないと始められないのが正直なところです。
実施設計に入る前の段階での契約の場合は、手付金でこれまでの基本設計にかかった費用とこれから実施設計するにあたっての前金を賄うのですが、
手付金で設備や構造設計の外注費を支払ってしまうとお金が残らないので、次の設計料が支払われるまで待ってもらうのが通常だと思います。
設計料の支払いを3回にした場合は
設計料の支払い方
・契約時→3割
・工事着工時→4割
・引渡し時→3割
となる場合が多いのですが、実施設計が終わり確認申請が降りて工事が着工するまで2回目の設計料が支払われないので、
設計事務所としてはこの時期にキャンセルされるのが一番怖いです。
契約後のトラブルを防ぐには?
契約後のトラブルはいろいろなケースがありますが、設計事務所が信頼できなくなったことというのがいちばん多いと思います。
契約後のトラブルを防ぐには以下のことに注意しましょう。
契約後のトラブルを防ぐには?
・契約内容を確認する
・設計事務所を信頼する
・明らかな追加事項はお金を出す
注文住宅は何回も打合せを行い、設計事務所の提案が自分に合っているのかを判断してもらうわけですが、
自分が思い描いていた建築がしっかりと設計事務所に伝わらないと思うのであれば、
契約する前にキャンセルするか、他の設計事務所にも設計を依頼してみることをおすすめします。
建築するにはとても大きなお金が動きます、キャンセル料をケチって契約後にやっぱり違うと思っても、もう遅いなんて事よくあります。
契約内容を確認する
契約書で設計事務所の業務範囲を確認しましょう。
設計事務所が信頼できなくなる理由の一つに、設計事務所では対応できないことをお願いしているケースがあります。
例えば、
工事が着工してから、長期優良住宅は税金が優遇されることを知り、うちも長期優良住宅に変えたいと言われるケースなどです。
最初から長期優良住宅や住宅性能評価をとることを言われていれば、対応できるのですが…
工事が着工してからでは遅いと思います。
実際に私の場合も、設計契約時にしっかりと確認したのに、その時は施主の理解が及ばずに聞き流してしまい、近所の知人から言われてうちもしたくなったなどのケースはありました。
長期優良住宅や住宅性能評価については別途でかかる申請費用として契約書には書かれているし、しっかりと説明するところなので、
契約内容をもう一度確認して設計事務所に無理なお願いはしないようにしましょう。
設計事務所を信頼する
頼んでいる設計事務所を信頼しましょう。
建築を作るには設計事務所や施工会社との信頼関係がなければ作れないと思います。
最近ではSNSなどで情報が溢れているので、現場を見学した際に断熱材や気密工事の施工に疑問を持った場合など、すぐに設計事務所にクレームを言ってくる人もいますが、
工事の進み具合や材料が届かない等の理由で、一旦工事を止めている場合が多々あります。
建築の素人が一度現場に疑問を持ってしまうと、自分では解決できない悩みに陥ってしまいます。
設計事務所や施工会社はしっかりとそうなった経緯を施主に説明することは当然必要なのですが、
全てを説明することは不可能です。
工事が進んだら設計事務所や施工会社を信頼して、すぐにクレームを言うのではなく、そうなっている経緯の説明を受けましょう。
明らかな追加事項はお金を出す
工事が進んで、施主が現場を見学した時に、思いつきで設計変更を希望するなんてことがあります。
工事が着工してからの設計変更にはお金と時間がかかることを理解しましょう。
設計事務所としては施主の要望には全て対応したいと思うのは当然ですが、工事が進むとどうしても対応できないことが出てきます。
もちろん、お金と時間をかければほとんどのことはできるのですが…
また、明らかな追加事項になる場合は増額分が工事費用内で納まるのかどうかを確認しましょう。
設計事務所との設計契約後のトラブルで多いのが、この追加事項で大きな金額がかかってしまったケースです。
明らかな追加事項の増額分は追加でお金を出せるように予算には余裕を持っておきましょう。
まとめ
今回は、設計事務所と設計契約したけど問題が生じて解約を望んでいる人のキャンセル料が発生するケースや、
設計契約のタイミング、契約後のトラブルを防ぐための注意点などをご紹介してきました。
まとめると以下になります。
キャンセル料が発生するケース
・基本設計が終わっている
・実施設計が進んでいる
・設備・構造設計が進んでいる
設計契約のタイミング
・基本設計が進んだ段階
・実施設計に入る前の段階
契約後のトラブルを防ぐには?
・契約内容を確認する
・設計事務所を信頼する
・明らかな追加事項はお金を出す
となります。
建築には莫大なお金がかかります。
自分に合った設計事務所との巡り合わせのためにはお金を払う覚悟が必要なのかもしれません。
キャンセル料をケチって自分の希望に沿った建築を実現できないなんてことにならないようにしましょう。
この記事で、どのタイミングで設計契約するのがいいのかや、契約後のトラブルを防ぐにはどうすればいいかなど、
設計事務所の立場からのアドバイスしましたが、設計事務所とうまくやるための参考になってくれれば幸いです。
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アーキトリック一級建築士事務所