感動的な空間を再現できる?建築家として実際の建築設計に落とし込むための分析方法
建築家にとって数多くの感動的な空間体験をすることはとても大切なことです。
感動的な空間体験をした時にその空間を分析できれば自分の建築設計に活かすことができます。
どうやって分析すればいいの?
まずは空間を構成する要素をひとまとまりにとらえ、それらの構成方法を詳しくみていくことから始めましょう。
私は18年間(2024年現在)注文住宅やリノベーションを中心に設計事務所を運営してきましたが、
以下に紹介する方法で建築空間を分析したり、応用してデザインをまとめたりしています。
今回は建築家として実際の建築設計に落とし込む分析方法をご紹介します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・実際の建築設計に落とし込む分析方法
・感動的な空間体験を再現するための心構え
上記のことがわかります。
この方法は大規模な建築空間だけにとどまらず、小さくて心地よい建築空間でも分析が可能となります。
なんでこの空間は心地よく感じるのかや、かっこよくまとまっているのかを詳しく知ることが出来るようになります。
この方法を用いて感動的な空間体験を分析し、自分の建築設計で再現してみましょう。
【自己紹介】
Bさん@アーキトリック
一級建築士 第303020号
耐震診断・耐震改修技術者
アーキトリック一級建築士事務所
設計事務所を18年間(2024年現在)運営している現役の一級建築士です。
店舗や旅館を中心に3桁の案件をこなしてきました。
現在は住宅設計やリノベーションを中心に活動をしています。
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目次
実際の建築設計に落とし込む分析方法
実際の建築設計に落とし込む分析方法は以下になります。
実際の建築設計に落とし込む分析方法
・心を動かされた空間の要素に着目する
・着目した要素の構成方法をことばで表す
・要素の細部の納まりについて考える
・素材の使い方に着目する
・実際に寸法をはかりスケッチする
心を動かされた空間の要素に着目する
実際の建築設計に落とし込む方法のひとつ目は、心を動かされた空間の要素に着目することです。
空間の要素として着目することで、その空間を構成方法を捉えやすくなるからです。
空間の要素としてどのように着目すればいいの?
例えば、素材の違いや方向性の異なる素材の組合せ、光の取り入れ方、天井や壁の配置や方向性、床の高低差など、
それらの空間の要素に着目することで、なぜ自分が感動したのかその仕組みや構成方法を考えるきっかけとなります。
ひとまとまりの空間から切り離して要素として捉えるにはゲシュタルト要因などが関係してる場合が多いです。
ゲシュタルト要因についてはこちらの記事をご参照ください↓
まずは、自分の感覚を頼りにその空間を構成する要素としてどのようなまとまりが見えてくるのかに着目してみましょう。
着目した要素の構成方法をことばで表す
実際の建築設計に落とし込む方法は、着目した要素の構成方法をことばで表すことです。
構成方法をことばで表すことにより、要素間の関係性をより明確に認識できるようになるからです。
構成要素をどうやってことばにしたらいいの?
例えば、違う要素が重なってみえることや連続した方向性があること、
対称性または非対称になっているなど簡単なことばにしてみるといいと思います。
着目した要素の構成方法をことばで表すことは慣れればすぐにできるようになります。
構成方法がわかるとそれを自分ならどのようにするのかや別の素材の場合はどうすればいいのかなど、
様々な構成方法をイメージすることができるようになります。
ことばで表せないことは再現性が難しいので、構成要素をことばで表す訓練をしておきましょう。
要素の細部の納まりについて考える
実際の建築設計に落とし込む方法は、要素の細部の納まりについて考えることです。
要素の細部の納まりを考えることで再現性が生まれるからです。
再現性ってなに?
再現性とは「同一の結果が同一の手法によって得られたときのそれら結果の一致度合いの高さ」のことをいいます。
同じ要素を用いるとき細部の納まりまで再現しないと再現性は得られない場合が多いです。
表側では見えないところに工夫が施されていたり、端部の納まりにひと手間加えられていたり、
要素の細部には様々な設計者の意図が隠れていたりします。
納まりは自分の経験がないと仕組みがわからなかったり、それをする手間の大変さが分からない場合が多いです。
日頃から要素の細部の納まりについてどのようになっているのかを考えるようにしましょう。
素材の使い方に着目する
実際の建築設計に落とし込む方法は、素材の使い方に着目することです。
素材の使い方に着目することでどの素材がどこに適しているのかを知ることができるからです。
同じ素材でも使い方の違いってあるの?
例えば、同じ木材でも外部ようなのか内部の仕上げに用いるのかで使われる木材の種類が異なってきます。
また、室内で用いる木材でも床に使うのか棚として使うのかで仕上げる塗装の種類も変わってきます。
同じ素材のように見えてそもそも種類が異なるなんてことよくあります。
素材の使い方に着目することは素材の性質や特性をよく理解することにつながります。
その場所に適した素材を使う感覚は設計する上でとても大切になるのでしっかりと素材の使い方に着目するようにしましょう。
実際に寸法をはかりスケッチする
実際の建築設計に落とし込む方法は、実際に寸法をはかりスケッチすることです。
実際に寸法をはかりスケッチすることで、より詳しくその空間の全体像を把握することができるからです。
また、実際に寸法をはかることで再現性を高めることができます。
スケッチが得意じゃないんだけど…
スケッチが得意じゃない場合は写真でも構わないのですが、
写真を撮ったら何に着目したのかや、はかった寸法などをその写真に描き込むようにしましょう。
写真を撮っただけだと記憶に残らない場合が多いからです。
正確な寸法をはかりたい場合は常にコンベックスを持ち歩きましょう。
コンベックスがない場合でも、自分の体の部位の寸法を把握しておき大体の寸法を割り出すこともできます。
スケッチを残すことや具体的に寸法として数値化するは、自分が設計する時にとても役立ちます。
感動的な空間体験を再現するための心構え
感動的な空間体験を再現するための心構えは以下になります。
感動的な空間体験を再現するための心構え
・まずはゲシュタルト要因を理解する
・空間をひとつのまとまりとして捉える
・構成方法を表現することばを考える
まずはゲシュタルト要因を理解する
感動的な空間体験を再現するための心構えは、まずはゲシュタルト要因を理解することです。
ゲシュタルト要因を理解することでまとまりのある要素をその他より切り離して認識することができるようになるからです。
ゲシュタルト要因についてはこちらの記事をご参照ください↓
ゲシュタルト要因は次の7つが有名です。
・近接の要因
・類似の要因
・閉合の要因
・連続の要因
・共通運命の要因
・面積の要因
・対称性の要因
これらの要因は人の視覚的な見え方、捉え方の基本になるものです。
まずは、視覚的にまとまりのある要素として捉えることが空間を分析する上ではとても重要になります。
視覚的な心理作用によりこの法則を理解すれば、大抵の視覚的なまとまりはこの法則に当てはまっていることに気づきます。
まずは、空間を構成する要素がどのようなまとまりを生み出しているのかを視覚的に分析してみましょう。
空間をひとつのまとまりとして捉える
感動的な空間体験を再現するための心構えは、空間をひとつのまとまりとして捉えることです。
空間をひとつのまとまりとして捉えることで無限に広がる空間から切り離して把握することができるようになるからです。
まとまりのある空間には「その場所を述べること出来る」という特徴もあります。
下の図はS条件をまとめた図になります。
この図は人間が空間的なまとまりを感じる場合の条件が図解されています。
※S条件は廣部達也教授の「建築設計論特論」の講義のレジメより抜粋したものです。
例えば、
図の左の一番上の図では「私は少し高くなった土地の上にいる」や、
右の一番下の図では「私はL 型の壁と一本の柱の間にいる」など…
これらは私たちが何気なく感じている場所の感覚をことばにしてみることで、まとまりのある空間を認識できることを意味しています。
建築空間を分析する時や自分が設計する時など、このような心理的な手法を用いることで、
美しい建築空間やまとまりのあるデザインの整合性を生み出すことができます。
構成方法を表現することばを考える
感動的な空間体験を再現するための心構えは、構成方法を表現することばを考えることです。
構成方法を表現することばをたくさん持っていると、それらの組合せを用いで自分の設計に反映することが容易になるからです。
先にも述べましたが、まとまりのある空間には「その場所を述べることが出来る」という特徴を逆に利用した手法になります。
つまり、ことばで述べることが出来るように要素を構成すれば、まとまりのある空間を作ることが出来るということです。
まとまりのある空間はその中にいる人に感動的な空間体験やくつろぎ、安心感など心理面で強く影響を与えることができます。
また、ファサードにおいてわかりやすい構成方法を用いると印象や特徴的なファサードになったりします。
デザインや間取りがなかなかまとまらない人は、構成方法を表現することばを考えて、たくさん持っておくことをおすすめします。
まとめ
今回は感動的な空間を再現したい人や空間を分析する方法を知りたい人に対して、
建築家として実際の建築設計に落とし込む分析方法をご紹介してきました。
まとめると以下になります。
実際の建築設計に落とし込む分析方法
・心を動かされた空間の要素に着目する
・着目した要素の構成方法をことばで表す
・要素の細部の納まりについて考える
・素材の使い方に着目する
・実際に寸法をはかりスケッチする
感動的な空間体験を再現するための心構え
・まずはゲシュタルト要因を理解する
・空間をひとつのまとまりとして捉える
・構成方法を表現することばを考える
この方法は大規模な建築空間だけにとどまらず、小さくて心地よい建築空間でも分析が可能となります。
なんでこの空間は心地よく感じるのかや、かっこよくまとまっているのかを詳しく知ることが出来るようになります。
この方法を用いて感動的な空間体験を分析し、自分の建築設計で再現してみましょう。
この記事が少しでも感動的な空間を分析して建築設計に落とし込もうとする人のお役に立てれば幸いです。
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