理想的な天井高さとは?一般住宅がCH(シーリングハイ)を2400mmにする理由
これまでの設計で天井高さを決める場合、経験から天井高さを2400mmで設計することが多いです。
もちろん、大梁あらわしの家などで天井高さを2500〜2600mmにしたり、吹抜けの開放感を演出するために入り口部分を2200〜2300mmにしたりすることはあります。
理想的な天井高さっていくつなの?
一般住宅ではCH(シーリングハイ)を2400mmで設計していることが多いです。
(キッチンはCH=2300mm)
今回は一般住宅がCH=2400mmとする代表的な理由を取り上げます。
この記事が理想的な天井高さの決め方の参考になれば幸いです。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
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目次
CH=2400mmにする理由
私の場合、天井高さを決める時には下にあげることに気をつけて設計しています。
・基準法上の天井高さ
・D/H(ディーバイエイチ)
・横架材間距離からの天井高さ
・サッシの規格寸法
基準法上の天井高さ
建築基準法で居室の天井高さは2100mm以上と決められています。(建築基準法施行令21条第1項)
どのような経緯で2100mmと決められているのかはわかりませんが、建築基準法が最低の基準を定めているのでこれ以上に設定しなければなりません。
日本人男性20〜29歳の平均身長は171.7(±5.9cm)です。天井高さ2100mmだと、身長170cmの人が手を上にあげると天井がさわれます。
収納や納戸などは居室でなければ天井高さは決められていないのですが、人が入るところの天井高さは最低限2100mm以上で設計するようにしています。
D/H(ディーバイエイチ)
D/H(ディーバイエイチ)とは建築物による外部空間の囲まれ感などを表す指標のひとつです。
Dは道幅、Hは建物高さのことです。
・D/H=4以上:囲まれた印象は薄い
・D/H=1~2:心地よい囲まれ感がある
・D/H=1以下:圧迫感や威圧感を与える
内部空間の場合も同じで、心地よい囲まれ感のあるD/H=1〜2で設定する事が多いです。
Dを間口(狭いほうの幅)、Hを天井高さとしてD/Hを考えると
例えば8帖(3.64m×3.64m)の部屋のCH=2400mmに設定した場合は
D/H=3.64÷2.4=1.516
となり心地よい囲まれ感のあるD/H=1〜2の範囲におさまります。
しかしながら最近ではリビング・ダイニングなど一体として作るケースが多く、18帖(5.46m×5.46m)のリビングダイニングの場合は
D/H=5.46÷2.4=2.275
となりD/H=1〜2の範囲におさまらないので、18帖を超えるリビング・ダイニング(間口5.46m以上)では天井高さ2400mmでは足りないと思います。
私の場合、リビング・ダイニングは吹抜けや勾配天井などで平均天井高さを少しでも高くするように設計しています。
横架材間距離からの天井高さ
一般的な柱の材料寸法が3,000mmなので、横架材間距離を2,730mm(9尺)に設定することが多いです。
横架材間距離とは柱の太さを算定する時の柱の長さのことです。
柱の太さは、軽い屋根で横架材間距離の1/30以上と決められているので
2,730×1/30=91→105角…OK
というような計算が必要になります。(建築基準法施行令43条)
この計算でいくと105角の柱での最大の横架材間距離は3,150mmとなります。
横架材間距離を2,730mmで設定した時の天井高さは
・床が構造用合板24mm+フローリング12mm
・天井PB9.5+野縁45mm
・天井ふところ200mm(断熱材の厚み180mm)
とすると
2,730-(24+12)-(9.5+45)-(200)=2,439.5
となり、天井高さ2,400mmが横架材間距離2,730mmとした場合にはちょうどよいことがわかります。
サッシの規格寸法
サッシの高さは2,000mm、2,200mm、2,400mmというように規格寸法が決まっています。
(ローコストのサッシだと2,400mmの規格寸法がないケースもあります)
サッシの高さが2,000mmで天井高さが2,400mmの場合、サッシの上の部分が400mmあり、エアコン(約H300mm)を取り付けることができます。
サッシ高さが2,200mmで天井高さが2,400mmの場合、サッシの上の部分が200mmとなりカーテンレールを取付けるのには十分な寸法です。
サッシ高さが2,400mmで天井高さが2,400mmの場合、サッシの高さと天井高さが同じになり開放感を感じる開口部になります。
サッシの規格寸法を考えると天井高さは2,400mmにしておくと開口部周りがきれいにおさまります。
理想的な天井高さとは?
理想的な天井高さとは人それぞれであり、生活のシーンでも理想的な天井高さは変わってくると思います。
広がりのある天井高さ
前述しましたが、18帖を超えるリビング・ダイニング(間口5.46m以上)では天井高さ2400mmでは足りないと思います。
また、空間的な広がりのある天井高さは2400mmでは感じられないと思います。
広がりのある天井高さを演出するためには、基本の天井高さを2100〜2400mmに設定した上で、吹抜けや勾配天井、折り上げ天井などで天井高さを高く設定するなどの設計が必要です。
開放感のある勾配天井の作り方に関してはこちらをご覧ください↓
寝室の天井高さ
寝室の天井高さですが、あまり高く設定しすぎると落ち着いて眠れないと思います。
私の場合は平らな天井で、天井高さは2,100〜2,400mmの間で低めに設定します。
映画など王女の寝室で天井の高い広い空間の中にベッドキャノピーなどでベッドまわりを囲っているシーンをみたことがあると思います。
広い空間の中にあえて狭い囲われた空間を作っています。
実際に狭い空間のほうが落ち着いて眠れる人が多いです。
また天井の形状ですが、吹抜けや勾配天井は適さないと思います。
自分は以前に勾配天井のロフトで寝ていたことがあるのですが、勾配天井だと深夜に通りからの光の入り方が一様ではなくなかなか眠れなかったです。
また、寝起きで勾配天井を見上げるとドキッとしてしまうこともありました。
キッチンの天井高さ
キッチンの天井高さですが、LIXILEなどのメーカーではCH=2300mmで設定して設備機器をつくっている場合が多いです。
キッチンの理想的な天井高さは吊り戸の取付け高さで決まると思います。
吊り戸はあまり高い位置にもうけても使い勝手が悪いので目線高さより若干高い位置(1600〜1650mm)が吊り戸の下端になります。
そこから、700〜800mmの2段の吊り戸になるので、2,300〜2,400mmが理想の天井高さとなります。
まとめ
今回は一般住宅がCH=2400mmとする代表的な理由をいろいろと見てきました。
天井高さの決め方として注意している点をもう一度確認すると
・基準法上の天井高さ
・D/H(ディーバイエイチ)
・横架材間距離からの天井高さ
・サッシの規格寸法
となります。
また、18帖を超えるリビング・ダイニング(間口5.46m以上)では天井高さ2400mmでは足りないことや寝室、キッチンの天井高さについても見てきました。
住宅の内部空間をすべてを吹き抜けや勾配天井にするのではなく、基本となる天井高さはやはり2,400mmに設定して空間にメリハリを付けたほうが開放感を演出するのには効果的だと思います。
天井高さについて色々と見てきましたが、この記事が理想的な天井高さの決め方の参考になれば幸いです。
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